番外編:スリィが人型になったら?
それは、ある夜のことだった。
「最近……眠い……」
山ほどの商会業務を終えて、ベッドにばたん。
ふわふわのスライム型抱き枕に頬をうずめると、あっという間に意識が沈んでいく。
「……せめて夢くらい……幸せになりたいなぁ……」
──そうして私は、夢を見た。
◆ ◆ ◆
そこには、人型になったスリィがいた。
淡い青髪の美青年。肌はすべすべのガラス質。瞳は水面のような澄んだ碧。
見た目は美形だけど、どこか“ぷに”を感じる柔らかな雰囲気。
そして、声は──まぎれもなく、いつものスリィの優しい声だった。
『おはようございます、ティアナ様。コーヒー、ミルク多めで』
「……はっ!? あんたが朝からコーヒー作ってくれるなんて、私死んだ!?」
『いいえ、ご結婚5周年記念ですよ。今日は家族みんなでお祝いです』
「家族……?」
◆ ◆ ◆
リビングに行くと、そこには──
・長女:ティアリィ(見た目:人間、特技:変形)
・次男:ぷにすけ(見た目:ぷるぷる、口癖:語尾がすべて“ぷに”)
・謎の孫ぷに軍団(常に群れている)
「うわぁあああ! 家族増えてるぅううう!!」
「ママ! 今日のごはん、スライムステーキがいい〜!」
「だめ! それ親戚かもしれないからッ!!」
『子どもたちは賢く育ちました。なお、ぷにすけは3日に1回水やりが必要です』
「観葉植物扱いしないで!? せめて人として育てて!!」
◆ ◆ ◆
──やがて歳月は流れ、
私は年老いて、スリィと並んで縁側に座っていた。
あの頃のように、肩を並べて──
夕日を見ながら、笑いながら。
『私は、貴女と出会えて、本当によかった』
「……こっちの台詞よ。私の人生、ぷるぷるしっぱなしだったんだから」
手を繋いだその指先から、
優しいぬくもりが伝わってくる。
──ああ、なんて幸せな人生。
──ああ、ずっとこうしていられたら。
──ねぇ、スリィ。
◆ ◆ ◆
──「ティアナ様。朝です。朝食の準備が整いました」
「………………」
私は、ゆっくり目を覚ます。
そこには、**いつものスリィ(スライム形態)**がいた。
テーブルの上では、ぷるぷるした蒸しパンが出迎えている。
「……夢だったのね」
『何か面白い夢でも?』
「ううん、ただの、幸せすぎる夢よ」
私はスリィを抱きしめる。
「……まあ、これはこれでアリかもね。ずっと隣にいてくれるなら」
『もちろんです。私は、貴女のスライムですから』
「なんか語感がちょっとイヤだけど、まぁ……よしとしようか」
──夢は終わった。でも、日常は続く。
それがぷるぷるな人生ってやつ。
⸻
【THE END】
本当に、ここまで読んでくれてありがとうございました。
ティアナとスリィの、ぷるぷるでちょっぴりおかしな日々が、あなたの記憶にも残りますように。




