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消された記録

祐一と紗香は、息を呑むような静けさの中で進んだ。研究所の奥へと続く暗い通路は、まるで彼らを試すかのように、空気が重く、冷たく感じられた。足音だけが響くその中で、二人は言葉を交わさずに進み続けた。


「あと少しだ…」祐一が低く呟く。彼の目は真剣そのもので、手には慎重に取り出したデバイスが握られている。このデバイスは、綾子博士から受け取ったものだ。研究所内のコンピューターシステムにアクセスするための鍵となるものだが、それがどこまで使えるかは分からない。


紗香は祐一の動きに注視しながら、周囲を警戒した。「急ごう、時間がない。」


通路の終わりに、ようやく目指していたコンピュータールームが見えてきた。金属製のドアが無機質に閉ざされており、その前には厳重なセキュリティが敷かれている。複数の監視カメラが無言で動き、センサーが反応している様子が見て取れる。


「さすがに警戒が強すぎる。」祐一が一瞬立ち止まり、手元のデバイスをチェックした。「でも、これで突破できるはずだ。」


紗香はしっかりと祐一の背中を見つめた。「いけるか?」


「俺の経験から言って、時間さえあれば何とかなる。」祐一はそう言うと、デバイスを使ってコンピューターのロックを解除し始める。手元の画面には、緊急のログインが必要だというメッセージが表示されるが、祐一はそれを無視して入力を続ける。


その間、紗香は外の音を注意深く聞いていた。後ろから何かの音が近づいてくる気配を感じ、すぐに祐一に警告する。


「来る!」


「分かってる!」祐一は一瞬だけデバイスから目を離し、ドアの周囲を見回す。すると、コンピューターの画面に緑色のライトが点灯し、無事にロックが解除されたことが分かる。


「よし、開けるぞ。」祐一は扉の前に立ち、ゆっくりとドアを押し開けた。


その瞬間、空気が一変した。コンピュータールーム内は予想よりも広く、無数のモニターが壁一面を覆っている。中央には、巨大なサーバールームが広がり、その中に大量のデータが保管されているのが見えた。しかし、そのどれもが「削除中」という表示がされていた。


「これ…データがすでに消されてる?」紗香の声に、祐一は無言で頷く。


「間違いない。何かが起こる前に、すべての証拠を消したんだ。」祐一はデバイスを操作しながら言う。


「でも、まだ手がかりが残っているかもしれない。諦めるわけにはいかない。」紗香の表情には、確固たる決意が宿っている。


デバイスの操作を続ける祐一は、スピードを上げながらも冷静さを欠かさない。彼は、サーバー内に隠されているバックアップファイルを見つけ出すことができるかどうか、焦らず慎重に確認していた。


その時、突然、コンピュータールームの奥から重い足音が響き渡る。誰かが近づいてくる。


「来た…!」紗香が声をひそめる。


「動くな。」祐一は彼女に静かに指示し、すぐにモニターの前に座り込んだ。急いでデータを復旧しようとするが、時間が限られている。


足音がますます近づいてきて、ついにドアの前で足音が止まる。息を呑んで身を固くする二人。息を潜め、足音が消えるのを待った。無音の中、呼吸だけが大きく感じられ、時間が異常に長く感じられる。


やがて、足音は再び遠ざかり、完全に静寂が訪れた。


「…大丈夫か?」紗香が囁くように聞いた。


「今だ、もう少しだ。」祐一はデバイスを操作し続け、何とかバックアップデータを復元しようとしている。


ついに、モニターに「データ復元完了」と表示される。彼の目が一瞬だけ輝いた。


「これで、スピノサウルスの復活計画の全貌が分かる。」祐一は一息つきながら、振り返って紗香に伝える。


「本当に…?これで止められるの?」紗香は慎重に尋ねた。


「まだ全てが終わったわけではない。だが、これで最初の一歩を踏み出せた。」祐一は冷静に言う。「さあ、行こう。真実を掴み取るために。」


二人は力強くうなずき、急ぎ足で研究所の出口へと向かう。背後にはまだ、誰かが追ってくるかもしれないという恐怖が潜んでいる。それでも、彼らは立ち止まらなかった。目指すべき場所が見えてきたからだ。

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