表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/33

Pass12約束と願い<正義>Act2

挿絵(By みてみん)


レーシュですぅ~~~


雰囲気変わった?

気が付いて目を開ければ・・・ここは?


「薄暗い・・・周りも良く見えない」


ぼんやりと視界に飛び込んで来るのは、蒼い光が揺れている光景。


「確か・・・床が割れて・・・落っこちちゃった・・・のよね?」


まだ、頭の芯が痛みでボウっとしてます。

身体中をぶつけたのか、痛みが全身から襲って来ていました。


「起き上がるのも無理っぽい・・・」


どこかの骨でも折れているのかと思えるくらい、痛みでもう一度失神しそうです。


「でも・・・痛みを感じられるのなら死んじゃぁいないよね」


幸いかどうかは分かりませんけど、ワタクシは生きているようです。


「それに、間違いなく幸いなのは・・・魔法力が残されていたって奴」


今の状況を考えれば、治癒魔法をかけられる魔力が残っていたのは幸いでした。

戦闘不能状態なのですが、回復魔法を唱えれば何とかなりそうです。


「ヒーリング・・・」


自分自身に回復魔法を唱えるなんて、未だ嘗て無かったのに。



 ポワァ~



弱回復魔法でしたけど、痛みが和らいでいくのが分かりました。

純天使ラツィエルの極大魔法で完全回復したかったのですが、魔力が底を尽いてしまうかもしれなかったから辞めておく事にしたのです。


だって・・・ここには。


「アレフ様・・・どうされたのかな?」


突然現れた魔王クラスの魔物に、自らの身を盾にしてワタクシを逃がして頂いたのです。


「今此処に居るのはワタクシだけ・・・頼れるのは自分の魔法力だけなんだもの」


もしも、ヴァンプ達が現れたのなら闘わないといけません。

それには純天使の回復魔法が放てなければ、闘う術がないのです。


後何回、放てるのでしょう?

もしも、魔法力が底を尽いて放てなくなってしまえば?


「折角逃がして頂いたのに、アレフ様に申し訳がたちません」


どうせ魔物達に殺されてしまうのなら、アレフ様と一緒に居たかったのでしたが。


「そうだ!まだアレフ様が殺されたと決まった訳じゃない。

 もしかしたら・・・探しに来てくださるかもしれない」


淡い希望でしたけど、縋らないとやり切れません。

地下深く落ちてしまったワタクシが、ここから脱出するには助けが必要だったのですから。


「今は・・・起き上がってここが何処なのかを調べないと」


最優先されるのは、自分の足で立ち上がる事。

そうしないと、逃げることもアレフ様に逢う事だって出来ないのですもの。


起き上がる前に、落ちて来たと思われる上方を見上げました。

本来ならば、そこには墜ちて来た穴が見える筈なのに見当たりません。


「と・・・いうより。

 真っ暗じゃないの・・・天井だって見えやしない」


一体此処は何処なのでしょう?

地下にこれ程の空間があるなんて思えません。


「ああ、そっか。

 光が天井にまで届いていないんだ」


薄ぼんやりとした蒼い光が、ワタクシの足元辺りから照らしています。

あまり強くない光が、天井にまでは届いていないみたいです。


・・・


・・・・・



・・・・蒼い光?


咄嗟に、まだ痛む身体を起こして足元を観たのです。


「あ?!」


蒼い光源を探そうとしたワタクシの眼に飛び込んで来たモノは。



 

 ユラ ユラリ



蒼い炎とでも言えば良いのか、蒼く光を放っているモノとでも言いましょうか。


「あ・・・あ?」


頭の片隅に浮かび上がった蒼い光源の名前は。


「スライム?!魔物?!」


ゆらゆら揺れている蒼い光を放つ物体。

炎でもなく固形物でもない、ゆらゆら揺れる存在。


液体のようで形を立体的に造っているモノ。

蒼いソレは、ワタクシの足元でゆらゆら蠢いているのです。


「あ・・・あ・・・とうとう、ワタクシも魔物の餌食になっちゃうの?」


正体の分からないモノを前に、ワタクシの眼は絶望で曇ります。

ヴァンプなら魔法で防御や攻撃も出来るでしょうけど、本来の魔物が相手なら聖魔法では為す術がありませんから。


しかも、剣士や武闘家なら対峙し易いレベルの魔物であるスライムでしたが、ワタクシに攻撃できる武器なんて持ち合わせていませんでした。


「あ・・・そうだ。杖を・・・」


攻撃には不向きなシスターの杖でも、追い払うことが出来るかも知れません。

慌てるワタクシは手の届く範囲に杖が無いかと手探りしたのですが。


「ない・・・どうしよう?!」


伸ばした両手の先には武器となるモノはありませんでした。

焦るワタクシはそれでも手を弄り、杖を掴もうと身を捩ったのです。



 ザリ ザリリ



服が音を発てるのを忘れていたのです。

足元に居る魔物に気付かれてしまうというのに。


「しまった!」


心の中で絶叫してしまいました。

これほどのドジを踏んだのなら、後に齎す結果を予想してしまいます。

そして足元の魔物に目を向けた時です。


「ひぃッ?!」


それまで蒼いゆらゆらには無かったモノが、ワタクシに向けられたのです!


クルンと一回りしたスライムのような魔物には、大きな目玉が!


?!」


覚悟と言うか、諦めと言いますか。

その眼を観た途端、ワタクシは眩暈を覚えました。

もうこれで助からないと思ってしまったのです。


血の気が引くとは、こんな場合を指すのでしょうか。

この後に起きるであろう恐怖に、ワタクシは心神喪失状態になってしまったのです。


「ああ・・・御主人様ぁ」


咄嗟に出たのは、助けて頂いたアレフ様への詫び。


「レーシュは・・・もう駄目のようですぅ~」


抗う武器もなく、対抗する魔法も無い。

あるのは魔物から受ける攻撃で、傷ついた身体を癒す回復魔法だけ。


「いっそのこと、一思いに殺された方が・・・」


なまじ、苦痛を与えられ続けるよりは、その方がマシと思えました。


「丸呑みされて、窒息させられちゃうのか。

 それとも体内に侵入されて、内臓を破裂させられちゃうのか・・・」


スライムによって殺されるには、そのどちらかだと聞いた事がありました。

どっちも無限の苦しみを味合わされそうで嫌です。


「ああ・・・龍神様。メレクはお膝元に行けなくなりそうです」


魔物に犯され死んでしまえば、神様の御許へはいけないのだそうです。

魔物に魂までも弄ばれ、地獄と等しい苦役を担わされるとか。


「せめて・・・魂までは取らないで」


絶望の淵で、ワタクシは魔物に哀願してしまいます。

でしたが・・・



 ポン



魔物がワタクシの足に乗り掛かったのです!


挿絵(By みてみん)


「悲ッ?!」


もう・・・駄目。

卒倒しそうになります・・・



 ポン ポン ポン



足の上に軽く飛び跳ねている感覚。


そして・・・信じられない事が?!


「やぁ!起きた様だね」


「・・・ほえええぇ~~~~~ッ?!」


耳を疑いましたが、聞き違えではないようで。


「聖魔法を唱えた処からして、君は僧侶か何かだろ?」


「ひいぃいいいいぃ~ッ?!」


男の子の声が紛れもなくスライムから流れ出て来るのです。


「そんなに驚かないでよ、心外だなぁ」


「はぁうッ?!」


起き上がって足の上に居るモノをぼんやりとした目で観るのです。

そこには蒼く光っている炎のようなスライムが、大きな目で観ていたのです。


「あ・・・やっぱり。スライムだわ・・・はうッ」


混乱し尽くしたワタクシは、人の言葉を話す魔物に気を失いそうでした。


「スライム?

 違うね、僕は炎魔えんま系の蒼真似真似あおまねまね

 スライムなんかと同じ扱いをしないで欲しいな」


「ほぇ?真似真似まねまね?」


聴いた事があります。

魔物の類の中で、他の物体に化ける能力がある低級魔物だとか。

化けれるのは姿だけで、攻撃能力は元のままってことも教わりました。

つまり、人を化かすだけの魔物ってことです。


「そっか・・・真似真似だったのね」


スライムよりも組みし易いってことみたい。

でも、魔物には変わりがありません。

頭の隅に、真似真似への対処方が湧き出て来ます。


「蒼い真似真似なんて、聞いた事も無いわよ?」


「でしょ?珍しいよねボクって」


しかも、人間の言葉を話せるなんて・・・妙にも程があるわよ。


「あなた、本当に真似真似まものなの?

 それにしては人の言葉をはなせるじゃないの」


「そ~なんだよなぁ。不思議だろ?」


自分で不思議がるな!って、突っ込みたいのは山々だけど。

ここで余計なことを言って興奮させたら、攻撃されちゃうかもしれない。


「で?君はワタクシに用があったの?

 どうして何もしないで傍に居たの?」


そうでしょ?魔物だったら、気絶している娘にちょっかいを出す筈ですもの。


「まさか?!ワタクシの知らぬ間にいかがわしい事を?」


着衣が乱れていない事は知っていました。

だけども、相手は魔物です。どんな事をされたかは分かりようがありませんから。


「はいぃ?

 君が落っこちて来たんじゃないか。

 ここは古の祠がある場所なのを知って来たんじゃないのか?」


いにしえの祠ぁ?」


そんなのがあるなんて聴いていませんってば!

ここは古城だった筈・・・間違いなくです。

・・・でも、そういえば侵入して来た洞窟には、下方に伸びているダンジョンがありましたっけ。


「もしかして、洞窟の地下まで落っこちちゃった?!」


「あのさぁ君?自分で来た訳じゃないの?」


太腿の上で見上げて来る真似真似君が、つぶらな瞳を曇らせました。


「そうよ!魔王級の悪魔に出遭って・・・堕ちて来ちゃったの」


「・・・がぁ~ん!ここから出られると思ったのに~」


・・・なんですって?

予想に反した物言いに、ワタクシは思わず眼を覚まします。


「なんですって?!あなたはここから出たことが無いの?!」


「そうだよ!折角抜け出せると思ったのにぃ~」


なんということでしょう?この魔物は地下から出たことが無いというのですよ。

どのくらいの期間ここに居るのか。

どうして魔物の癖に抜け出せないのでしょう?


「ちょっと!魔物だったら抜け出せるでしょうに!」


人間ならいざ知らず、魔物が地下迷宮から出られないなんて有得ません。


「出られないモノはしょうがないだろ!

 それにボクの事を魔物だと決めつけないで欲しいな。

 こう見えてもボクは・・・あ、アレ?なんだっけ?」


「蒼い真似真似・・・」


ほざく真似真似に、ジト目で言ってやりましたよ。


「そう真似真似・・・じゃぁないッ!」


「自分でそう名乗ったじゃない」


更にジト目。


「う?!

 違うんだ、真似真似は真似真似だけど。

 ボクは・・・なんだったっけか?」


「・・・」


もう返す言葉も見当たりません。


じたばた藻掻いて答えを探す真似真似を足から降ろして。


「つまりぃ~、君は魔物であって魔物では無いと言いたい訳?」


「そうなんだ・・・って、信用してないね?」


当り前でしょう!


「その姿を観て、誰が人間だと思うのよ」


誰が見ても・・・魔物の類でしょうに。


「人間じゃない・・・だけど。

 だけどボクは魔物でもないから!」


「魔物じゃない!」


きっぱりと言ってしまってから、ハタと気付いたのです。

魔物だとしたら、今頃ワタクシは餌食にされていた筈だってことに。


気絶した人間を、魔物が手を拱いて観ているだけなんて有得ませんって話にです。


「そんな・・・何かの間違いなのでは?」


気付いてしまって、本当にこの真似真似が魔物ではないような感覚に囚われてしまったのです。

蒼い真似真似の本性?

人を驚かすだけの魔物だから?

ううん、いくら低級魔物だからって、何もしないでいる筈がないもの。


「まさか・・・あなたは?」


魔物ではない?

邪悪な上級魔物に真似真似へとされた・・・人?

ヴァンパイアにシモベとされた人のように?

そうだとしても、辻褄が合いません。

邪悪なる魔物に侵された人だとしたら正気を保てる筈も在りませんし、操られて人を襲う筈だったからです。

つまり、真似真似にされている人でもワタクシを襲っている筈だと・・・


「魔物ではない?真似真似にされている別の存在?」


「う~ん・・・分んないよ」


自分が真似真似ではないとだけ分かるみたい。

元が何であったのかは思い出せないみたいで。


「兎に角!ボクは魔物では無いとだけ言い切れるんだよ」


「そ・・・そ~?」


蒼い真似真似が思い出せないのなら、ワタクシも頷くより他ありません。


「なんだよぉ~?その曖昧な云い様は」


「仕方ないじゃない!ワタクシにあなたの本性が分かる訳が無いんだから」


思わず言い交して。


「ぷ!そりゃそうだよな」


「うん!でも、無害な存在だと分って安心したわ」


やっと落ち着けました。


「ここから脱出する間、協力しましょう。

 ワタクシの事はレーシュと呼んでください」


協力者になるのですから、名乗らないといけませんよねお互いに。


「ああ、分かったよレーシュさん。

 ボクは・・・えっと。なんて名前だっけ?」


あら?名前までも思い出せないようですね。

だとしたら・・・


「君の名は・・・そうね。

 マァオ君でどう?蒼い真似真似のマァオ君」


「単純過ぎる・・・けど。悪くはないね」


どうやら気に入って貰えたみたい。


「じゃぁレーシュさん、これから宜しく」


「あ、さん付け抜きでいいよ。単にレーシュって呼んでくれて。

 その方が聞きなれちゃって・・・御主人様に呼び捨てにされてたから」


アレフ様に、いつも下僕扱いされて来たのが性に合ってたみたい。


「レ、レーシュ・・・は、召使いだったの?」


「それ以下の扱いでした・・・下僕だって呼ばれていたの」


自分で言って不自然ではないなんて・・・慣れって怖いなぁ。


「全然見えないけど?そーなんだ?」


「でしょぉ?」


自慢じゃないけど、ワタクシの御主人様は良い人なのですよ。

下僕だなんて言いながら、いつも護ってくだされるのですから。


不意にアレフ様の顔が脳裏を過り、ワタクシが眼を伏せると。


「ふ~ん・・・確かに主人想いの下僕のようだね」


マァオ君が心の隙間を埋めてくれたのです。


「え?!ワタクシが・・・御主人様を?」


その一言で気付かされたのです。ワタクシはアレフ様を想っているのだと。


「そんな・・・ワタクシのような下僕が。

 御主人様を想うだなんて・・・」


いつの間にか、ワタクシは下僕であるのを自認していたようです。

いいえ。下僕ではなく、アレフ様を想っている事にです。


「ふ~~~~ん。

 何だか知らないけど、レーシュの御主人って人に会いたくなった」


ブスッと呟くマァオ君。

大きな瞳で見詰められ、言葉を返す事も出来なくなってしまいます。


「そ、そう?だったら、逢いに行かなくっちゃだね?」


そうですとも!きっとアレフ様は健在なのです。

きっとまた逢える筈なのです!


「ここから抜け出して、御主人様の元へ行かなくっちゃ!」


「お?おう」


見えない天井を見上げて、ワタクシが言い切るとマァオ君も同意します。


こうしてタッグを組む事になったマァオ君と、地上目掛けての脱出行が始まるのでした。


端で観たら真似真似を連れ歩く魔女の様でしょ?

でも、本当にマァオ君は何者なんでしょうね?


もしかしたら・・・とんでもない人だったのかも?



地下迷宮を探索するレーシュとマァオ。

その前に現れるのは? ・・・・・魔物?!

魔物の真似真似が?

レーシュに何を齎すのでしょうか?


今回から絵柄が変わりました?

お分かりかと思いますが、水彩画風のデジ絵に挑戦しています。

今しばらくはこんな感じでいこうかと思うんですが・・・如何でしょう?


今回ツイッターにて先行公開したところ・・・


「ちはや れいめい」様が加工してくださいました。

今話が公開された時、雪が降っておりましたので・・・


挿絵(By みてみん)


雪ぃ~~~~~~ッ!


いつもお世話になっております。


ちはやれいめい様のページはこちらから

http://mypage.syosetu.com/487329/



次回!マァオ君とレーシュは・・・どこにいくの?


次回 Pass12約束と願い<正義>Act3

迷宮からの脱出は至難を極める?まぁ・・・そうでしょうねW

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ