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確定演出

「・・・」


どれくらい泣いていたか。

再度ベッドに飛び込んだ私は、ふかふかの枕を抱き込んで涙を染み込ませた。

悲しい、けど、どこか他人事に感じている。自分の意識とは別のところが、ひどく悲しんでいる。

なんとくなくだけど、この体に残った“リベルサ”の残滓みたいなものだと思う。


しかしながら。


ひどくやるせない。


当分の目標に立ててしまったのが原因なのだろうが、出鼻を挫かれた事で先程までのやる気がまるでない。

というかこの国で王族の次に偉い、と密かに言われているお父様が成し得なかった事をたかが子供1人でどうにか出来る訳ないのだ。

全く、頭が悪いにも程がある。


・・・


・・・とまぁ心の中で自虐しても、お母様を助けたいという思いが消えないのは何故なのか。


正直困る。


これも彼女の残穢の影響かな。


「・・・私の事、どこまで聞いているの?」


ふと、側で控えているサラに尋ねてみた。


「そのお体に人並以上の魔力をお持ちであること、止まる事なく増え続けている事は旦那様から聞き及んでいます」

「いつから知っていたの?」

「ついこの間、お嬢様が初めて高熱を出された日からです」


というと、“私”がこの体に来た日ということになるっぽい。

こんな秘密、一介のメイドが知るような内容じゃないはず。それまで知らされていなかったのに、高熱を出した日に聞いたってことは・・・・・


・・・う〜ん、どいうこと?


「どうしてその秘密が知っていたの?」


馬鹿正直に聞くやつがあるか、と思わなくはないが、私がお母様の病因なのか聞いたとき彼女は答えられないと言った。知らない、とは言わず「知っているけど、答えられない」それが彼女の甘さで、優しさだと感じたから。

それに、ひどい癇癪持ちのリベルサに最後まで尽くしてくれた彼女を無条件に信用してしまっている。まぁなんにせよ、彼女は答えてくれそうなので聞いてみる。


「お嬢様が熱を出された日、屋敷中の者が魔力に“あてられました”。私は耐性があったため、一目散にお嬢様のご様子を確認した際、髪と目の色の変化を見ました。と同時に、膨大な魔力の発生源がお嬢様であることに気がついたのです。そこに旦那様がご到着なさり事態を治めたあと、お嬢様の事をお聞きし、契りを交わしました」


サラは微笑んでいる。慈愛を含んだ笑み。まるで不満なんてないですというような。


契りというのはゲーム内でも出てきた、いわゆる絶対服従の契約だ。

魔力の量。それによって主従関係が決まり、服従するものは主に一切の傷をつけられず、どんな命令も厳守しなければいけない。それが自分で、自分の命を捨てる事でも。

命令に関しては物理的距離は関係なく、相手が目の前で命令しなくともその効果は発揮される。

攻略対象にそれを使われたリベルサは、人に逆らうことさえも禁止されてから国外に追放された。


そしてお父様は情報を与えるだけ与え、もし一つでも私の秘密が漏れていた場合、彼女はそく首を切られる状況にされてしまった。


「契りなんて、そんなもの・・・」

「嫌ではありませんでしたよ。不満もございません。私を拾ってくださったお嬢様への、この家紋へは一生の忠誠を誓っていましたから。それが形になったようなものです。ですから、そのような顔をするようなことではありません」


困ったように眉を寄せたサラは、本当に何も気にしていないようで逆に驚いてしまった。


「・・・私、サラが誇れるような人になりたいわ」


彼女の忠誠に応えられるような。


「お嬢様は今でも十分ご立派です。ですが、これからのより良い成長をお側で支えさせてください。それが私の生きる目的でありますから」


私の呟きに少し目を丸くした後、花が綻ぶように彼女は微笑んだ。

それにちょっと気恥ずかしく思いながら、頭の隅で気になっていたことがある。

色が変化していた、というサラの話し。

さっき自分の顔見たけど、緑の瞳に薄紫の髪で原作と変わっていなかった。ちなみ幼少期からこの色だってことは王子ルートで描写されている。


「ねぇサラ。さっき入っていた色の変化って、精霊や妖精に加護を与えてもらったときよね。私、何も変わっていないわよ」

「さすがお嬢様、よくお勉強されていますね。仰る通り、お嬢様はそのお歳ですでに寵愛を受けております。今、元のお姿であるのはタペストリーに受けた加護を強制的に移しているからです」

「へ?」


・・・精霊、妖精からの加護って移せるものなの?てかそんなことしたら怒らない?

気まぐれに、気に入った人間にしか加護を与えない存在で、精霊の分子である妖精はともかく、精霊に関してはプライドが高い。下手にちょっかいを出せば仕返しされて酷い目に遭うのがセオリーだ。


「お嬢様が受けたのは精霊からの加護、寵愛です。今でも余りある魔力に加え、寵愛を受け取ってしまうとお嬢様が危険だと旦那様が判断なさりました」


・・・なんだか、どんどんリベルサに対する認識が変わってきたのだけど・・・もしかして、このキャラ。

隠れチートキャラだった・・・?

ゲームじゃ嫌がらせするばかりで、匂わせすらなかったリベルサが?


「・・・ちなみにどんな色をしていたの?」


この世界の人達は皆鮮やかな髪色をしている。赤、青、緑。濃さもまばらだ。

加護を受けた証となる色の変化は髪の色に現れたり、目の色に現れたり、どちらにも現れたりと個人差があり、色が混ざっている程使用できる属性は多く、濃いほど素質が高いと言われている。ただし神を祖にもつ王家だけは例外である。なんだって、綺麗なプラチナだからね。


日本によく見られた黒髪はこの世界にはいない。もしも黒髪に色変わりしたのなら、それは化け物といっても過言ではない。

まぁ、私は既に(魔力量が)化け物なんだけどね。ははは。


・・・あれ、これフラグみたいじゃない?

まさかねぇ、ははは。


なんかサラが大変言いにくそうな事を口に出す1秒前の人に見える。


「大変申し上げにくいのですがお嬢様。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・真っ黒です」

「まっくろ」


何?あ、お腹の話?腹黒って言ってるのかな


「まるで夜闇のような黒髪でした」

「くろかみ」

「ちなみに瞳は琥珀のような金色でした」

「きん」


どうやらチートキャラ(化け物)だったようです。

ははは、フラグ回収しちゃったよ洒落にならんわ。

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