展望台
掲載日:2023/03/28
展望台をのぼる。
とは言ってもこの街の小さな山の片隅にある、木造の簡易的なものだ。
見渡せば雑居ビルと住宅街しかないため、特別美しいとは言えない。
それに別に特別な場所なんかではない。数ヶ月前に1度来たくらいだ
けれどこの街の中ではいちばん高い場所だろう。
360度をみわたせる。
無機質でも広く、どこまでも遠い。
ここまで来て、僕は俯いていた。
下には雑草が生い茂っていて、管理が行き届いていないことが分かる。
寄りかかっている頼りない手すりには、申し訳程度のお布施が置いてあった。
なるほど、これなら仕方ないのかもしれない。
展望。反して、僕にはない。
見下ろす場所にいるのに今にも身を降ろそうとしてるなんて
まったくふざけたアイロニーだな、
と心の余裕を少し感じた。
僕はポケットにあった小銭たちを1枚ずつお布施に入れていく。
なにかのお釣りだったのだろうが、合計で100円もなかった。
しばらくすると、子供の声が下から聞こえてきた。
ねえ登ろうよ、と母親を急かしている。
僕はいそいでおりることにした。




