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Pass12約束と願い<正義>Act12

やっと・・・街まで帰ってきたレーシュ達でしたけど。


そういえばマァオって・・・怪しいんじゃなかったっけ?

カルクルムの街まで戻って来たワタクシ達は、いの一番に向かったのです。


そう!あのお料理を出してくださる宿屋さんまで。



「ボクも食べたいなぁ~」


マミさんのポシェットに収まったままのマァオくんが愚痴ていました。


「でもねぇマァオ君。蒼真似真似あおまねまねの姿のままじゃ駄目だよ」


それはそうでしょう?だって魔物そのものなんですから。


「だったら・・・化ければ良いんだよね?」


化けるって・・・何に?


「人の姿を真似まねれば、問題ないでしょ?」


確かにそうだけど。

ワタクシはマァオ君が化ける処を観たことが無いので、どう返事したモノやら考えたのでしたが。


「うむ、ものは試しだ。やってみろ」


御主人アレフ様は寛容な言葉で促しました。


「おいマァオ。下手な人物に化けるなよな」


腰のポシェットに手を添えるマミさんが注意を促すのでしたが。


「下手なって、どんな奴にだよ」


化けようとしているマァオ君が聞き咎めます。


「そうだな・・・あそこに居る親爺とかには、絶対化けるなよな」


街角をうろついている銀髪の紳士を指すマミさん。


「だって、お前。ボクとか言うじゃないか」


言葉使いを揶揄し、化けるのなら年若い姿を採れと言ったのです。


「そ~かぁ。それもそうだなぁ」


納得したのか、マァオ君は辺りを探ってそれらしい人を見つけ出しました。


「それだったら・・・あの絵の人物に化けるよ」


どうやら、お目当ての外観を探し当てたみたい。


「あの絵?」


ワタクシはマァオ君が化けようとしている街頭に掲げられた絵の人物を観て声を呑んだのです。


「あれって・・・古代アシュランの魔導士様か何かかしら?」


魔法衣らしき衣装を身に纏った少年の姿が描かれています。


「違うぞ下僕シスターよ。あれは現王の若かりし姿だ」


「現王って・・・グスタフ王?」


今のアシュランを治められている王様、グスタフ様の若かりし姿?

ってことは・・・


御主人アレフ様の御父君?」


「元・・・だぞ。元!」


いや・・・元もヘチマもないでしょうに。


壁に掲げられてある肖像画は、御主人アレフ様のお父様なんですって。

描かれた王子様の姿は、どことなく御主人様にも似ているような気がしました。


髪の色は少々茶けてはいますけど、顔の輪郭なんかは瓜二つ。

尤も、衣装は魔法衣のような派手な服装で描いてあるのですけど。


「御主人様が茶毛だったら、あんな感じなのかな」


「俺様も元々は茶髪だったんだがな」


え?それは本当なのですか。


「黒の召喚術師になってから、黒髪になったんだ」


ほえぇ?職業属性ジョブで髪の色が変わったのでしょうか?


「理由は知らんが、俺様も王家の血を受け継いでは居たんだが。

 召喚術を会得した暁から、髪や瞳の色が変わったんだ」


そうなのですね・・・やはり宿られているからなのでしょうか魔王に。

詳しい経緯は、御主人様が気が向かれた折にでも話して頂く事にして。


「本当のお姿をみたいものですね・・・いつの日にかは」


話を区切ってから、ワタクシはマァオ君を促す事にしたのです。


「お腹も空いた事ですし、マァオ君にはとっとと化けて貰いましょうね」


「なんだよレーシュ。御主人の言葉を切るなんて・・・」


ポシェットのマァオ君は話を聴きたかったみたい。

でも、そうはいきません。


「さっさと化けないと・・・お食事にありつけないよ」


「うむむ・・・」


まさにグゥの音も出ないでしょ?

まだ敵か味方なのかはっきりとしていないのに、深い話は聞かさないでおく事にしていたんですよ。

魔鏡を壊せるくらいの魔力を秘めているのですから、唯の真似真似ではないのは重々承知しているのですからね。

あんなに簡単に魔王の造った鏡を壊せるのですから、警戒するのは当然じゃないですか。


あ、皆さんも分かっておられますよね。

祠でマァオ君がワザと魔鏡を転げ落として砕けたかに思わせたのを。

魔法の鏡が、そんなに容易く転げ落ちる訳がないじゃないですか。

しかも蒼真似真似位の質量で、動く筈も無いこと位はお分かりですよね。

あれはそれ相応の異能力で壊したんですよ、詳しい事は分かりませんけど。


「それじゃぁ・・・ぽん!」


これ以上話を引っ張っても無駄だと判断したのか、マァオ君は化けることに決したようで。


「ど~だい?見事でしょ」


「・・・どこが」


化けたつもりのマァオ君ですけど。


「平面カエルじゃあるまいし!なんだよその2Dは」


「ひゃっはぁ?」


マミさんに思いっきり突っ込まれてしまいましたが。

絵に化けたマァオ君は・・・どうみたって<絵>でしかありませんでした。


「立体感と言うか。ちょっとヨコを向いてみてよ」


正面はまだしも、横から観れば・・・一本の線W


「くくくッ!こいつは傑作だ」


流石の御主人アレフ様も吹き出されてしまいました。


「これなら魔物の姿の方が真面だとも言えるな」


マトモって・・・どんな?


「しまったぁ~!真似真似は視たモノにしか化けれないんだったぁ」


マァオ君は頭を抱えて・・・って。横から見たら線でしかありませんけど。


「あのなぁマァオ。もう少し真面目にやれよな」


マミさんも呆れ顔です。


「これが真似真似の真似という物なのでしょうね」


半ば冗談めかし、半ば安心したと言いましょうか。


「これだったら、化けられても正体が知れるよね」


ワタクシは少しだけ不安だったのです。

もしかすると肝心な時に化かされてしまわないかって。

御主人様に化けられちゃったら、内緒の話を漏らしてはしまわないかって思っていたのですよ。


「これだったら、見破るのも苦労しないかも」


吐露したワタクシの顔を、絵に化けたマァオ君が聞き咎めます。


「何に苦労しないの?」


「ひゃ?あ、ううん何でもないから」


御主人様に宿る魔王と、敵対する魔王のしもべかも知れないマァオ君。

どちらに対しても、秘密にしておかないといけないんですから。

龍の神様から聴いた希望を手にする為には・・・ね。


「変なレーシュ」


疑われちゃったかしら?


「どうするマァオ。

 そんな半端な姿で人間達の居る場まで行く気なのか」


助け舟を出して下されるのは御主人アレフ様。


「俺様は大層腹が減っているんだがな。

 その姿のままでは店には連れて行かんぞ?」


「どっひぃ~?!どうしたら良いんだぁ~」


いやいやだから。普通に少年へと化ければ良いじゃないの?


「しょうがないな。そこら辺に居る子供にでも化けてみるか」


開き直ったように、マミさんが教えます。


「少なくとも平面ではないぞ」


「そ、そっだね~~」


対するマァオ君も、誰でも良いのか。


「も、一回・・・ぽん!」


近くを通り過ぎる子供に化けるみたい。


これではっきりしたのです。

普通の真似真似ではないってことが・・・です。


魔物の真似真似が姿をチェンジ出来るのは、戦闘だと一回キリ。

それも1ターンを終えて、相手を倒す事が出来ればの話なのですよ。

戦闘途中で姿を切り替えたりは出来ないし、元の姿にだって戻れないのです。

それなのにマァオ君ときたら、簡単に姿を変えれる程の強力な魔力を有しているんです。


余程強力な魔力を持った者であり、真似真似なんかではない事が知れたのです。


少年の姿に化けたマァオ君を横目で見た御主人アレフ様が、ワタクシにウィンクされました。

やっぱり、ワザと唆されたみたいです。

魔物の中で弱小なる真似真似なんかではない事を知る為の策謀だったみたい。


やっぱり、一枚上手だったという事でしょうかね。


「さ、さぁ。どうかな?」


マァオ君は知らずにか、訊いて来ます。


「うん、今度は良いと思うよ」


近所に住んでいる男の子だと思われる姿に化けたマァオ君。

瓜二つ・・・とまではいかないにしても、人間に観えます。


「それじゃぁ、ご飯にしようよ~」


食事を楽しみにしているように見えます。

だけど、本当の処はどうなのでしょうね。

話の輪に入るのが目的にも思えてしまうのですが。


「よかろう・・・下僕シスター、席を確保して来い。4つだぞ」


御主人様は顎を引いてワタクシに命じます。


「分かりました、4席ですね」


勝手知った宿屋さんに、ワタクシは駆け出します。


「さてと。この後はどうなりますことやら」


晩餐が始ろうとしています。

方や海千山千のつわものである御主人アレフ様。一方何者かによって送り込まれた間者マァオ


如何なる話になるのやら・・・


「でも、お腹が満たされるまでは何も起きないで欲しいなぁ」


って、言うのがワタクシの本音でした。





 ざわざわ



同席しているマミさんとマァオ君を横目で見ているお客達は、珍妙な取り合わせの冒険者にひそひそ話を交わしています。

黒いスーツ姿の御主人様と、マントを羽織っているワタクシ。

対面に腰かけている魔法衣を頭から被ったままのマミさんに、少年に化けているマァオ君。


あまりにもかけ離れた取り合わせに、好奇の視線を向けて来ているのでしょう。


「気にする事はない。ほっておけば良いんだ」


テーブルに並べられたお料理に手を伸ばす御主人アレフ様は、そう仰いますけど。


「気にするなって言われてもなぁ」


マミさんはフードを尚更に深く被り直すのです。

全身を包帯でぐるぐる巻きにされている状態のマミさんは、周りから観られないように隠そうとしているのですよ。


「もぐもぐ・・・アレフの言った通りだよ。気にしたってしょうがないじゃないか」


一方のマァオ君ときたら、呑気に食べながら喋るんですよ。


「あまりウットオシ~かったら、全員を店から追い出しちゃえば良いじゃない?」


また・・・勝手なことを。


「やめておけ。折角の料理が不味くなる」


マァオ君を嗜めるのは御主人様なのでしたが。


「どうせなら食べ終えてからにすれば良い」


また・・・御主人様まで。


テーブルに山盛りにされたお料理を完食するまで、手を出すなって仰られただけでした。


「お腹が膨れたら、怒る気も無くなりますものね」


「お腹一杯になったら?そうかなぁ~」


ワタクシがマァオ君に笑いかけると、少々ぎこちない返事で応えました。


「そうだよマァオ君。それが人間ってものなのよ」


魔物であり、魔王の間者かも知れない子には分からないのかも知れませんね。

空腹時は怒りぽくっても、お腹が満たされると幸せな感情になれるなんて・・・ね。


「ふぅ~~ん、人間って単純なものなんだねぇ。

 ボクも昔は人間だったような気がしてたんだけどなぁ」


そう言えば、そう話してもいましたっけ。


「そう、それ!

 マァオ君は人間だったの?」


これ幸いに話を振る事が出来ました。


「そう・・・だったような気がしたんだけど」


そうそう!この調子で誘導尋問に入りましょう。


「どんな?まさかお爺さんじゃぁないでしょ?」


「当たり前だろ!ボクって言ってるくらいだからさ」


年恰好なら何とでも言えますが、言葉使いは誤魔化しようがないですよね。


「でもなぁマァオ。もしかしたら相当な古狸だったのかも知れないだろ」


それに対してマミさんは、敢えて問い質して来たのです。


「古狸って・・・そういうマミはどうなんだよ。

 紅の剣士だとか想像されているみたいだけど?」


「アタシか?アタシはなぁ・・・多分ナイスバディ―だ」


賢者の魔法衣を着ているマミさんがお戯れを。


「・・・は?」


「ぶぴゅぅ~~」


「ふ・・・ふふふ」


ワタクシは眼が点に。マァオ君はスープを吹き出し。アレフ様は含み笑いを。


「多分だぞ多分。レーシュよりもたゆんたゆんであろう」


「むむむ?!聞捨てなりませんッ!」


喩えに出されたワタクシは、ちょっとだけムキになります。


「多分だぞ多分。アタシは敵をも悩殺できるくらいの美貌を誇っていたのだ」


「むぅ~、本気で仰られているのですか?」


丁度向かい合わせに腰かけていましたから、目と目がかち合います。


「この包帯が解けた暁には、人だかりが出来るくらいの美女が現れるであろう」


「そ~言う事は、解けてから言ってくださいよねぇ。

 本当は痩せのっパイさんじゃないでしょうね?」


敢えてスレンダーとは言いません。

筋肉隆々の筋肉脳女かもしれないのですから。


「なんだって?!アタシが・・・か?」


「ほほほ~、どなたが~かしらぁ~ねぇ」


受けて立つワタクシに、マミさんがプルプル震えてます。


「やめておけ二人共。あまりにも不毛だ」


仲裁される御主人様は、呆れ果てられたようで。


「マミがたゆんたゆんなら、観てもみたいものだが。

 俺様は大き過ぎるのは好みではないとだけ言っておくぞ」


「へ?!そうだったのですか」


これは意外なお言葉です。

大人好みな御主人様のことですから、てっきり大きいのが好きなのだとばかり思ってました。


「ふんっ!何もアレフに好かれたくて大きくなったのではないぞ・・・多分」


マミさんはそう仰るのですが、ワタクシにとっては重大事なのです。


「あ、あのぉ~?

 どれ位の大きさがお好みなのでしょうか、御主人アレフ様は」


かなり真剣に聞きたいのですよ。

もしかしてワタクシのは範囲外に当たるのかと。


「バランス。つまり身に合う大きさってモノがあるだろうに」


「バ?バランスぅ~??」


つまり均等にスタイルが宜しくなくてはならないと?


「大き過ぎてもイカン。

 かといって板では駄目だ。

 声、姿、そのどちらも秀でたものでなければならん」


・・・それって、女神様クラスじゃぁなければ無理なのでわ?


「御主人様ってば、永久に独り身で居られる気なのですか?」


ほんのちょっぴり期待したワタクシが馬鹿でした。


「俺様は高望みはしないぞ。

 単に面食いなだけだって話だぞ」


「それがどう高望みしないってことなのですか」


「レーシュでは役不足ってだけだな」


トドメはにマミさんの一言が絞めました。

口を尖らかせてブツブツ愚痴るワタクシを、3人が笑うのですが。


マミさんが引っ掻き回したから、肝心のマァオ君から話題がそれちゃいました。


「それはそうと。

 アレフやレーシュはこれからどうするのさ?」


マァオ君の正体を訊きだそうと試みたワタクシに、攻守が反転して問われてしまったのです。

これからの旅路ってものを。


「えっとね・・・取り敢えずは」


最終的な目的ははっきりとしていましたけど。


「もう少し西へと向かおうかなって」


国境の戦場へは、もう少し後で行く事だけは考えてましたが。


「ふぅ~ん、西へねぇ」


マァオ君の眼が妖しく光ったような。


「西と言えば、最近不穏とか言うんじゃないかい?」


ほら・・・祠に閉じ込められていたにしては情報通ですし。


「それに人間達以外の者もタムロしてるって言うじゃないか」


え?それは知りません。


「人間以外だと・・・魔物か?」


御主人様が質します。


「そう・・・かも知れないねぇ」


煙に巻こうとするマァオ君。

対してワタクシは・・・


「それでしたら!御主人様に取っては好都合かも知れませんね」


魔王アスタロトの目的は、魔族を打ち倒してタロットにする事でしたから。

魔王が目的を達成した後、アレフ様を解放するかもしれませんから。


「ふむ・・・行ってみるべきかもしれんな」


宿ったアインさんと魔王が挙って頷いたかのよう。


「そう?じゃぁ魔物退治とでもしゃれ込む?」


マァオ君はほくそ笑んでいるのでしょう。

きっとそこには主たる者が待ち構えているのでしょう。

そしてあわよくば、御主人様諸共に・・・


ですが。

そうは容易く事が運びませんでした。


宿屋さんのラウンジで寛いでいたワタクシ達の前に、突如として異変が訪れる事になるのです。


それは・・・




 ドン!



いきなり店へと飛び込んで来た人に因り。


「見つけましたわ!」


挿絵(By みてみん)


そう仰られてワタクシ達の前に佇んだのです!

団欒に飛び込んできたのは?

どこかの騎士団員の女性?

それとも。


何か訳ありみたいですけど?


次回・・・にゃんと。

第1部完結です~~~~


次回は Pass12約束と願い<正義>Act13

どうやら・・・目的地がはっきりするようですね~

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