12話・笑顔
「そうだ、これを」
そういって、契約の場所に行く時に使ったと思う鍵と小さなピンク色の宝石がついたネックレスを渡された。
「なぜ、これを?」
「この鍵はあの部屋に行くための鍵だ。あの場は光の精霊を強く感じることができる。カナの役に立つかもしれないから持っていてくれ」
「はい、わかりました」
じっと、手の上にのせられたネックレスを見ていると、カトルがそっと取り上げて言った。
「つけてあげるよ」
カトルが後ろにまわり留め具をとめるとき、首筋に指が触れる。
なんでこの手がタツミじゃないんだろう。
でも、タツミだったらきっと照れてこんなことはしないか。
「出来たよ」
ピンク色の宝石がきらりと光っている。
「良かった、似合ってる」
「ありがとうございます」
私は無理やり笑顔を作って、笑った。
ーーー
大きな長いテーブル。こんなところでご飯を食べるの?
綺麗な食器の上にはパンや果物、スープ。ピカピカに磨かれたシルバー。きらびやかな食事風景なのだけど……。
席について、私は一口、くちにする。
美味しくない。
タツミと食べたラーメンのほうが何倍も美味しい。
「カナ、口に合うかい?」
カトルに聞かれたので私は笑顔を張り付けて答える。
「はい、美味しいです」
「そうか、何かあれば言ってくれ」
「はい。優しいですね」
「カナの為なら何でもするよ」
カトルの笑顔が、タツミの笑顔とかぶってきちんと見えなかった。