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34. あなたと一緒に私らしく笑うの(終)

本日、二回目の投稿です。

今回で最終話となります。

「レオン、お嬢!」


 レオンが入った南門近くの酒場には、集落から来たみんなが揃っていた。今日はさすがにすぐ王宮に戻って貰わないと。そう思っていたはずなのに、懐かしいみんなを見て私の表情も明るくなる。

 アレクさんを送り届けてきた彼らは、王宮に入ることはできないので、祝いという口実で食事をしているらしい。

 フードを外したレオンの礼服を見て、あらためてみんな楽しそうに笑った。


「おお、いいじゃねえか、かっこ良すぎるだろ」

「レオンが王子様とはねえ」

「別にそんなんじゃない」


 レオンはそう反論しているが、それでもみんなに礼服を見せたかったのだろう。なのでみんなも嬉しそうに賑やかす。

 最近はレオンも王都にいることが増え、なかなか話が出来ない寂しさもあったろう。


「良い色っすね」

「旦那とお嬢の色だからな」


 エディンさんは色を決めた時にいたわけじゃなかったのに、一目見ただけでその色の理由を当てた。そう、レオンの選んだ焦茶と赤は、アレクさんと私の髪から選んだ色だ。

 大事なものを示したい。レオンはそう決め、絶対に譲らなかった。

 レオンと私が座ると、すぐに飲み物が運ばれてくる。


「いいから、レオンも飲め」

「飲まない。お前たちが騒ぎを起こしていないか、見にきただけだ」


 レオンはまだこの後も行事が続く。さすがにまるですっぽかす気はないらしい。

 色々な人に挨拶だってしなきゃいけないし、覚えなければならないことだってある。その辺はほとんど全部陛下に騙されたらしいけれど。


「少し飲んでおいたほうが面白いぞ」


 ハリスンさんがそう言って、しきりにレオンにお酒を勧めている。それを見ていたアルバロさんはこっそり私に言った。


「いいから飲むまで待っていろ、お嬢」

「レオンのやつ、酔うとペラペラ喋るからな」

「そうなの?」


 初めて聞く話題に、私は勢いよく食い付いた。せっかくこっそり教えてくれたのに、私の声はみんなに聞こえてしまう。だってなにせ酒宴を開いた時だって、レオンはほとんど飲んでいなかったから、飲めないのだと思っていた。


「余計なこと言わないように、お嬢の前じゃあ飲まねえんだよ」


 まずエディンさんが笑いながらバラしてしまったので、そこから大暴露が始まった。


「エミリアを気安く呼ぶんじゃねえ」

「俺はあの度胸に惹かれたんだ」

「脅して好かれたいわけじゃない」


 飲むとぐだぐだと話しやがってよお。みんなは次々暴露しながら、楽しそうに笑う。

 そりゃそんな連れて来ちまうくらい必死なら、俺たちだって慌てるし気も使うわ! 誰かがそう言うと、みんなが笑った。ひょっとしてみんなずっとそうやって、レオンを心配しながら過ごしてきたのだろう。


「お嬢の名前を呼べるのはレオンだけだよなー」

「ひょっとしてそれで、どれだけ注意しても私の呼び名が揃ってお嬢だったの?」

「ひひひ、そういうことだよ」


 エディンさんが蒸し返して笑ったから、ようやく私は理解した。そこまでわかると、そういえばそんな心当たりがもう一人いたことを思い出す。


「そういえばガウデーセも娘って呼ぶわよ! 名前呼んでこなかった! いつも失礼だなって思っていたけれど、それもそういうことなの?」

「お頭だって気をつかっていたんですよお。怖がらせるって、最初のうちお頭は姿だって見せなかったでしょう?」

「え? 運良く会わなかったんじゃなかったの!」


 私が目を丸くして驚くと、みんな面白そうに声を出して笑う。そうだったのか、ガウデーセも私の名前を覚える気がないわけじゃなかったのね。

 意外だけどガウデーセって、キレないうちはとっても真面目よね。報告だってきちんとしないと怒るし、なんというか彼なりの筋は通している感じがする。キレなければ。


「お前らいい加減にしてくれ、頼むから!」


 レオンが叫ぶと、みんなはさらに楽しそうに笑った。ちなみにみんな言うほど飲んでいない。昼間だし食事に一杯添えているだけという程度だ。だからこそ彼らなりの喜びと想いが伝わってくる。


「だからまあレオン、一杯飲んで言っちまえ」

「お嬢は鈍感だしな、言わねえとわからないぞ」

「鈍感ってなによ! 失礼じゃない」


 いつの間にか入ってきたのか、ガウデーセは面白そうに目を動かしていつの間にか席に座っている。こういう時わざわざ気配を消して入ってくるあたり、確かに気をつかっている。

 後で聞いたけれど、みんなに割り振られる仕事の手続きや、山道の整備について話を聞きに行っていたらしい。なんだかんだ言って真面目なお頭だから、みんなついていたのかもしれない。あとはどうか時々気晴らしして下さいとしか言えない。


「今いっちばんいい所ですぜ、お頭」


 しっかりとそんな報告が、ガウデーセにされているのは聞こえてくる。たぶんその報告は必要ないと思うわ。

 レオンのほうはまだうろうろとその場で目を彷徨わせている。今更みんなの前で言うとなると、やはり気まずいらしい。


「さんざん言ったろう」

「そうだね、そうかもしれないけど、何度でも聞きたいな」


 正直に答えると、レオンは天井を睨んだ。もう、焦ったいなあ。そう思った私は、手を伸ばしてレオンの首に手を回して飛びついた。つまりまた考える前に動いてしまったのである。


「ありがとうレオン、好きだよ」


 レオンがなにかを告げる前に、ぶふっ! と誰かが吹き出して笑ったのが聞こえた。でも誰が笑ったのかは確かめられなかった。そちらを向く前に、腕に囲まれ、強く抱きしめられる。


「愛している」



 ほんとうに小さく囁く声が聞こえ、軽く口付けが落とされる。

 酒場には、みんなの囃し立てる声が賑やかに響いた。

 大変かもしれないけれど、一緒にいよう。私はレオンとやっと約束ができた。


 レオンはあれからカイル王子などの手助けなど、少しずつ色々なことを学んでいるらしい。

 たまにというか結構な頻度で抜け出して、私の勤めるパン屋にやって来る。

 ちなみにもう来ないと思ったのにカイもたまに来ていた。それぞれ抜け出して来るから、店の中でばったりということもある。

 白い騎士服を着こなした騎士が店に入ってきて、レオンを諌めにかかった。


「そろそろ時間だ、いい加減にしろレオン」

「アルバロお前、喋る抑揚がカイル付きのセイナンに似てきたぞ」

「誰のせいだと思っておられるのでしょうか、レオンハルト殿下」


 騎士服のアルバロさんにわざとらしく言われ、レオンは首をすくめている。確かに今の言いかたは、とっても似ていたわ。カウンターを挟んで聞いていても思う。

 なんとアルバロさん、前は騎士団に所属していて、色々あり逃げ出して集落にいたっていう驚きの経歴持ちだ。調査で判明した後で、セイナンさんが騎士団とのとりなしをしてくれた。

 その後で復隊を促されて、今はレオン付きとなっている。

 こうして抜け出したレオンを追いかけて来ては、目を細めてお説教して連れ帰っていく。けっこう頼もしく、レオンとカイの二人がばったりここで遭遇した時だって、まとめて二人を連れ帰った。


「楽しそうだから、俺も騎士試験受けてみようかな」

「なに無茶言っている。そもそも年齢制限で通らないことはわかりきっているから、騎士団の仕事を増やすなエディン」


 果実水の納めにくるエディンさんとハリスンさんにも、そんな風に話題にされて笑われる。

 だけど、王都で学ぶレオンを、しっかり支えてくれている。

 ただそのエディンさんは騎士試験の年齢制限に引っかかるって話、一体エディンさんは何才なのかっていう新たな疑問も湧く。エディンさんならまだ引っかからないように見えるけど。


「エディンさんって一体何才なの?」

「ひ、み、つ」

「可愛くないぞ、おっさん」


 確かにまだ面白そうなことは沢山あるし、それをすぐに知ってしまうのも勿体ない。

 これからも変わらずにパンは焼いて、私は同じなんてない日々を過ごす。

 ただそこには、レオンが一緒にいてくれる。

 願いを確かなものにするために、私らしく笑い驚きまた笑うの。


 終

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

もしよろしければ、ブックマークや評価などの応援を頂けたら嬉しいです。


初めてだらけの作品でしたが、なんとか書き上げることが出来ました。

そのうち、作中に出てきたカイルの話などを書いてあげたいなと考えています。

その際にはまた読んで頂ければ幸いです。

読んでくださったすべての方に、感謝を!

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