第1週(火) SIDE 巡川蹴翔(1)
■ 第1週(火) SIDE 巡川蹴翔 ■
この奇妙な生活も今日で2日目。
女性陣は昨日のうちに全員で顔を合わせたらしいけど、僕はそれぞれの初日が初対面となる。
それまでは、名前すら教えてもらえない。
この初めましての緊張が7日連続で続くのか……。
既に胃がキリキリ痛む。
とはいえ、いつまでもドアの前に立っていてもしかたない。
僕は身だしなみを整え、呼び鈴を押した。
あれ……?
反応がない。
もう一度呼び鈴を押そうとすると――
――ドタドタドタバターン!
「ちょ、ちょっとまって!」
中から何やら派手な音とともに、慌てた声がする。
慌てていてなお、シャキシャキしつつも優しさを感じる声音だ。
「あとちょっとだけま――きゃああ!!」
これちょっとただごとじゃないよね!?
僕は思わず玄関のドアを引いてしまった。
鍵のかかっていないドアは、それなりの重さであるもののすんなり開いた。
そこにいたのは、学内でも『王子様』の異名をもつショートボブの美少女、火山華燐先輩だった。
彼女だったのも驚きではあるのだけど、問題はその格好だった。
空手で鍛えられた体に控えめに膨らんだ胸が半脱ぎの衣服から見えている。
着ようとしていたのか、脱ごうとしていたのかわからないが、ピンクを基調としたふりふりのミニスカートは床に落ち、同じくフリル多めで背中のぱっくりあいた上着は……破けてるのかあれ?
抱えた上着からちらちら見えるスポーティなブラとパンツが目に毒だ。
両手の拳サポーターがかろうじて火山先輩っぽいと言えなくもないが、それすら白地にピンクのライン入り。
学校で女子にモテモテのクールガールのイメージからはほど遠い。
いや、火山先輩が実はかわいいもの好きというのは知っていたりするのだが、ここまでとは予想外だ。
なんというかこれは……。
「魔法少女のコスプレ……ですか……?」
「コスプレじゃなくて本物だから!」
「え!? どういうことです!?」
おかしなことを言い出した!
本物ってなに!?
火山先輩とは接点がないわけじゃない。
転勤先で中学が同じだったのだ。
先輩は今僕が通う七陽ヶ丘高校に、空手のスポーツ推薦で入ったはず。
入学後に何度か話したものの、あまりに有名人になっていた先輩になかなか声をかけられずに1年が過ぎてしまった。
それがいつの間にかこんな趣味に走っていたとは。
中学の時のように、部活で成績を残せなくて悩んでいるということもないはずだけど。
「ド、ドアだけでも閉めて!!」
「ごめんなさい!」
そうだ、廊下の外側は壁だし、関係者以外は入れない。
でも、住民が通りがかるかもしれない。
僕は慌てて中に入って振り返り、ドアを閉めた。
――って、この状況で入っちゃだめだろ!
「ごめんなさい! すぐ出ます!」
「大丈夫だよ」
「え……でも……」
「もう着替え終わったから」
いやいや、あれから数秒しかたってないよ?
「ほら、こっち向いて」
ここまでお読み頂きありがとうございます。
続きもお楽しみに!
今日はもう少し更新予定です。
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