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第1週(月) SIDE 巡川蹴翔(3)

「ルナ団長のこと、知ってたんだ」


 美月ちゃんは少し恥ずかしそうにこちらを向いた。


「すごいじゃないか。大人気Vtuberだよね」

「ストレス発散のために始めた趣味だったんだけどね。運が良かったというか、逆にこっちの方がストレスになりそうというか……」

「クラス委員長、大変そうだもんなあ」

「まあねぇ……」


 けっこう変わり者の多いクラスなので、まとめるのは大変だろう。

 一方のVtuberは、それこそ変なコメントがわんさか届いているようだ。

 ルナ団長は永遠の17歳をネタにしつつ、実は30歳前後っぽい古いネタをよくやるというキャラだ。

 リスナーからはよく「30歳だろ」とネタにされ、「まだだよ! もうちょっとだよ!」と返すのが定番となっている。

 その実、本当に17歳だと見切られていないあたり、さすがとも言える。


 あのルナ団長の正体を僕だけが知っていると思うと、ちょっとだけ優越感だ。


「ところで、ルナ団長の正体が、なんでばあちゃんに繋がるの?」


 小学校まで、僕とよく遊んでいた美月ちゃんだけど、ばあちゃんと二人で会うほど親密だった記憶はない。


「えっとね……」


 なぜそこで口ごもるんだろう。

 何かすごい秘密でもあるのだろうか。


「ある日配信をしてたらね、おばあちゃんがね、スパチャで凸ってきたの。『あなた、孫の幼なじみでしょっ』って」

「怖っ!?」


 すげえな、ばあちゃん!


「でしょ!? その時の配信、めちゃくちゃ切り抜かれまくったんだから」


 後で見てみよう。


「見なくていいからね!」

「エスパーされた!?」


 いやまあ、それくらいは予想つくか。


「そこから色々あって、本当に蹴翔のおばあちゃんだってわかってね。短い間だったけど、仲良くさせてもらってたんだ。いいおばあちゃんだよね」


 美月ちゃんは目に薄く涙を浮かべた。


「うん、とてもいいばあちゃんだった」


 二人の間にしんみりした空気が流れる。


「それでね、私が蹴翔くんを今でも好きだってバレちゃって、このアパートに呼ばれることになったんだ」


 さすがばあちゃんだ。

 年頃の女子にこんな生活をさせるのを承諾させるなんて、並大抵の交渉力じゃない。

 親御さんの問題だったあるだろうに。


「さて、ごはんにしよっか」

「それなら僕が何か作るよ。家に保護者がほとんどいなかったから、それくらいはできるよ」

「いいのいいの。初日なんだから私にやらせて。その後は、交代にするか一緒に作ろうね。ふふ……」


 ものすごく嬉しそうだ。

 女子に好意を向けられているのを意識すると、どうしても気分が悪くなってしまうけど、そんな様子はできるだけ見せたくない。

 僕なんかを想ってくれているというのは、きっと嘘ではないのだから。


「そうそう、食費の心配はないからね。そのあたりは全部おばあちゃんからもらってるんだから」

「おばあちゃん準備完璧すぎでは!?」


 美月ちゃんの作る料理は、シンプルながらも美味しかった。


 問題はそこからである。

 泊まるということは、風呂もこの部屋で入るのだ。

 僕も、美月ちゃんも。


 当然、風呂上がりのほてったパジャマ姿の美月ちゃんを見ることになるわけで……。


 学校一のサイズと呼ばれる胸が、パジャマの薄い布で隠しきれるわけがない。

 ボタンは上までとめられていても、ボタンの隙間から柔らかそうなふくらみがチラチラ見えている。


「同じベッドでもいいんだけど……どうする?」


 ベッドに腰掛けてこちらを見る美月ちゃんの顔は真っ赤になっている。


「え……」


 そんなことをしたら、発作で気絶してしまうかもしれない。

 わかっていても、すぐに断ることのできないほどの魅力が美月ちゃんにはあった。

 風呂あがりのいい匂いも手伝って、頭がくらくらする。


「え……と……」


 僕が答えられないでいると、手持ち無沙汰になった美月ちゃんが無意識に胸を抱いた。


 ――ぴんっ。


 そのせいで、パジャマのボタンが2つ飛び、大きな胸の谷間とブラが露わになった。


「きゃあ!」


 慌てて後ろを向く美月ちゃん。


「今日は別々に寝よっか。ソファがベッドになるからさ」

「う、うんそうだね」


 結果は変わらないのだけど、とてもドキドキさせられてしまった。

 明日はまた別の部屋になるのだけど……もつかな、僕の心と体……。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!

今日はもう少し更新予定です。


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