第28話 届かぬ想い
緑の国のパワースポット鳳凰谷の魔素を浄化する為の儀式、混色の四重封印〔フェアリーカルテット)。
ユウトを救うためのこの四重封印には、妖精変化出来る四人が必要だった。
今居るのは、フィーナとコマチとミクの三人。
最後のひとりを連れてくると、マドカはどこぞへと飛び去った。
「待っててね、ユウト。
もうすぐ助けてあげるからね。」
フィーナは龍脈に沈むユウトに、にこやかに話しかける。
幼児退行したユウトは、幸せそうな顔して、眠ってる。
この龍脈を流れる魔素は、本来マスタージュエルへと流れるのだが、マスタージュエルが破砕された今、行き場を失い、この場に淀む。
それを緑の王妃が安らぎの魔素を注ぐ事で、行き過ぎた安らぎの魔素で満ちている。
このパワースポットの魔素を浄化しないかぎり、ユウトはこのまま眠り続ける。
「フィーナちゃん、ごめんなさい。」
ユウトのそばでしゃがみ込むフィーナに、コマチが謝罪する。
「何で謝るのぉ。」
フィーナは、幼児退行したユウトに話しかける様に、コマチに聞き返す。
「姉の事、マドカリアスの事、謝らせてよ。」
とコマチは言い直す。
「えー、それ、コマチさんが謝る事じゃ、ないでしょ。」
と言ってフィーナは立ち上がる。
視線は眠るユウトに向けたままだ。
「でも、私の姉の事だから。」
とコマチは言い淀む。
「ほんと、あの人、なぜか私には攻撃的なのよね、なぜかしら。」
フィーナは、何か言わなくちゃと、言葉をつむごうとするコマチをさえぎる様に、言い放つ。
「それは、」
とコマチは言い淀む。
さすがに、フィーナの事が嫌いだからとは、言えなかった。
「レスフィーナさんの事が、嫌いだからじゃないですか。」
浄化の腕輪にはしゃいでいたミクが、会話に加わる。
「ちょっとミクさん、」
コマチが小声でたしなめる。
「私もレスフィーナさんの事、嫌いでしたから。
マドカお姉さまの事も、よく分かります。」
と言いながら、ミクはフィーナに歩み寄る。
「あら、私って、そんなに嫌なヤツなの?」
とフィーナはしょげてみせる。
「そ、そんな事ないわよ、ね、ミクさん。」
ふたりの板挟みで、コマチはオロつく。
そんなコマチを無視して、フィーナとミクの会話が続く。
「ええ、ユウト様を下僕にするなんて、凄く嫌なヤツですよ。」
「それはユウトが勝手に言ってるだけよ。」
「ユウト様にそう言わせるだけの事を、したんじゃないですか。」
「何もしてないわよ、そんな事。」
「つまり、自覚が無いんですね。」
「はあ?ある訳ないでしょ、ユウトが勝手に言ってるだけよ。」
「そうですか、ユウト様がかわいそうですね。」
「なんですってぇ。」
「ちょっとふたりとも、落ち着きなさい。」
フィーナとミクが険悪になってきたので、コマチが止めに入る。
コマチに止められても、睨み合うフィーナとミク。
「き、きっとユウト君、フィーナちゃんの事が好きなのよ。」
とコマチは険悪なふたりの仲を、このセリフでとりもつ。
「はあ?そんな訳ないでしょ。」
「あ、私もそこは、コマチお姉さまに同意です。」
フィーナは否定するが、ミクは同意する。
「な、なんでそうなるのよ。」
「見てれば分かりますよ。
レスフィーナさんも、ユウト様の事が好きな事くらい。」
「は、はあ?」
ミクの冷静なひと言に、フィーナは顔を赤くして否定したいが、言葉が続かない。
「まあ、フィーナちゃん、ユウト君の事が好きなの?」
言葉につまるフィーナを、目を輝かせたコマチが押してくる。
「ちょっとコマチさん。」
「ねえねえ、ユウト君のどこに惚れたの?
やっぱり、フィーナちゃんの下僕になってくれる所?
素敵よね、進んで自分の下僕になってくれるだなんて。
あ、異世界でも一緒だったから、異世界で何かあったのかな?」
コマチはぐいぐい押してくる。
初めて見る姉の一面に、ミクは呆気にとられる。
自分もユウト様の事が好きだとバレたら、こうなるのかと、言葉をつぐむ。
「な、何も無いわよ、異世界では。
そう、異世界では。」
と反論しながら、言葉にしたこの事柄に、フィーナは気落ちする。
「うんうん、じゃあ、ジュエガルドに戻ってから、何かあったのね。」
「そうなのよ、ジュエガルドに戻ってから、ユウトの様子がおかしいのよ。」
「まあ。」
フィーナの言葉に、コマチの表情が輝く。
「露骨に私を避けるのよ。異世界日本にいた頃は、あんなに普通に接してたのに。
だから一度、どうしてなのって聞いてみたのよ。
そしたらユウト、なんて答えたと思う?」
「さあ?なんて答えたのかしら。」
コマチはとびっきりの笑顔で、フィーナの返しを待つ。
「いきなり私の事、かわいいとか言って、誤魔化したのよ!
信じられる?こっちは真面目に聞いてるのに、そんな誤魔化し方するなんて、最低よ。
私の事嫌いなら、はっきりそう言えばいいじゃない。」
「ぷっ。」
フィーナの発言に、ミクは思わず吹き出してしまい、慌ててそっぽを向く。
それって、ユウト様の照れ隠しじゃん、と思ったが、今のコマチの前でそれを言ったら、自分にも飛び火しかねないので、黙ってる事にした。
「じゃあ、異世界とこっちとで、フィーナちゃんが違ってみえたのかな、ユウト君には。
故郷に帰ってきたフィーナちゃんが、活き活きして見えたからかな?」
コマチはミクからも何か感じとったが、今はフィーナを攻める。
「確かに異世界では妖精体のままだったけど、私は私よ。
人間体の私が気に入らなければ、そう言えばいいじゃない!」
「え?」
コマチは笑顔のまま、表情が固まる。
「ふーん、フィーナちゃん、異世界では妖精体のままだったんだぁ。」
固まった笑顔のコマチの後ろで、ミクが後ろを向いて笑いを堪えている。
「ええ、異世界日本の気候条件では、妖精体でいるしかなかったわ。」
「つまりユウト君は、ジュエガルドに来て初めて、フィーナちゃんの人間体を見たのね。」
「まあ、そうなるわね。だけど、どうしたの?コマチさん。」
コマチの雰囲気が変わった事には、敏感に気づくフィーナ。
「フィーナちゃん、あなた鈍すぎるわよ!」
「えー、」
なぜかいきなりキレるコマチに、フィーナはドン引く。
次回予告
はあーい、私、フィーナちゃんのママ様ですぅ。
やりましたわ、二話連続、完全にこのコーナーを取り戻しましたわ!
見てるぅ?ユウト君。
って、ユウト君まだあのまんまか。
え、じゃあ、今回もユウト君助けられなかったの?
何やってるのよもう、私が行けばすぐよ、すぐ。
私が鳳凰谷の魔素と一体化すれば、ユウト君もすぐに元に戻るわ。
四重封印だなんて、何まどろっこしい事してるのよ。
さっきマドカちゃんが来てアスカちゃんを連れてったけど、私が先回りして、とっととユウト君助けようかしら。
あ、そしたら私がフィーナちゃんからユウト君を奪う事になるのね。
フィーナちゃんおにぶさんだから、それもいいかな。うふ。
次回、ジュエガルド混戦記激闘編、第三王女の帰国。
お楽しみに。
※今回、まさか恋ばなだけで終わるとは、思いませんでした。
これでは、次回もどうなるか分かりません。
この予告とは異なる可能性がありますが、ご了承下さい。




