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1話・花の香り

 信じられない。ここは私のいた世界とは違う世界? そんなの信じられるわけないじゃない。だって、さっきまで私は自分の部屋にいて、このスマホで彼や友達と話してたし。

 映画のセットとか、ドッキリだったりするんだよね?


「カナ。大丈夫かい?」


 カトルの緑色の瞳がじっと見つめてきた。


「あの……」


 訳がわからなすぎてボロボロと涙が流れた。


(怖い、怖いよ。タツミ、返事して!)


 自分のメッセージと送信失敗表示だけが増えたスマホを握りしめて、私は泣き続けた。

 嗚咽(おえつ)がひどくて、うまく、空気が吸えない。すごく、苦しい。


 急にふわっと身体が浮いた。カトルが私を抱き上げたのだ。


「おっ、下ろしてください!」


 (あわ)てて私は、おろすようにお願いするけれど、彼はそうしてくれない。


「ダメだ!」


 それどころかカトルはそのまま、私を連れてどこかへと歩き出した。


「ここは……」


 沢山の綺麗(きれい)な花が咲く庭園に連れてこられた。


「あそこは地下だから空気が悪い。ここは私の庭だから、誰もこない。ゆっくり息をしてくれ」


 そっと、ガーデンベンチに降ろされた。たしかに、ここは広くて、明るくて――。


「落ち着くまで、ゆっくり待つから。すまない。急に色々言われて混乱させてしまったな」


 そっと、彼は背中を(さす)ってくれた。まだ、涙は止まらないけれど、大きな息をすると花の香りがして、少しだけ気がまぎれた。


 私は、ゆっくり大きく息を吸った。

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