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Pass12約束と願い<正義>Act10

漸くの事で・・・


レーシュ達は祠からの脱出に?

御主人アレフ様が、手にした帽子をひっくり返して。


「良いか。それじゃぁ行くぞ」


タロットのⅩⅥ番、塔を呼び出す呪文スペルを唱えます。


「塔よ!俺様達を地上まで昇らせろ」


御主人様を取り巻くように集まっているワタクシ達の足元に、大きな緑の魔法陣が現れます。


「下僕シスター、落っこちるなよ」


余計な一言を残されてから、


「エクステンド!塔よ、伸び上がれ」


カードを放り込んで呪文を発動されたのでした。




 ガゴゴゴゴ・・・・



魔法陣が描かれてあった部分が、丁度塔の最上部となってワタクシ達を載せたまま伸び上がり始めます。




 ゴゴゴ・・・ゴゴン!




召喚された塔が、祠の頂部を越えて。


「さて・・・どうなるかな」


なにやら心配な一言を溢されたんですよ、御主人アレフ様が?!


「あの?どうなるって。なにか問題でも?」


聞き間違いではなかったのは、御主人アレフ様の眉間に皺が寄っていましたから。


「ああ、それな。

 俺様の記憶では、地上とやらが何処迄昇れば良いのかが分からんのだ」


「・・・ひ?!」


つまりですね。

御主人様は降りて来られた時には、アインさんになっていたから?

別人格になっておられたから覚えていないんだってことで・・・OK?


「ど、ど、ど?!どうするんですかぁ?」


いつまで昇れば地上へ出られるのですか?


「もしかして、昇り過ぎちゃったら。

 今度は降りなきゃいけないんですか、この塔を?!」


タロットの活用が間違いだったのなら、とんでもなく大変なことに?


「まぁ・・・そうなるだろう」


・・・

・・・・・

・・・・・・・・


「いやいや!それっておかしいでしょう?!」


思わず大声で言い返してしまいましたよ。


「ふむ。タロットを発動する時点で、気が付かなかったのだ」


「いやいや!気が付くとかの問題じゃないような~」


御主人様は悪びれません。

ですけど、これでは先が思いやられます。


「いざとなれば・・・だな。飛び下りるだけさ」


「そうですね~・・・って?!本気マジですかッ?」


飛び下りるタイミングを逃しちゃったら・・・とんでもない目に遭うんじゃぁ?


「骨の一つが折れるくらいで済んだら、良いんじゃないか?」


「痛いの嫌ですよぅ~」


これでは本当に唯では済みそうにありません。

涙目になって御主人様のいい加減さを訴えるのが関の山ですけど。


「まぁ、あの祠から脱出したんだから良いじゃないか」


紅の衣装を纏う枯骸マミさんは、いとも平然と言うのですよ。


「要はタイミングを間違わなければ良いだけじゃないか」


「そ、そうは言ってもですねぇ。巧くいくのかどうか」


どんなタイミングで飛び下りたらいいのやら、ワタクシには皆目見当がつきません。



ワタクシ達が相談する間も、塔はグングン伸び上がっていくのです。

もう地上へ到達しても良さそうなモノですけど?


飛び下りるにしても、何かの目安がある訳ではないし。

いきなり飛べって言われるのではないかと、ビクビクしているワタクシへ。


「下僕シスターよ。あれが見えるか?」


不意に、御主人アレフ様が帽子を翳されました。


「ほぇ?」


緊張しているワタクシへ、何を観ろと言うのでしょう。

帽子の先を見上げると、そこには明るい光の輪っかが。


「あ?!」


もう直ぐ出口へ辿り着くの?


「少々荒っぽいが、飛び下りるぞ」


「ひぃ?!分かりましたぁ」


準備していたつもりでしたけど、イザ言われてしまうと怖いです。

タイミングを逃せば、それだけ怪我を負う可能性が増大してしまうから。


「そうか。それじゃぁ・・・飛べ」


「へ?!」


え?え?いきなりそんな?!


泡を喰うって、この事なんですね。


光が頭上から落ちて来て・・・いいえ。

ワタクシ達が輝の中へ登って来たのですよね。

あっと言う間に身体中が光に飲み込まれてしまったのようでした。


「お先に飛ぶぞ~」


マミさんの声が横合いから離れていくのが耳に。


「飛べ!下僕シスター」


前に居る御主人アレフ様が急かします・・・が。


「あ・・・あ?!」


けど、ワタクシの脚は固まったように動かなかったのです。

このままではワタクシだけが置き去りに?!



 ガシ!!



と。


突然、手を掴まれていました。

そのままの勢いで、手を手繰り寄せられて・・・


「あ?!御主人アレフ様ぁッ?」


次の瞬間には空中に躍り出ていたんです。


「喋るんじゃない、舌を噛むぞ!」


塔の頂上から地上へ目掛けて跳び出したまでは分かりましたけど。


「ひゃぁ?」


黙れと言われたのですが、驚きのあまり声が出てしまいました。

だって・・・



 ヒュゥゥー



高さに驚いたのではありません。


「あわわ・・・」


眼を見開いて見ているのは床なんかではありません。

ワタクシの手をしっかりと握って飛び出してくだされた御主人アレフ様を観ているのです。


そして手を握ったまま、ワタクシを抱きかかえてくださるのです。


そう。


世に言う、お姫様抱っこって姿で・・・ですよ。


御主人様に抱き寄せられて、初めて異性だと認識しました。


鼻腔を擽る匂い、意外なほど厚い胸周り。


初めて男性へ、これ程迄近寄った気がします。

初めて御主人アレフ様へ、身を任せたのです。


着地するまで、ホンの瞬きする位の時間であったとは思うのですけど。

ワタクシは改めて、御主人アレフ様に頼っているのを悟らされたのです。



 ズシ~ン!



着地を決められた御主人様。

本当に頼もしい限りに思えます。


「ぐが・・・がが」


ふんぬ!と、ばかりに立ち尽くされる御主人様ですが。


「おい、下僕シスターよ。足と腕が折れたぞ」


「はぁ・・・良かったですねぇ・・・えええええええッ?!」


良くありません!

直ちに治癒魔法を執り行わなきゃいけません。

慌てて魔法の呪文スペルを唱えようと抱っこ状態から抜け出ますと。


「冗談だ。無駄な魔法は唱えるなよ」


「じょ、冗談だったんですかッ?」


タイミングを逃したワタクシを庇って飛び下りられた御主人アレフ様。

抱っこ状態のまま、ワタクシが何時まで経っても離れようとしなかったからワザと言われたのでしょうか。

意外なほどにナイ~ヴなんですね。

もっと変態さんだとばかり、思い込んでましたけど。


「また、助けて頂いちゃった」


ポツンと溢すのを聞き逃さなかった御主人様が、こう返すんですよ。


「置いてけ堀にしたら、連れ戻すのが大変なだけだからな」


それもありますけど。


「下僕シスターの身体は軽そうだったからな」


軽そうに見えてその実、重かった?


「重かったんですよね?」


少しばかり気になる発言ですから、確かめておかないと。


「いや。下僕シスターは軽過ぎる。

 もう少し肉を着けないとイカン。俺様好みではないぞ」


「そうですか~・・・って?!肉着きが良い方が好みなんですか?」


あいやぁ~、これはしたり!

御主人様は大人な女性が好みでしたのを忘れておりましたw

こればっかりはどうにもなりませんねぇ。

ワタクシはまだ女性に成りきれてはいないようですので。


「いや、胸だけは一応範疇だが。他はまだまだ熟成が足りんぞ」


・・・変態は相変わらずでしたようで。



「おいこら。私を除け者にするなよ」


御主人様と他愛もない戯言を交わしていると、マミさんが近寄りながら辺りを見回して。


「どうやらここで。一悶着あったようだぞ」


ワタクシ達にも周りを観て見ろと、顎をしゃくられるのです。


「ふむ。どうやらバンパイア共の為れの果てだな」


崩れ去った身体の一部でしょうか。

人型の灰が至る所に散らばっていました。


「ひぃ~ふぅ~みぃ~・・・ここのつ。

 9匹の魔物が潰えた痕か・・・」


マミさんは鋭い瞳になって灰を睨むのです。

その横顔には、紅の剣士であった面影が滲んでいる気がします。


「いいや、違うぞ。そこの奥にもあるようだぞ」


御主人様が帽子を被り直して教えて来たのです。


「こいつが此処の主だったようだぜ」


9つの灰を前にして、廃墟状態の室内に違和感がありました。


「観て見ろ。

 タペストリーには、あるべき筈の城が抜け落ちているぞ」


壁画にはこの一帯の景色が写り込んでいるのですが、城らしきものが見当たらなくなっています。


「そう言えば、最初に来た時に観た絵ではない気がしますね」


祠に落ちる前、この広間でヴァンプと対峙した折に観た絵ではないようなのです。


「山の頂にある城が無くなった。

 それ自体が魔物だったということさ」


「え?!そんな巨大な魔物が存在するのですか」


ワタクシは敢えて、そう訊いてみました。

巨大な構造物に化けれる魔物が存在していたのかと。


「ああ、そうだな。

 化けるにはそれ相応の魔力ってモノがなければならないが」


御主人様も含みを持たせた回答を返して来られました。

その強大なる魔力を持つ魔物を退治されたという事ですね、アインさんが。


「なるほど。

 城に化けれる魔物は潰え、壁画からも消滅したのか」


マミさんが壁画を見上げて呟くと。


「いいや、そうじゃない。

 壁画に魔物が宿ったんだろう。

 俺様達が居るここが城であるのは間違いないだろうからな」


御主人様がマミさんのポシェットを睨みながら答えたのです。

その中に居るのは・・・マァオ君。


「ヴァンパイアもメシアと呼ばれた教祖も。

 黒の召喚術師の前には、歯がたたなかっただけさ」


惚けるように、御主人様が教えたのでした。

恰も、誰かに結末を知らせるように・・・です。


「黒の召喚術師・・・つまり、アンタか?」


マミさんはまだ良くは分かっていないみたいです。

黒の召喚術師アインさんと、御主人アレフ様の違いが。


「いいえマミさん。

 こちらに居られるのは、勇者で元王子のアレフ様なのですよ~」



挿絵(By みてみん)


もと王子は、いらんぞ」


突っ込まないでくださいよぉ、御主人アレフ様。


「勇者?どこにそんな奴が居るんだよ?」


マミさんが余計な一言を。


「ここに居るだろ~が!」


御主人アレフ様が仰け反って仰られますw


「俺様は悪をただして、か弱き女性を救う勇者アレフ。

 勿論のこと、邪魔する者には容赦はしない。

 喩え邪悪なる者では無いとしてもな」


そう。

御主人様は彼にはったりを噛ましているのです。

マミさんの腰に下げたポシェットに居る・・・彼へと。


ポシェットはいつの間にか普段の茶色へと戻っていたのでした。

それは中に潜む者が眼を覚ました証。

ワタクシが仕掛けた術の効果が切れた証でもあったのです。


「ポッシェットには邪悪なる者を排除する銀の粉を零しておいたのですよ」


普通なら一発で逃げるであろう筈が、眠り込む程度にしか効果が無かった。

それも織り込み済でしたけどね。


「なぁ下僕シスターよ。

 お前がアインとやらに話したのは間違いないようだな」


「そうみたいです。ですけど、様子見を続けられる方が良い気がしますよ?」


ワタクシは魔鏡で観た真実を教えて差し上げました。

もしも鏡に映し出されたのが間違っていないのなら。


「きっとまねまねも。仲間になってくださいますから」


ワタクシは確信しています。

マァオ君は、きっとワタクシ達と同道して未来を摘まむ手助けを。


「その日まで。彼の中で起きる変化を待ちましょう、御主人様」


「むぅ・・・下僕シスターがそうまで言うのであれば」


やや、納得されていない表情ですけど。


魔王ルシファーの術がどれ程なのかは、見極めなければならんぞ」


「そうですね。でも、彼ならばいつの日にか」


アインさんにだけ教えてあった曰く付きの彼の件。

こちらに正体がバレているのを知っているのか、知らないのか。


「なんだぁ?私にも教えろよ」


横合いからマミさんが話に加わりたがって来ます。


「はい!お腹が空きましたねぇって話ですけどマミさんは?」


咄嗟に惚けてみましたら。


「ごっつぅ~腹減ってる」


乘ってくださいましたw


「悪の教団の頭目も潰えたことだから。

 村まで戻ってみませんか、御主人様?」


「うむ。確かに腹が減ったのは間違いないしな」


そして御主人アレフ様も。


「次の目的地も決めなければならん。ここは撤収するに限る」


一旦引き上げて仕切り直そうと仰られたのです。


「そうです!衣装も取りに戻らないと恥ずかしいですから」


ワタクシの魔法衣はマミさんに与えてあげましたので、今はショートパンツに下着代わりのシャツだけを羽織っている状態ですからね。

上に羽織れるモノが着替えが欲しいのですよ。


「うむ。もっと肌成分が多めの奴を着せてやるか」


変態御主人様が言わなくて良いことを。


「法衣で間に合ってます!」


シスターの法衣がありますからって言ったのですけど。


「ホ~イねぇ・・・なるほど」


なんだか、変態御主人様の眼が危なく光った気が・・・・




ワタクシ達は、教団の壊滅を成し遂げて街まで戻る事にしたのです。

今回の出来事を整理する為にも。

そして今後の旅に向けての相談もやらなければいけないと思いましたので。





吸血鬼教団はいつの間にやら壊滅されて?

今回はアインの独り舞台だったってこと?


まぁ、アスタロトが出張るのなら仕方ないか。



次回はレーシュの観た魔鏡について語られるのかな?

続きますよ~

さすが?!

ご主人様はいとも容易くヴァンパイア達を駆逐しておられたようで?


凱旋するのはレーシュ達。

待っているのは・・・お腹一杯のご馳走のようで。


その前に!

魔境はレーシュに何を語っていたのでしょう?

気になる方は次回も、必見!


次回 Pass12約束と願い<正義>Act11

その時・・・レーシュは。

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