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Pass5 誰が為の力<<皇帝>> 

地下迷宮の主であったラミアはアインによって封じられたのです。


が?!


アインはレーシュの秘密を探ろうと近寄ったのです・・・

誰かの気配を感じたのです。

なんだか良く分かりませんけど、身に迫る危機を感じるのです。


良く分からないけど、自分がどうして気絶したかを思い出そうと・・・



・・・・・・



・・・



眼を開ける前に、気が付いたのは!


ー 確か・・・アインさんと魔物が対峙していて・・・はッ?!


思い出してしまいました!

現れ出た怪物の姿を、ワタクシは観てしまったのでした。


黒の召喚術師アインさんが、ラミアと闘おうとしていたのを観て・・・気絶しちゃったのです。


ー と・・・言う事は?この危険な気配の正体は?!


眼を開けようにも恐怖が先に立ってしまいます。

眼を開けたら、ラミアを観てしまいそうです。


ー アインさんはどうなったのでしょう?彼もやはりラミアの餌食にされちゃった?


瞼を開けてしまえば、最悪な光景を見てしまうような気分です。

それに今感じる気配がラミアだったら、目を開けた瞬間に石にされ兼ねません。


ー ラミアの眼を見てしまえばお終いだわ。

  きっと石にされちゃうんだから・・・


ワタクシはどうして良いか分からず、固く眼を閉じたままでいたのです。

直ぐ傍に、良からぬ者の気配を感じて。




「おい!」



それはいきなりでした。

頭上から声がかけられたのは。


脅え返っていたワタクシは、誰の声なのかを考えている余裕なんて有りはしませんでした。

恐怖と驚きで、身体が勝手に反応してしまったのです。



「ひゃぁッ?」



悲鳴のような叫びをあげて、目を開ける前に飛び起きてしまったんです。





  ど げ し ッ !!




運悪く・・・と言いますか、飛び起きた所に誰かが居たみたいで。


「いッ?!痛たたたぁッ」


頭が誰かとぶつかってしまいました。

いいえ、ワタクシの秘密である角が痛むのです。


「あ痛たたぁッ?!」


あまりの痛さに角がもげちゃったかと思った程でした。


「と?あれ?!隠しておいたはずなのに?」


そこでやっと目を開けれたのです。

自分の秘密を晒しているのに気が付いたから。


慌ててリボンの位置を確認しようと手を廻したら、在るべき物が無かったのです。


「あれ?気絶して倒れた拍子に外れたのかしら」


ラミアが居るかも知れないというのに、ワタクシは痛さで混乱していたみたいです。

呑気にリボンを探している暇なんて無いというのに。


でも、リボンを探そうと横を向いたワタクシの目に飛び込んで来たのは?!


「悲ぃいいいいいッ?」


額から血を流して倒れているアインさんの姿!


「やっぱり?!ラミアにやられてしまった?」


蛇女ラミアと対峙していたアインさん。

人が勝てる相手ではないと想像していた通りになってしまった?!


「あわわわわッ?し、しっかりしてくださいアインさん!」


横で倒れているアインさんに飛び縋り、揺り動かしてみたのです。


ー もしもアインさんが殺められるくらいなら、ワタクシだってきっと・・・


必死に揺り動かしていると、アインさんの息がある事に気付いたのです。


「よ、良かった!しっかりしてくださいアインさん」


ワタクシと同じで気絶しているのだと判りました。

でも、こうしている間にもラミアが襲って来そうですから。


回復魔法ヒーリングを唱えますから、目を開けて!」


今、ワタクシに出来ることと言ったらこれ位しかありません。

取り落としていたシスターのロッドを持ち直し、アインさんに向けて呪文を唱えたのです。


「聖なる龍神様。か弱き信徒に癒しを与えたまえ!

 ドラゴドラゴニア・キュアヒーリング!」


聖なる神に仕えるワタクシは、シスターとして最低限度の回復呪文を習得出来ていたのです。

魔術の類には変りありませんが、攻撃魔法なんかに比べると地味だと言えました。


ロッドを掲げてアインさんに振り下ろしますと、翠のオーブから魔法が注がれました。


挿絵(By みてみん)



賢者さん達が放つ完全回復術とまでは行かないまでも、ワタクシの回復魔法でアインさんの額から流れる血が停まったのです。


「良かった!後少し・・・」


こう言っては何ですけど、教会では怪我を負った方達を治療する役目を仰せつかっていたのです。

勿論、今アインさんへ放っているのと同じ回復魔法で、ですよ。


教会を頼られて来る皆様は、ワタクシの治療魔法に感謝してくださったものです。

ワタクシみたいな新米シスターに・・・なのですよ。

スクエア神父様からも、ワタクシには聖なる力が秘められているのだってお褒め戴いたくらいなんですから・・・えっへん!


とか、思い出している内に・・・


「ううむ・・・」


疵が癒えたアインさんが気付かれたみたい。

もう十分だと判断したワタクシが、呪文を解いて声を掛けました。


「アインさん!お気づきになられましたか?」


額の傷は薄っすらと痕が見えるくらいにまで小さくなっているのです。

後はアインさんの眼が開くのを待つだけ。


「アインさん?早く眼を開けてください。

 そうしないと・・・ラミアがいつ襲って来るか分かりませんよ」


軽く揺すってみましたが、まだ目覚めて貰えません。


「しょうのない人ですね」


揺すって駄目なら、目を開けるまで声を掛け続けるしかないみたいです。


「アインさん、アインさんってば」


何度も声を掛けましたけど、目を開いて頂けません。


「困ったなぁ。

 それじゃぁ、()()()って何か呼び出せないかな」


帽子に描かれた魔法陣とアインさんのロッドを観て、ワタクシにも召喚術が使えればなぁって思っちゃいました。


・・・と、ワタクシが嘆いた瞬間でした。


眼を開けてくれないアインさんの身体がビクンっと、撥ねた気がしたのです。


「アインさん?」


呼んでみると、アインさんの眼が開いていくのです。


「良かった・・・目を開けてくださいましたねアインさん」


やっと、起きてくれそうです・・・と思っていましたら?


「俺はアインなんて名ではないぞ。俺様は悪から女の子を救う勇者様だ」


突然意味不明な発言を?!


「はいぃ?」


思わず打ち所でも悪かったのって、訊いてみたくなりました。


眼を開けたら、即座に身体を起こし立ち上がるアインさんが。


「魔法僧侶よ。

 この迷宮には、まだ救出されていない女の子が居るのか?」


「魔法僧侶?あの・・・ワタクシの事ですか?」


怪訝な顔でアインさんを観てしまいます。

気を失う前までのアインさんとは別人みたいに思えてしまって。


「当たり前だろ。

 ここには俺様とッパイ君しか居ないんだからな」


「はぁ・・・やはり。打ち所が悪かったんですね」


身体を嘗めまわすように観て来るアインさんが、ワタクシの胸のあたりを見てそう表現したのです。

黒の召喚術師アインさんでは無くなってしまったようですね。


「ふん?俺のどこに落ち度があると言うんだ。

 俺様はアレフ・ラメド!こうみえても正義を愛する勇者様なんだぞ」


「・・・・はいぃ?」


黒の召喚術師さんが、今度は勇者様ですか?

ワタクシは呆れて声も出せません。

これというのも、ラミアに襲われたからでしょう。

今はこの場から一刻も早く逃げなくてはなりません。


立ち上がったアインさん(今はアレフと名乗っていますが)を、ラミアが出没した場所から引っ張り出すのが先決だと考えました。


「そ、それじゃぁ勇者アレフさん。

 急いで逃げましょう、ラミアのいる墓場から」


周り中に転がる骸を指して、ここは危険なのですって教えたのです。


ですが・・・


「何を言っているんだ魔法僧侶。

 蛇女ラミアなら、とっくに滅ぼしてしまったじゃないか」


「ほぇ?滅ぼした・・・ですってぇ?」


どういう話?なぜラミアを滅ぼしたと言えるんですか?


ワタクシが呆然とアインさん・・・もとい、アレフさんを見詰めると。


「なんだ、知らなかったのか?

 蛇女ラミアならば、とっくの昔に滅ぼしちまったぜ?」


アレフさんは事も無げに言うんです。


「で、でも。アレフさんは気絶していたではないですか?」


「何か勘違いしているようだが。俺様が気絶したのはお前の所為なんだぞ!」


・・・意味不明なんですけど?

ポカンと観ていたら、額を押さえたアレフさんが言うには。


「魔法僧侶を起こそうとして屈み込んだ瞬間にだな。

 お前の頭とぶつかったんだよな、俺様の眉間が・・・」


「あ・・・はは。あはははは?」


ホントーですか?本当に・・・間抜けな話ではないですか!

もうね、笑うしかありませんよ?


「回復魔法の放ち損だったのかしら」


アレフさんの言うのが正しいのならば・・・ですけどね。


「それにしても・・・だ。

 魔法僧侶はなぜ頭に角なんて生やしているんだ?

 その角のおかげで、危うく死ぬところだったんだぞ?」


呆れ果てていたワタクシを、現実に呼び戻したのはアレフさんの一言でした。


「あ・・・観ましたね?見ちゃいましたね?」


リボンを結い損ねていたのを思い出したワタクシが、慌てて角を隠しながら訊きますと。


「観るも何も。丸出しなのはお前の方だろうが?」


うっかりしていましたけど、こうなったら省がありません。


「観られたからには・・・口を封じさせて貰いますから」


スクエア神父様からも、きつく言われていましたから。

もしもワタクシの秘密を知られてしまったら、その相手が口外しないかを見張らないといけないのです。

つまり・・・旅の道連れにしなければなりません。


「なんだよおい?俺様を殺すとでも言うのかよ」


「シスターが人殺しなんて出来ませんよ!」


アレフさんって、どれだけ自己中なんでしょう。


「違いますよ。ワタクシの監視下におかせていただくだけですから」


行動を共にして、秘密を口外されないように見張るだけです。


「なんだと?!俺様の行いをシスターが見張るだって?」


「いけませんか?」


口外されたら危難が降りかかる虞があるのですから。


「いけないも何も!

 俺様は魔物に囚われた女の子達とムフフな関係になるのが目的なんだぞ!

 そんな処にシスターがついてきたら、ヤリにくくってしょうがないだろうが!」


「むふふ?それって・・・もしかして?」


アレフさんの言ってる意味が・・・分かり兼ねたのですが?

女の子とどんな関係になるって言うのですか。


まるっきり話が通じないワタクシに業を煮やしたのか、アレフさんが怒鳴ったのです。


「ああ、そうさ!

 魔物に抱かれちまった女の子を人に戻すのが俺様の趣味。

 魔物の子を宿して墜ちた女の子を・・・

 もう一度、人を愛せるようにしてやるのが俺様の異能なのさ!」


・・・って。事は・・・つまり?!


「俺様という勇者が持っているのは、魔に墜ちた女の子達を人へと戻せるモノなんだぜ!」


胸を張って・・・とは言いません。

目の前で教える殿方は、腰に手を充てて突き出していたから。

アレフさんは腰をカクカク振りながら、ワタクシと言うシスターに教えるのです。


「なッ?!なんて破廉恥極まりない!」


ワタクシだって、子供がどうやれば産まれてくるか位は知っています。

魔物に孕まされてしまった女の人が墜ちてしまうのだって、アインさんから聞かされたところだったのです。


「そんな厭らしい能力なんて!誰の為にあるのですか?!」


思わず叫んで、ワタクシは気付いたのです。


アレフさんの能力があれば、ケートさん達も救えるのではないかって。


「そ・・・そうか。

 アレフさんをコロニーに連れて行けば?!」


この地下迷宮に連れて来られた女の人達を救えるのではないかって・・・・


あらま?

アインが別人になっちゃいましたけど?


一体どういう訳で?


次話からはレーシュたんのターンのようですW


次回 Pass6 救い<<教皇>>

囚われの娘達を救えるのは君しか居ない!って。そんな破廉恥な秘密が?!

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