11話・曇り
「同い年の彼氏作れよ。オレなんかに告白してないでさ」
何よ、私が好きになったのは他の誰でもない。タツミなのよ? 同い年になんて興味ありません。失礼しちゃうわ。
「私は、タツミがいいの!!」
小さい頃から大好きだから。やっと勇気をだして告白したのよ?
ーーー
目が覚めても変わらない。知らない部屋。
私は手の甲をつねって痛みを確認する。
「痛いよ……」
夢じゃない。現実であることにか、つねった痛みかわからないけれど、涙がでてきた。
「聖女様、お目覚めですか?」
外から知らない女の人の声がする。
「失礼します。朝のご用意のお手伝いに参りました」
あぁ、昨日のお水を持ってきてくれた人だ。たぶん。
私はされるがまま、着せ替え人形のように手伝いにきたという人たちによって着替えさせられた。
「何、これ……」
動きにくいし、重たい。苦しい。
ドレス自体はとてもキレイで素敵なんだけど。
何も考えたくないのに、これじゃあ余計にいやになりそう。聖女ってこんな格好しないといけないの?
コンコン
ノックの音がする。
「カナ、用意はできたかい? 一緒に朝食をとりにいこう」
カトルの声だ。ここで唯一の知っている人。
だけど、私は帰れないと言いきった人。
あまり信じないようにしようと心に決めて、私は外に出た。
「おはようございます。カトル様」
カトルは目を見張っている。
「あの?」
「あぁ、すまない。とても似合っている。綺麗だよ、カナ」
「ありがとうございます。カトル様」
「カトルでいいよ」
「王子様に失礼では?」
「いや、カナなら、かまわない」
呼び捨てなんて、タツミだけのつもりなのに……。
「よろしくお願いします、カトル」
「あぁ、さあ行こうか」
腕をとられて、エスコートされるけれど私の心は曇ったままだった。