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Pass4 その名は大悪魔 <<女帝>>

蛇女(ラミアと対峙するアイン!


彼の自信は一体どこからなのか?

飛び掛かって来たケムダーと呼ばれたラミア。


だが、目の前に居る者が名乗った。

人族の姿を模っている・・・魔王が。


「ア?!アスタロト?無感動アディシェスの魔王アスタロトだとッ?!」


己が眼を見開き、少年を見据えるラミア。


自分よりも上位の者を呼んでしまった・・・焦ったばかりに。

邪なる者が主人クラスの名を呼んでしまえば、自分の魔力を奪い去られる結果になる。

分かっていたとしても呼ばずにはおられなかった。


何故なら。


「馬鹿な?!こんな場所に魔王が訪れるなんて・・・有り得ない?!」


有力な街や教会ならいざ知らず。

ラミアが居るのは片田舎の洞窟だったから。

自らが足掛かりにするべく潜んでいただけの何の事も無い地下迷宮だったから。


「お前が魔王アスタロトの筈はない!

 我が主アドラーメルク様の領内に来る筈が無い!」


拒絶する貪欲ケムダーなラミア。


だが、相手の名を軽はずみに呼んでしまった報いは直ぐに表れる。



「俺が偽物とでもいうつもりなのか?

 ならば、お前の異能は完全なのか・・・見れば良いだろう」


「なッ?!なんだ・・・とぉッ?!」


アインに指し示されたラミアが気付いた時には。


「ば・・・かな?!」


腰に巻き付いていた蛇が掻き消されてしまっていた。


それが意味しているのは、既に魔力の何割かが無くなっている証。


「嘘だろぅ?魔王がなぜ?なぜ我の元に来たのだ?」


ラミアは突き付けられた現実に、戸惑うよりも恐怖を覚えた。

主人である魔王アドラーメルクならいざ知らず、支配地以外の魔王がなぜ侵入して来てるのかと。



「ま・・・まさか?」


考えた末に導き出した結論は?


「アドラーメルク様をも滅ぼす気じゃぁ無いだろうな?!」


侵略・・・そして魔王は大魔王と化そうとしているのか・・・と。

魔王が他所の魔王を喰らう・・・そして更なる力と領地を得る。


「お前は・・・闇の王にまで手を出す気なのか?」


ラミアは名を言えません。

その名を口にしてしまえば、一瞬で滅びかねないからでした。


「俺の望みは全カードを集めることだ。

 全てのカードを手に出来さえすれば・・・再び蘇れるのだからな」


自分を魔王アスタロトと名乗った少年が嗤う。


「その為ならば喩え大魔王サタンであろとも撃ち従えるまでだ」


アスタロトが言ってはならない虚無の名を溢した。


「ぎゃああああああああ~ッ?!」


敵対する者から<悪魔王>の名を示されたラミアは、途端に苦しみ悶えてしまう。


普通の魔物や人族から聴いたとしても何ほどの事があろう。

だが、目の前に居る少年の言霊は・・・


「痛かったか?これで俺がアスタロトだと分っただろう?」


「ひ・・・」


ラミアは消滅の危機に怯え竦み、闇の眷属である誇りさえも打ち捨てて。


「やめろ!やめろ!我に手を下すな!」


人族の姿を模る魔王に赦しを乞うのだった。





勢いよく攻めかかったのが仇となる。


相手が自分よりも上位の悪魔だとも知らずに。

その結果、今自分は消滅の危機にある・・・


ラミアは主人のアドラーメルクを呼び出そうと躍起になった。


「我が主よ!この場に来て余所者を放逐されよ!」


主人である魔王アドラーメルクを呼び出さんと、魔力で魔法陣を描き始めるのだ。


「勝手に奴を呼び出されては敵わん。

 大人しく俺のカードに成れ・・・ラミアよ」


カードに成れ?

アスタロトはラミアをどうしようというのか?


「今の俺が手に出来ているのはたったの12枚。

 残り10枚が必要なのだ。

 大アルカナ全てを揃えるには、強大なる魔力を喰わねばならんのだ!」


喰う?

つまりラミアを?


「お前を我が物と換えるのが、ここに来た理由。

 大人しく俺のモノとなり、カードになってしまえ!」


ラミアに宣言するアスタロト。

強力な魔力を有する者を喰らう事に因って、タロットカードに変えるという。


「数百の魔物より、魔王直下の眷属を喰らう方がカードに換え易い。

 俺をこの姿に閉じ込めやがった<奴>を倒す為には、

 同族だろうが滅ぼせば良いのだと判ったのだ」


「な?!なんだと?お前は反逆するとでも言うのか?」


魔王はすべからく大魔王であるサタンのしもべだというのに?

アスタロトは自らの意志で同族を滅ぼすと言った。

しかも、自らを取り戻す為だとも。


それに、アスタロト程の魔王を<閉じ込めた>相手が存在するのだとも。


「反逆?馬鹿も休み休みに言え。

 俺は望みを果そうとしているだけだ。

 <奴>と今一度対戦して打ち破る。

 その為には在るべき姿へと戻らねばならん・・・その為のカード。

 呪われしカードを揃えれば、俺は再び闇で君臨できるのだ」


アスタロトの目的。

それは自らの復活、在るべき姿の現界。


「俺が闇の王として復活出来るかは、タロットを揃えられるかに懸かっているのだ。

 その邪魔をする者には無残で残忍なる報いを以って対するだけの事」


「き、気が狂ったかアスタロト?」


魔王の復活に、同じ悪魔が必要だなどと言うのは大魔王の意思に反している。

ラミアが超えたのにも一理ある・・・が。


「戯言は此処までだ。

 俺のカードになるが良い、ラミアよ!」


アイン・ベートが持ったⅩⅤ番目のカードが、帽子に放り込まれる。


「抵抗など無駄!抗えば虚無の中で永劫の苦しみを与えてやるだけだ」


「ひぃいいッ?!」


ラミアは怯え・・・そして観た。


アインが放つ召喚術に因って現界する者を。






 どぉんッ!






紅い魔法陣が虚空に描かれ、中から得体のしれない者が現れ出る。





 おおおおおぉ~~~~~ん




絶対なる闇。

完全なる虚無。


それは悪魔の中でも強大なる力を持つ者の証。






 ズオオオオオオオオオォー





アインの召喚術に因って、魔王アスタロトが仮初めの姿を現す。


ラミアの眼に映ったのはスーツを着たいぬ

いや、犬の顔ではあったが、耳はウサギのように長い。

赤黒い目に、金色を纏う澱んだ瞳があった。

黒と赤を基調にした姿。怒りを露わにした貌。

獣人の姿なのに魔王?魔王なのに獣人?


ですがキメラのような姿から発せられるのは強大なる魔力。


「ぎゃあああぁ?!やめてくれぇッ!」


断末魔のラミアが吠えた声に、召喚されたアスタロトを名乗るけだものが。


「俺が闇の皇帝となった折には、復活させてやろう。

 それまで俺のカードに収まっておれば良いのだ!」


鍵爪を伸ばしてラミアを捕えんとしていた。

捕まれば・・・則ち消滅。



挿絵(By みてみん)



無感情アディシェスな声とともに、その手が蛇女を引き裂いた。


「成るが良い、ラミアよ。俺のタロットへと!」


「・・・・・・」


最早声すら出せずに、地下迷宮の主は潰え去った。


消し去られるラミア。


魔王の手に捕らえられた瞬間、蛇女は一枚のカードと成り果てた。




帽子をひっくり返したアインの前に落ちているのは悪魔のタロットカード。


「Ⅸ番目・・・隠者。

 賢者は裏返せば崩壊を司る者となる・・・か」


拾い上げてホルスターへと無造作に投げ込んだ。


タロット番号の9・・・隠者のカード。

表の意味は賢者。逆位置では崩壊を齎す者。


ラミアの魔力は9番目のカードと化した。


「残りは9枚。

 一刻も早く手にしなければならない」


アインはマントと帽子を被ると、墓場から出て行こうとして足を停めた。



「ほぅ?!俺にも分らなかったのか」


聖龍のシスターが気を失って寝そべる姿を見ていたアイン。

倒れ込んだ拍子に結わえてあるリボンがずれているのだが、そこには。


「正直、こいつをどうするとかは考えても居なかったが。

 これを知った限り、手放すのは勿体ない話だ」


黄色いリボンからはみ出しているエルフのような長耳。


そして、彼女が秘密にしている結い目部分もズレていた。


ズレた部分にあったのは・・・小さな赤味を含んだ白い角。


「長耳に角・・・こいつは面白い。

 本性が何者なのかは判らんが、人族ではないのは間違いなさそうだな」


魔王にも分からない?

レーシュが何者なのかが?


だとすれば誰が知っているというのか。


彼女が旅に出た理由もそこにあるのだろうか?


魔王アスタロトを宿した黒の召喚術師は、蒼銀髪の少女を見下ろして嗤うのだった。


挿絵(By みてみん)


アインによってタロットカードにされたラミア・・・


魔王アスタロトは何故人の姿を?

その訳を知る前に、レーシュの秘密が暴かれてしまいそうなのですが?


次回 Pass5 誰が為の力<<皇帝>> 

気がついたレーシュは?傍で倒れている者に仰天したのです?!

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