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G-02:地下実験区画

エレベーターが静かに停止した。

地下深く――まるで地球の心臓に近づくような、圧力と沈黙。


ドアが開くと、眼前に広がるのは無機質で巨大な地下通路。

コンクリートの壁に刻まれた番号、「B3 - Sector 07」のプレート。

錆びた空気、照明は不気味なほど整って点灯している。


「……誰か、まだここを管理してる?」


「もしくは、“誰か”が動き出したばかり、ってことかもな」


**


通路の先には、研究室群と隔離区画。

『極秘実験記録』のラベルが貼られたキャビネット、そして観察室には――

中空の石化ポッドがずらりと並んでいた。


「まるで……見世物小屋」


紗香はつぶやいた。


祐一は、壁の端末を操作し、データを呼び出す。

画面に浮かび上がったプロジェクト名:


《PROJECT GENESIS》

•目的:石化細胞の“保存”と“再活性化”による超寿命生命体の開発

•被験体No.01:冬原薫(8歳)

•被験体No.02:不明(執事)


「……薫はここで、実験されていた」


**


さらに、紗香が発見した別のファイルには驚愕の記述があった。


【覚書】

冬原薫の血液には、石化因子を中和する特異抗体が確認された。

“復活液”の生成には、彼女の血液が不可欠。

また、彼女は封印生物・No.α-Σの覚醒トリガーとなり得る可能性。


「やっぱり……彼女は、“鍵”だったのね」


**


研究所の奥、セクター09。

そこは厳重な扉で封鎖されていた。だが、エレベーターの鍵番号と同じコードで扉が静かに開く。


その中には――


巨大な球体の格納装置。


中心には、黒い結晶のような石化物体が浮かんでいた。

冷却装置が絶え間なく作動し、気体が霧のように渦巻いている。


「これが……“究極存在”……?」


だが、そこで警告音が鳴った。


“外部アクセス感知。ゲートCより侵入者あり。”


祐一と紗香は一斉に顔を見合わせる。


「来たな。――あいつだ」


**


非常灯が点滅し、通路の奥から重い足音が響く。

石のように硬く、機械のように規則的な――


「冬原家執事、識別番号α-2。

……対象:薫の確保と、No.α-Σの覚醒準備に移行する」


彼は、既に人間ではなかった。


石化技術を取り込んだ、“時間の外”にいる存在。

祐一は胸ポケットから、老女に渡された小型キーを握りしめる。


「紗香。おれたちは、“人類”の側だ。あいつとは違う」


「ええ。私は、“彼女の側”につく。だから……“それ”の目覚めは阻止するわ」


**


逃げるのではない。

追うのでもない。


“真実を止めるために”、二人は研究所の最深部へと進んでいく。


**


――その背後で、格納装置にわずかな亀裂が走った。


それは、数千万年前の鼓動。

この世で最も古く、最も“恐れられた命”が、再び目覚めようとしていた。

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