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救う。

続きます。

話の進みが遅いと感じるかもしれません。

自分でそう思います。



温室に着くと一番初めに、むせかえるような甘ったるい匂いが体に纏わりつく。これはすべて、お父様が集めさせた花々の香り。

次に色とりどりの花が目に入る。カキツバタやボタンに見た目が似た綺麗な花や、食中植物や不気味で毒々しい色形の花もある。


すべての花にそれぞれに効能がある。正直なところ、あまり常人がいていい場所ではない。効能のおおくは花弁と香りに現れる。それらは蒸散によって空気に溶けて、一呼吸するだけですでに頭痛もしてくるほど。


それほどに、温室内の空気の濃度は高いのだ。

だから私はすでに強い香りにあてられてちょっと頭痛がしているのだが、頭のうえのお父様をちらりと見れば、視線は前を捉えて表情は一切変わらない。


温室の中心、お母様がいるほうだけを見つめている。


私もお父様と同じように前を向く。あるのは、花々に囲まれる大きな白いベッド。

そして、その白を淡く色づける薄紫色。近づくほどにスラっとした細腕と顔の輪郭がはっきり見え、陶器のように白い肌、といえば聞こえはいいが、その白さは病的であり唇の色も薄い。


私を抱えたお父様が、ベッドの側に必ず置かれている椅子へと座ると、ふるりとお母様の長い睫毛が揺れた。

現れたのはベリーの色のような瞳。お母様のすべてが均等に整ていて、病的なことを除けば宝石で出来た人形のような人だった。


「すまない、起こしてしまったね。」

「ふふ。いいのです。わたくしは、お二人に逢いたくて目を覚ましたのですから。」


お母様は側にいた侍女にゆっくりと体を起こしてもらって、水を一口飲んだ。

私はお父様の膝から降りて、お母様のすぐそばに立つ。


「元気になったのですね、リサ。安心しました。」


そういうと、指の背で優しく頬を撫でてくれる。柔らかい笑顔と、優しい声を聴いたら心の底から溢れ出す大好きという気持ち。幼いリベルサの感情だ。だから、私の感情じゃない。

私は、その手にそっと手を添えてお母様の体温を感じた。それは、私よりも低くて、自分の体温を分けるようにぎゅっと握る。


「ええ。もうすっかり元気ですの!ご心配をおかけしましたわ。」

「リサの元気な姿を見ると、わたくしも元気を貰えます。・・・そうね、今日は散歩しましょうか。」

「アメリ、ゆっくり休んでいないと・・・。」

「一日中寝てますもの。少しくらい大丈夫ですわ。」


そう、微笑んで言われてしまうから、お母様に弱いお父様はそれ以上言えなかった。

お母様はゆっくりと体の向きを変えて、布団から足を出してベッドからそっとおりる。侍女が手伝おうと動くのをお父様が止めて、手を差し出た。

美男美女が手を取り合う様子に見とれていた私は、ハッとしてお母様の足元で幼い力ながらに支える。


「ありがとうございます、リサ。」


私達は、お母様を中心に支えて、温室のすぐ外までの短い散歩を楽しんだ。それ以上は、お母様の体がもたないから。短い距離を歩いただけでも、息が上がって、咳が出てしまう。

だから途中からお父様が抱えてベッドに連れて行った。


「ふぅ、・・・やっぱり、家族一緒のほうが楽しいですわ。」


お母様が、呼吸を整えてからそういった。幸せそうにニコニコと笑みを浮かべている。


「すまない、いつも一緒にいてあげられればいいのだけど・・・」

「良いのです。こうして、会いに来てくれるだけで私は幸せですから。」


そういうお母様の笑みは、ほんとに弱々しくて、どれだけ元気に振舞おうとしていても、やせた体や血色の悪さは、見ていて辛くなってくる。


・・・お母様を救う。救いたい。


自然とでた言葉。強く胸に焼き付く、絶対に救いたいという思い。


でもふと思うのは、これは本当に『私』の、『白樺莉紗』としての意思なのかということ。

それとも、リベルサの意思に私が引っ張られているのだろうか。


前世の記憶のほぼがリベルサの記憶によって古いものとされ、私の持っていた記憶は今にも消えてしまいそうだし、私自身、新しい記憶のほうの感情や考え方に引っ張られているような気さえもする。


そんな私から出た言葉は、私自身の言葉なのかな。


消えてしまいそうな記憶、それ以外は思い出せない。

だから、こんな風に前世の私もリベルサのお母さんを助けたいと思ったのか。今となっては自信がない。


記憶のほとんどをリベルサの記憶で埋められている『私』は、ほんとに今までのわたしなのかな。

正直、考えすぎなような気もしてきたのですが、このままで書き進めていこうと思います。


未熟者ですので、頭の悪さには目をつむって頂けると幸いです。

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