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Pass12約束と願い<正義>Act9

祠で明かされたのは?


アレフ様がぁ?元王子様ですと??


嘘だぁ?

見開いた目に映る御主人アレフ様は、嘘なんて言っていないみたいです。

ワタクシにだってそれ位は分かるんですよ。


御主人アレフ様が王子様だなんて・・・お伽話みたい」


そうでしょう?

まるでお伽話に出てくる呪われた王子様みたいですよね?


「もしかすると、とある方法で呪いが消えちゃったりして?」


ワタクシの記憶に因れば、お伽話に出てくる王子様の呪いを解くにはアレしか無い筈です。


「御主人様は、呪いを解きたいですよね?」


「呪いだと?」


二重人格的な存在である黒の召喚術師アインさんを封じ込めるには、これしかない筈です。



 むにゅぅ~~~~



ワタクシは唇を尖らして。


「はい!初めてなのですが・・・」


接吻キスすれば、きっと呪いは解ける筈です!(断言)



 にゅ~~~~



変態勇者アレフ様は、魔物に穢された女性を接吻で解いていたのですから、基本的にキスはお好きな筈。


ですのに・・・ですのにです!

ワタクシとしては、精一杯の御奉仕だったのですの。


「お前なぁ・・・なにか根本的に間違ってるぞ」


はい?!


「俺様の呪いを解くだと?

 下僕なレーシュが、なにを血迷っている?」


そんな・・・ワタクシのやり場はどこに?


「そもそも・・・だ。

 俺様は呪われてなんかいないのだぞ」


そういえば、無自覚だったのですよね御主人アレフ様ってばW


「でも、でもぉ!

 御主人アレフ様ってば、時々人格が変わられちゃうのをご存じでしょう?」


「あれは、ドッペルゲンガーって奴だ。気にしてはいけない」


・・・そんなことを言われましてもですねぇ。

端から観たって別人ですし、呪われている様にしか見えませんよ。

それに・・・ドッペルゲンガーの意味が間違ってますってば。


「あのぉ?

 よく考えたら、アレフ様って王子様確定で宜しいのでしょうか?」


「ぎくッ!い、い、いや。そうではないッ!元、王子だ」


認めちゃいましたね御主人アレフ様W


「グスタフ王ってことは、このアシュラン国の王子様ってことですよね?」


「だからッ!王子ではないと言っているだろ~が」


挿絵(By みてみん)


今の今、認めたじゃぁありませんか。


「それじゃぁ、どうして王子様ではなくなったのですか?」


「王宮から勘当同然に追放されたからだ」


勘当って・・・王家でもあるんですか、そんなの?

まぁ、素行の悪い御主人アレフ様のことですから、分からなくもないですけど。


「勇者に成って世の悪を懲らしめるのが、俺の理想だったからな。

 王家には必要が無い事だと無碍にされたから、家出してやったんだ」


・・・理想を追い求めてと言うより、唯の駄々っ子じゃぁないですかソレって。

でも、ワタクシには御主人アレフ様を窘めれはしません。

だって、似たり寄ったりなんですもの・・・ワタクシも。

立派なシスターになる修行を道半ばにして、自分探しの旅に出て来たんですから。


「それに・・・な。

 俺は決められた伴侶なんかに縛り付けられたくは無かったんだよ」


ほぇ?!それってつまりは許嫁って人が居たのですか?


「国同士の政略結婚。しかも相手はまだ十歳にも満たない女の子だと言うんだぜ」


ロリコンさんが聞いたら涎を溢しそうな縁談ですけど、御主人アレフ様は生憎そうではないみたいですので。世の習いとは言いながら、政治の世界ではよくある話だそうですね。ワタクシには遠い世界の話にも思えましたけど。


「今となっては、もう十代半ばかな?

 お前と同じ位の少女になっているだろうさ」


「え?!ワタクシと同じ位にってことは。

 婚礼を迫られた年頃って?」


御主人アレフ様のお言葉ならもしかして?


「ああ、俺様がまだ十歳のガキんちょだった頃の話さ」


ほえぇ~ッ?!十歳で許嫁だなんて・・・お気の毒ですね、ある意味では。


「王族って、傍から見たら憧れの対象かも知らんが。

 なりたくてなる奴の気が知れん。

 俺様には今の身分が性に合ってるんだ」


そうかも~・・・って。

じゃぁ、ワタクシの希望よくぼうは夢に終わるんですね。


「王族には食えない物も、冒険者なら喰う事が出来るんだぞレーシュ」


「え?」


ワタクシは王族ではありませんから知りません。

ですが、御主人アレフ様は王家の方でしたので。


「温かいスープや食べ物。

 そのどれもが王族には食する事の出来ない物ばかりだ。

 毒見と称して盥回しにされた挙句、冷え切ったモノばかりを食べて過ごす。

 俺様には旅先で喰える物全てが旨いと思えてしまう」


ああ、それだから。

あんなにも美味しそうに食べておられたのですね。


「下僕なレーシュに忠告しておくぞ。

 もし、仮に。王家の食事を食べれたのならば・・・だ。

 シェフを悪く言ってやるな。

 職人は丹精を込めて作ったのだから、不味いなんて言ってやるんじゃないぞ」


半ば冗談めかして、半ば本気で。

御主人様から教えて頂いたのです。


王侯貴族の食事が夢物語だったのを。


「そうだったんだぁ~、知りませんでした」


自分の無知を、改めて知りました。

そして王族を抜け出されて旅を続けられる御主人様を、改めて見直したのです。


<<この方となら、いつまでも旅を続けたいなぁ>>・・・って。


そう願いを想った時、魔鏡が見せてくれた希望ってモノが何であったのかを悟りました。


「ワタクシの願い。レーシュの希望。

 それは・・・御主人アレフ様と一緒に旅を続けるの。

 いつまでだって傍に居させていただけるように・・・それが希望ゆめなのね」


微かだった想いは、次第に大きくなって。

気が付いた今は、闇を祓うかのように輝きとなって。


ワタクシは愛とか恋とかを知りません。

ですから、今の心が何なのかを知ろうとも思いませんでした。

唯、希望に縋って生きていこうと思っただけなんです。


いつの間にか、ワタクシは自分が何者であるのかなんてどうでも良くなっていました。

今の自分が精一杯歩んで行けるのなら、御主人様と前に進めれば。


自分が何者かなんて、小さなことに思えて来たんです。



「ん・・・で?

 こいつらは下僕なレーシュの仲間なんだろ?」


ワタクシが感慨に耽っていますと、御主人様が質して来られたのです。


「急に振りますねぇ、御主人アレフ様っていつも」


もう慣れっこになりましたけど。


「そうです。枯骸マミーなマミさんと蒼真似真似のマァオくんです」


我ながら、ナイスな名付けでしょう?

自信たっぷりに教えて差し上げました。


「ふむ・・・マミとマーオか。覚えやすいな」


二人に振り向いたワタクシが。


「えっへん!こちらに居られますのが、ワタクシの御主人様であられる」


「俺様は勇者アレフだ。アレフ様と呼ぶが良い」


ワタクシの紹介を遮って、御主人様自らが名乗られるのには。


「アレフ様だってぇ?威張るんじゃないよ」


マァオ君が反抗心を剥き出しにして返して来ます。


「ボクはマァオ。レーシュに名前をつけて貰ったんだぞ、お前じゃないし!」


礼を尽せないとそっぽを向くのでしたが。


「ほぅ?レーシュの主人に対しての言い様か?」


「う?!」


アレフ様の一言で声を詰まらせちゃいました。


「私はマミと名付けられた女だ。

 記憶にはないが、お前とはどこかで会ったような気がするのだがな」


マミさんは朧気ながら知っているようだと言うのですが。


「お前は知っているかも知れないのだがな、生憎にも包帯が解けないのでな」


呪いが解けないから、包帯も解けないんですよね。

分かっているのは金髪で蒼眼だということぐらい。


「ふむ・・・身長はレーシュより高いか。

 包帯の上からだとスレンダーに思えるんだが?」


記憶にはそれらしい人が居ないと、首を横に振るアレフ様。


「ふむ・・・がんじがらめに巻かれているからな。

 胸の大きさなら多分レーシュよりも大きい筈だった・・・ような」


聞捨てなりません!自慢の胸を小馬鹿にされたようで。


「むぅ・・・マミさんは張り合う気なのですね?」


「記憶に因ればの話だ。気にする事も無いだろう?」


どうやら、確信があるみたい。

それでしたら、呪いが解けた時の楽しみに取っておきましょう。

     ↑

 張り合う気マンマンW



「よし・・・互いの紹介が終わったようだな。

 ならば、急ぎ撤収するぞ?」


「はい、そうですよね」


アレフ様から目配せが飛んで来ます。

ワタクシは粉々に砕け去った魔鏡を横目で見詰めながら頷き返します。

頷いた訳は、撤収を認める意味と他にもう一つありました。


御主人アレフ様が飛び下りて来られた所から抜け出すのですね?」


「そこしかないからな」


嘘です。御主人様は敢えてそう惚けられた筈です。

魔王ならば、入れる道を知っている筈なんですから。

いいえ、転移出来る筈なのですからって言うべきでしょう。


ワタクシはまず初めにアインさんに知らせておきました。

ワタクシの観てしまった闇の正体ってモノを。

赤髪の女性を覆い尽さんとしていた影の正体。


それは身近に存在し、決して侮るべきモノではなかったのですけど。



「マミさん、そのミイラ状態のままでは人前に出られないでしょう?

 この魔法衣を着てみてください」


脱出に際して、マミさんを気遣う振りをして試してみたのです。

もし、ワタクシの観たのが間違いでないのなら。


「いいのか?」


「ええ、勿論。フードですっぽり隠せますからね」


ワタクシは被ることが無かったフードを被れと言いましたのにも訳があります。

古の賢者が纏っていた魔法衣には、聖なる力が籠められていました。


手早く脱いでマミさんに羽織らせてみたのです。


「ほら、これを・・・頭から被ってみて」


はやる気持ちを押さえられず、急かしてしまいました。

ワタクシの着ていた時には、白と青が基調の魔法衣が・・・


「なんだ?紅くなったような」


マァオくんが怪訝か声をあげる前に。


「やっぱり・・・でしたね御主人様」


こそっと頷く御主人アレフ様は、アインさんの記憶を保持していたみたい。


「ああ、やはり。紅の剣士だったようだ」


紅く染まった魔法衣に包まれるマミさんは、アレフ様の記憶にも残されていたようです。

ワタクシが魔鏡で観たのは、確かに剣士の女性。

そして・・・もう一人。


「マァオ君はね、しばらく魔法衣のポシェットに忍んでいてね?」


予め、ワタクシは魔法衣の腰に下げてあったポシェットを空にしておいたのです。

その中に納めてあったものを発動させて。

闇の化身ヴァンプに対抗するための小道具ってモノを・・・です。


「ちぇっ!しょうがないなぁ」


拒んで疑われるのが嫌だったのか、マァオ君は素直に言う事を聴きました。


形が如何様にでもなる真似真似のことですから、小さめのポシェットに収まれたようです。

で・・・その結果は?


「なんだか・・・せまっ苦しくない?

 それにぃ~眠くなったよ」


これも・・・やっぱりです。

様子を観ていたワタクシと、御主人様の眼が頷き合いました。

マァオくんが収まったポシェットが、紫色に変色していたから。

蒼真似真似ぐらいでは、こうもいかないことに。

しかも、中で発動させていおいた銀粉でさえも効き目が薄いなんて。


「思っていた通りでしたね、アインさんの」


彼が化けているのか、それとも宿ったのかは分からないのですが。

きっと・・・いつの日にかは姿を現すと思うんです。


「それまでは・・・化かし合いましょうか」


知らずにいるのではなく、知っていて化かしあうのですから。

敵となるか、味方になってくれるかはまだ分かりませんでしたけど。


「いきなり襲っては来なかったのですから。可能性はあると思います」


可能性。

味方になってくれるのなら、力強いの一言です。

これから冒険を続けるのなら、きっと心を開いてもくれるでしょう。


「ですよねアインさん、そうでしょう御主人アレフ様」


私の決めた旅の道連れ。

遂に4人のパーティとなった冒険者達。


一人は魔王を宿し。

その下僕となったシスターの娘を伴とし。

新たに紅の剣士かも知れない枯骸娘と、謎多き魔物な子を同道させる。


摩訶不思議な取り合わせの冒険者チームが巻き起こすのは?




遂にダンジョンから脱出?

でも、レーシュってば魔法衣をあげちゃったよね?

次はどんなのを着るの?


次回に続くのですぅ~

あまり信じたくはありませんね。

あのポンコツ勇者様が、アシュラン国の元王子だなんて。


真実かどうかは、いずれ明かされるでしょう。


(暫く更新が滞りましたことを陳謝いたします)


次回 Pass12約束と願い<正義>Act10

祠からの脱出は、やっぱりアレで?

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