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第1週(火) SIDE 巡川蹴翔(2)


 おそるおそる振り返ると、そこにはTシャツにホットパンツ姿の火山先輩がいた。

 早着替えかな!?


「入って入って」


 先輩は何事もなかったかのように僕を部屋に招き入れた。

 夢を見るにはまだ少し早い時間だけど……。


「お、おじゃまします……」


 部屋の間取り美月ちゃんと同じだが、カーテンやベッドカバーを始め、ピンクが多めなせいで随分印象が違う。

 壁につられた使い込まれた空手の道着がとても浮いている。


「おなかすいたでしょ。ごめんね、私が部活終わるまで帰れないから、まほ活もあるとこんな時間になっちゃって……」


 時計は20時をまわったところだ。

 たしかに夕食には少し遅い。


 いまさらっと、『マホカツ』って言った?

 なんだろうそれ。


「ほかのコ達はちゃんと作るのかもしれないけど……ごめんね」


 火山先輩は冷蔵庫からスーパーのお総菜を取り出すと、お皿に移し、必要なものはレンジで温めていく。

 米だけは炊いているらしく、炊飯器から茶碗によそってくれた。


「巡川君が来てくれることになって、新しくお茶碗買っちゃった。ちょっとドキドキするね」


 照れくさそうに笑う火山先輩のその表情は、ファンの女子達が見たら黄色い声援をあげるのに十分なほど魅力的だった。


「じゃあ来週からは僕がご飯を作って待ってますよ」


 美術部に籍を置いてはいるが、遅刻や早退という概念がないほどに自由な部だ。


「それって、私の部屋に一人で先に帰ってるってこと?」


 火山先輩は少し驚いた後、いたずらっぽい笑みを向けてきた。


「あ……すみません! 女性の部屋に勝手に入るなんてだめですね」


 なんてことを言ってしまったんだ。


「いいよ」

「え?」

「合い鍵、来週までに用意しておくね」

「え……でも……」

「いいから。こうして一緒に夜をすごすんだから、いまさらでしょ? ご飯を作ってもらえるなんて、私も助かっちゃうし。タンパク質多めでお願いね?」


 そういう火山さんの頬はほんのり赤い。

 これは今更断る方が失礼かも。


「わ、わかりました。よろしくお願いします」

「うんっ。よろしくね」


 なんだか照れくさくなり、二人ともちょっと俯いてしまった。


 僕は発作が出そうになる不安を必死で押し込める。


 僅かな沈黙を破ったのは、温め完了を告げるレンジのアラームだった。


「食べよっか」

「そうですね」


 僕達は赤くなった顔を冷ましながら食卓についた。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!

今日はもう少し更新予定です。


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