第1週(火) SIDE 巡川蹴翔(3)
「あらためて、久しぶりね」
「はい、ご活躍なようで何よりです」
「巡川君のおかげだよ」
「いえ、僕はあの時少しお話しをしただけで、頑張ったのは火山先輩ですよ」
「うーん、それやめよっか」
「どれです?」
火山先輩は少し目を泳がせたあと、まっすぐこちらを見つめてきた。
「こういう状況になったってことは、私の気持ちはわかってるよね?」
「はい……」
トラウマにより気分が悪くなるのをぐっとこらえる。
がんばってどうなるものでもないのだが、できるだけ表情に出したくない。
せっかく火山先輩が距離感に気を遣ってくれているのだから。
「せめて、名前で呼び合いたいなって。私は蹴翔君って呼ぶから、華燐って呼んでほしいな」
たしかに美月ちゃんのことはいまだに名前で呼んでいるけど、普段から女子を名前呼びするようなキャラじゃない。
今更呼び方を変えるのは、なんとも恥ずかしい。
けど……火山先輩の真剣ながらも不安げな瞳を見ていると、断ることなんてできそうにない。
「いいですよ。華燐……先輩」
「やった! ありがと!」
華燐さんはぱんっと掌を拳で叩いた。
「あ……こういうところが女らしくないんだよね」
「いえ、ひ……華燐さんらしいと思いますし、笑顔が素敵なんだからそれでいいと思いますよ」
「あう……それは不意打ちだよ……」
言われて気付いたけど、なんて歯の浮くセリフだよ!
ただ、思った通りに言っただけではあるんだけど。
話題を変えよう。
「華燐さん、さっきの魔法少女姿について聞いてもいいですか?」
「う……」
華燐さんは箸をぴたりと止めて、ぎゅるぎゅる目を泳がせた。
聞かない方がよかったかなあ。
かといってつっこまないのも、お互いもやもやしそうだし。
「本物ってどういう……」
「それは……その……。ああもう! 隠しきれないよねきっと! そう! 私は魔法少女なのです!」
ぎゅっとつよく拳を握る華燐さん。
「…………」
「…………」
「ええと……」
「私は魔法少女なのです!」
「聞こえてはいましたから!」
真っ赤になって目をぐるぐるさせる華燐さんなんて、学校では絶対に見られないぞ。
「つまり……どういうことです?」
「そのまんまの意味だよ。たしかに、肉弾近接戦闘系変身少女を、魔法少女と呼んでよいかは反対意見も多いとはおもうのだけど」
「ちょっと何言ってるかわかりませんね」
「ええ!? 魔法少女モノは通ってこなかったタイプ?」
そうだった。
この人、学校ではわりと言葉数が少ないから気付いてる人は少ないけど、ときどき会話の焦点がどっかにとんでくんだった。
本人の中ではつながっているらしいんだけど。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
続きもお楽しみに!
今日はもう少し更新予定です。
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