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第8話 いいよな… いい…

「あ、確かに。それもアリでしたね」




 パトレイバーもアリだったな。


 あれもリアリティあるロボットアニメだ。




「相模原に勧めると考えるとそこはいいチョイスなんじゃないか。やるじゃないか町田」




 伊勢原先生ダイ・ガードもパトレイバーも知ってるのか。結構色々嗜んでいらっしゃるのねこの人。




「そんで町田氏ダイ・ガードってのはどんな感じのロボアニメなのさ?言っとくけどさあ結局これでっかいロボがでっかい怪獣と戦うん奴でしょお?」




 相模原が興味半分不審半分の表情を浮かべる。




「よく聞いてくれた相模原。ダイ・ガードは2,000年に、かなり前だな。そん時放送されてたんだけどさ。超名作なんだよ!」




 俺は自信満々に答える。


 あ、というか元々伊勢原先生のストライクな世代だったのか。


 リアルタイムで視聴。いわゆるリアタイ勢だったのか。




「うーん。名作名作って言ってもロボアニメでしょ? どう面白いんよ?」




 相模原がブー垂れてくるのも無理はない。


 名作名作とだけ俺が熱弁した所でチャラそうな奴らが『○○サイコ~!』とか『超泣けました!』みたいなフワフワした感想叫ぶだけの映画のコマーシャルと大差ないわな。




 面白いとか名作って口でいくら言っても興味は引けないよな。


 興味を引くようにプレゼンせねば。




「ダイ・ガードだが相模原。この作品はでっかいロボットは出るし厳密には怪獣じゃないが。怪獣も出てくる」


「ちょちょちょそれじゃリアルじゃないじゃんさあ町田氏!」




 俺の説明に相模原が異を唱える。




「言いたいことはわかるよ相模原。ダイ・ガードはリアルじゃない。でもな、リアリティがあるんだよ」


「リアリティ?」




 首をかしげる相模原。俺自身リアルとリアリティの違いをうまく言語化できずにいた。


 改めて相模原にこうやってロボアニメを勧めるという局面になってようやくうまいこと言えそうな気がしてきた。




「そう。リアリティだよ。簡単に言えば『これがこの世界での現実なんだなと思わせる…錯覚させる説得力』だと俺は、考えてる」


「若いくせにいいとこ突いてるじゃないか町田。だいたい合ってるだいたい合ってる」




 伊勢原先生が合いの手を入れる。




「うーん。まだちょっちわかんないなあ」




 今度は反対方向に首をかしげる相模原。もはや首のストレッチだなおい。




「一旦リアリティの話は置いといて作品の説明をさせてくれ。ダイ・ガードの世界では過去にヘテロダインという謎の怪獣が現れて大暴れ。やむなくOE兵器という大規模な破壊兵器を使用してひとまずはヘテロダインを撃退するんだ」




「OE兵器と銘打っているが実際は核兵器みたいなもんだな。使うと復興の目処も立たないレベルに地域一帯が破壊されちまう」




 俺の説明に伊勢原先生が注釈を入れる。そうそうそんなもん。




「そんなOE兵器を二度と使わない為、ヘテロダインに対抗する為に作られたのが巨大ロボットダイ・ガードなんだ!」




「うーん。結局は怪獣出てきて対抗する為に巨大ロボット作りましたでしょ? ド鉄板な設定なのは素人の私でもわかるよー!」




「いやいや相模原。こっからがダイ・ガードの面白いとこなんだわ」


「面白い所?」




 相模原が興味深そうにこちらを見る。




「そそ。ヘテロダイン対策にダイ・ガードを作ったはいいものの、そっからず~っと、ざっと十二年間ヘテロダインは現れないんだよ」


「十二年間? じゃあその時だけのポッと出だったわけ?」




「そう。ずっと出番に恵まれず倉庫の肥やしとなったダイ・ガードは予算を食いつぶす無駄飯食いと非難を浴びることになる」




 ここらへんリアルだよなあ。災害や怪獣にひどい目に合わされて対策を講じたのにその恐怖が忘れ去られてくと対策が無駄遣いって言われるの。


 俺は説明を続ける。




「だもんで二十一世紀警備保障って民間の警備会社に移管。渡されることになるんだ」


「あらら。民間企業にいっちゃうんだ!?」




「巨大ロボって大抵が公の機関が運用してるパターンだから民間企業が巨大ロボットを所有してるってのがユニークだよな」




 そうそう。俺は伊勢原先生の横やりに首を縦に振る。


 この設定は本当心惹かれるよなあ。




「とはいえ肝心のヘテロダインは現れず会社のマスコットと化しているダイ・ガード。予算の影響か腕はトタンだし色々ガタがきていてとても怪獣と戦えるようなスーパーロボットとはいえない状態なんだよ」




「あ~。そっからスタートってワケ」


「そうそう。そんでリアリティの話だけどさ。このダイ・ガードって作品は『ロボットを所有する民間企業が実際に怪物と戦うことになったら』って設定が全く不自然に感じないように作られてるんだよ」




「それでリアリティがあるってことなわけ?」


「そう。予算の悩み。上層部の権力争い。面子がかかった軍との軋轢! 休日出勤! 民間企業特有のジレンマを抱えながらダイ・ガードはヘテロダインと戦うわけよ」




「のめり込めるのは保証するぞ相模原。俺も当時ドハマりしたからな!あの頃は若かったな俺……輝いてたな俺……」




 遠い目をしながら虚空を見つめる伊勢原先生は置いといて相模原の反応は上々だ。




「むう。そう聞くと少し興味が湧いてきたよ町田氏。巨大ロボットに乗るサラリーマンねえ。そんな設定が納得出来るように作られていると?」




 結構食いついてきた食いついてきた。ここは押すべきだな!




「そうそう! 平和を守りたいという熱い思いを胸に秘めたサラリーマン 赤木あかぎ 駿介しゅんすけが無用の長物と化しているダイ・ガードにやきもきしながらも今日も一日退屈な仕事仕事。といった所から物語が始まる」




「赤木がまたいいキャラなんだよな。年齢が二十五歳の大人のサラリーマンってこともあって他の少年系主人公よりもすでに成熟してるのが好みのポイントだったな」




 伊勢原先生がノりにノってくる。あんたそんなにダイ・ガード好きだったんか! でもわかる




「わかりますわかります! 多少迷走というか悩んだりってのもあるけれどもちゃんと割り切るところは割り切って達観した大人な部分もあるのがいいですよね! サラリーマン感あって」




「あ、そっか。ねえ町田氏。民間企業の社員がパイロットってことはさあ」


「そう。このダイ・ガードはサラリーマンが平和を守る物語なんだ。決めゼリフは『サラリーマンだって平和を守れるんだ!』だからな」


「サラリーマンだって平和を守れるんだ。って。ちょっと笑える決めゼリフだねそりゃ。わはは」




「相模原。俺も最初はウケ狙いのセリフって思ってたぞ」




 伊勢原先生がやや食い気味に割り込む。




「けどな。途中からそれがギャグでもなんでもなく本当に心の底からそう思えてくるような熱い思いを感じるようになってくるんだよ! マジで!」


「伊勢原先生……俺も同意見ですよ。社歌に合わせてそのセリフを聞くと俺もう……」




「社歌! そう! わかる! わかるぞ町田! 社歌も最初はウケ狙いだと思って『社歌あるのかwwwwww』みたいに受け取っちゃったんだけどさ、完走したらもうあの曲聞いただけでウルっときちまうよ…」




「ってことは先生…先生やっぱ二十話が一番キたんじゃないッスか?」


「当たりだ。青の約束……いいよな……」


「……いい」




「いやいやいやいや何二人でしみじみしてんのさ」




 相模原が俺と先生が醸し出した妙な空気を引き締める。


 し、しまった。オタトーク特有の『○○…いいよね』『いい…』を先生とやってしまった!

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