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第04話 初配信の反響

 大きな反響を生んだ配信を終えて、数時間。

 配信サイトの画面に、最初の結果が表示されていた。


「凄いな。チャンネル登録者数、もう15万人か」


 配信開始時に8万人だった登録者が、倍近くに伸びている。

 伸びた理由の一つは、ライブでコメントを読むことで、男と証明されたからだ。

 期待を裏切らなかったことで、確認に来た視聴者達がチャンネル登録を外さず、それを知った人達も新たに登録したのだ。

 もう一つは、初配信で15歳の男が、作詩・作曲・演奏・歌唱を熟したことだ。それは、ツチノコが現れたくらいの大事件である。


 すでに「個人配信者総合」や「新人配信者スレ」には、俺の名前を冠したスレッドがいくつも立っている。

 その勢いは、ほかの配信者とは一線を画していた。


【速報】森木悠君、初配信で自作曲を弾き語りしてしまう

『この春から通信制の高校って、まだ15歳だよね』

『作詞・作曲・演奏・歌唱を一人でやるとか、本当に有り得ないんだけど』

『しかも、超ハイクオリティ!』


 スレッドを開くと、膨大な書き込みが溢れていた。


『普通、作詞作曲は専門の人がやるし、演奏と歌も別の人が担当するから』

『悠くんって、ガチで音楽の天才なんじゃない?』

『音楽の天才って言葉だけじゃ足りないでしょ』


 本来、楽曲制作は分業制だ。

 作詞家が言葉を紡ぎ、作曲家がメロディを生み出し、演奏家が伴奏をつけ、歌手がそれを歌い上げる。

 だが俺は、これらのすべてを一人でやってのけたことになる。

 しかも、それを「15歳の男性新人配信者の初配信」で披露した。


 もちろん俺は、前世に存在した曲を利用しただけだ。

 ギターも、前世で三十路の社会人だったから、経験があって出来た。

 だが視聴者達は、それを知る由もない。


『悠くん、マジでネット世界に出てきてくれてありがとう』

『本物の男性が音楽を届けてくれる日が来るなんて、夢みたいだね』


 どうやら一部の視聴者達にとって、俺の存在は望外の喜びになっているらしい。

 スレッドを読み進めると、俺の楽曲を広めようとする動きもあった。


『悠くんの弾き語りの部分、もう転載されているんだけど!』

『見てみたら数百万再生いってた』

『何この拡散力、バズり方が尋常じゃないんだけど』

『やばっ、もう海外にまで広がってる』


 試しに検索すると、俺の歌の部分を切り抜いた動画が大量にアップされていた。

 弾き語りの再生数は、一番伸びているもので軽く100万回を超えている。


『これって勝手にやっていいの?』

『広告付けてないし、悠くんの公式チャンネルに誘導されてるけど』

『切り抜きだけで、悠くんのチャンネルを見ない人が増えないか心配』


 転載している人間は、元動画のリンクも貼っているようだった。


『切り抜きだけじゃ足りないから!』

『元動画をチャンネル登録して、そっちで見てね』

『悠くんの歌、リンク元で聴くほうが良いです』


 動画に対するコメントでは、熱心な視聴者達が俺のチャンネルに誘導している。

 まるで正しい信仰を広める伝道者のような勢いだ。


 ――女子って連携するから、コミュニティとか作られそうだな。


 今のところ好意的な反応ばかりで、初配信は、大成功だったと言っていい。

 ふと楽曲への反応が気になった俺は、掲示板をスクロールして、楽曲の歌詞について語っている書き込みを探した。

 すると、すでにいくつかのスレッドが立ち上がっており、熱心な視聴者達による分析が進んでいた。


【森木悠くんの歌詞、ガチでヤバい件】

『今までの恋愛ソングと根本的に違うから』

『まるで文学作品みたいだよね』


 彼女達は、歌詞の意味を深く読み解こうとしていた。

 精子提供による人工授精が基本の世界で、男性が切なさや後悔を抱く感情を表現した歌詞は、あまりにも衝撃的だったのだろう。


『この歌詞、深夜に二人で会うほど親しかったけど、冷たい身体を温められずに、流れ星みたいに消えちゃったんだよね』

『それって、どういうことなの。そこまで親しいなら、将来は重婚すれば良いし、別に女側は断らないよね』


 視聴者達は、歌詞の解釈について活発に議論を交わしていた。

 男女比1対3万の世界で、男性側が振られることは、まず有り得ない。

 答えを出せなかった彼女達の話題は、歌詞の内容から技術に移っていく。


『これ歌詞の内容だけじゃなくて、韻とかリズムの取り方もすごくない?』

『ちゃんと韻を踏んでるし、メロディに乗せた時の語感が美しすぎる!』

『悠くん、作詞だけじゃなくて、作曲の才能もヤバいね』


 俺は、前世の知識と経験を持ち込んだだけだ。

 だが視聴者達の感想を見ていると、楽曲はメロディが良いだけではなく、歌詞そのものの構成にも大きな魅力があるのだと改めて気付かされる。


『悠くんって、作詞・作曲・演奏・歌の全部ができるってだけでも異次元なのに、その上で歌詞まで芸術レベルとか、何者ですか!?』

『どれか一つでプロに成れるのに、それを全部やって、しかも15歳って』

『だから天才だって、最初から言われてるじゃん』


 視聴者達は、完全に俺を音楽の天才として、崇める流れになっている。

 さらにまとめサイトでは、すでに「楽曲の歌詞を徹底分析する記事」がいくつも作られていた。


【森木悠の歌詞、何がすごいのか徹底解説】

・男性視点の恋愛ソングが存在しない世界で、初の試み。

・男女の対等な関係性を描いており、新しい価値観を提示している。

・詩的な表現が多用され、単なる歌詞ではなく文学的な魅力を持つ。

・韻やリズムが精密に計算されており、音楽的にも極めて完成度が高い。


『このリズムとか韻とか、演歌だと出来ないよね』

『これもう、教科書に載せるべきレベルじゃない?』

『音楽としてもすごいし、文学作品としても評価されるべきだよね』


 この世界では、男性が恋愛で傷付きながら誰かを想い続けることは無い。

 この曲を女性が発表した場合、妄想を拗らせすぎて頭がおかしいと思われる。

 だがこれは、15歳の男性が、自分で書いて始めて世に出した曲だ。本人の体験から生み出されたと考えるのが自然となる。

 それが衝撃的すぎるから、ここまで大きな話題になっているのだろう。

 視聴者達の間では、俺の存在を広めなければならないという使命感すら生まれていた。


『悠くんの歌、もっと多くの人に知ってもらいたいね』

『宣伝しないといけないよね。星降る海辺は、もっと評価されるべき!』

『知り合い全員に布教してくる!』


 彼女達は熱心な信者となって、俺の楽曲を世に広めようとしている。

 切り抜き動画の拡散に続いて、今度は歌詞の解釈を通じて、さらなる注目を集めようとしているらしい。

 どうやら俺は、男性配信者の枠を超えて、新ジャンルを開拓した音楽家になりつつあるようだった。

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― 新着の感想 ―
女性たちからすると、これぞまさしく「ヤック・デ・カルチャー!!」ですね。 いかん、ミンメイの位置に、別のナニかがいる幻視が、、
あんまり人気になりすぎると結婚した時、自殺者が大量に出たり、嫁が闇討ちされたりしそう。
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