<Pass11 荒野の果てに<<運命の輪>>>Act3
アレフの術によって放り出された勧誘員達。
驚き逃げ帰る先にあるのは?
この2人は後を追うようなのですけど?
ワタクシ達は放り出されて逃げ帰る二人を追いかけたのです。
男女の勧誘員は、真一文字に走っていくのですが・・・
「おい下僕シスター。
どうやら奴さん等が向かっているのは教団らしいが・・・」
振り返りもしないで、アレフさんは命令しようとしているみたい。
「そうみたいですね~」
なんだか・・・嫌な予感がします。 ものすっごく。
「場所が特定出来たら・・・潜り込むか?」
「・・・はいぃッ?」
あ?!そう来ましたか?
「街のアジトに、教祖や連れ込まれた娘達が居るのかどうか。
それに、カルト教団だとすれば妖しい呪いを街中で行っている筈が無いだろうしな」
「って、ことは?」
前を走っている二人が向かっている場所には、教祖は存在していないと?
「察しの悪い奴だな。
平勧誘員如きが簡単に教祖とやらに訴え出られる筈が無いだろうが。
奴等が言っていた上達者とかに言い募りやがるだけだろう」
「そんなものですかねぇ?」
勧誘の邪魔をされたから、娘さんを連れて来れなかったんだって。
言い訳を告げに帰るって訳ですか。
「俺は三下には用がない。
教祖に近い人物から情報を得なくては、場所も規模も判らんのだからな」
「それで・・・潜入しようと?」
街の教団本部には、きっとそれなりの人物が居ると読んだみたい。
しかし、なにも潜入しなくてもよさそうなモノなのに。
「街の人に訊いたら済みませんか?
メシアさんはどちらに居られますかって・・・
「馬鹿者。
あれ程メシアを信仰している奴が多いのに、疑われるような真似が出来るか。
それに、もう姿を覚えられてしまってるだろう。
俺が停めたのに布教なんてやらかすから・・・な」
あ・・・それを言われると・・・そうでした。
街に着いたら早速、聖龍神様の教えを説いてしまいましたっけ。
「あはあは。すみません」
こんな事になるなんて分からなかったから・・・って。
確かにアレフさんが停めたのを無視したワタクシの落ち度かも。
「分かったか下僕シスター。
奴等の本拠を叩くには、それなりの準備ってモノが必要なのだ」
「なんだか・・・酷く無理に納得させられたような」
それにしても、メシアって人が本当に悪魔なのかってことも分からずじまいですものね。
まかり間違って、こちらの思い込みでした・・・なんてことも有り得るから。
「分かりました、アレフさんの仰る通りにします」
アレフさんもきっと、ワタクシと同じように考えられての事でしょう。
「よし。それではあいつ等が飛び込む建物を覚えておけ」
「はい!」
疑いを知らないワタクシは、アレフさんが少しばかり立派に思えて来ていました。
どうしてワタクシに二人を見張らせていたのか、なぜ前を走るアレフさんが覚えておけって言ったのか。
「ふむ・・・あそこに服屋があるな・・・俺様の好みがあれば良いがな」
ワタクシは知りもしませんでしたけど、アレフさんは良からぬ事を想定されていたようです。
アレフさんの前を走る勧誘員さん達は、程無くして一軒の家に飛び込んで行くのが見えました。
「あそこが・・・アジト?」
どう見ても、その建物が教団のアジトとは思えません。
「普通の家にしか見えないけど?」
街中の一軒家。
ごく普通の。
ワタクシが物陰に隠れて見張っていたら、アレフさんが手招きして呼んだのです。
「おい、下僕シスター」
はい?今、ワタクシは監視中ですけど。
「俺様について来い」
「え?!潜り込むタイミングを計るのではなかったのですか?」
さっき、そう仰ってましたよね?
「お前、俺様が言ったのを忘れたのか。
姿を観られているんだ、そのナリのままで忍び込めるか?」
「はいぃ~?意味が分かりません」
アレフさんはどうしようというのでしょう?
「人間っていうのはな、パッと見た印象を覚え込むんだよ。
姿形より、目に映った色とか形を覚えやすいんだ」
「はぁ?」
説明されても・・・分りかねるのですけど。
「ああ~ッ!つまりだな、変装しろって言ってるんだ!」
「なるほどぉ~・・・・って?!変装ですか?」
なんと?!ワタクシにも変装しろって言うんですか?
「そうだ!具合の良いことに、店がある」
「・・・服屋さん?」
アレフさんが指さす処には、服屋さんの看板があります。
「俺様も、下僕シスターも。
衣装替えを行う・・・分ったな」
「え?!ええッ?」
どうしてこうなるの?
「ああ~ッ!まどろっこしい奴だな」
狼狽えてしまうワタクシの手を握り、半ば強制的に服屋さんに連れ込むアレフさん。
カララン♪
ドアを開けると、
「おやまぁ、いらっしゃぁ~い」
店の女主人さんが駆けよって来ます。
でっぷりと太られた大柄な方なので、物凄い威圧感を感じてしまうのですが。
「俺様と、こいつに服を・・・」
アレフさんは気にもしないのか、女主人さんに見繕わせようと話しかけたのです。
・・・けど?!
「言わなくても分かってるわよぉ~ン。
お似合いのカップルにコーデネイトさせて頂くわ~ん」
声を聴いて分かりました。
この方は・・・男性なのだと。
服は女性のモノ。でも、着ておられる方の中身は・・・男の人。
「カップルではない。主従関係だ」
アレフさんが、はっきりと断られます。
そう言って貰えると、この場では助かります。
「主従ぅ~?なるほどねぇ、亭主関白な関係?」
流石にこれにはワタクシも。
「夫婦なんかじゃありませんッ!」
きっぱりと断っておきましたよ。
「おい、おっさんかおばさんか判らん店主。
俺様が言うのが分らんのか?こいつに似合う服を出せと言ったんだ」
アレフさんはうんざりしたのか、さっさと服を選んで来いと命じられました。
「ふぅ~ん・・・なるほどねぇ・・・」
で。
男女店主さんは、ワタクシを隅から隅まで観て廻すと。
「ちょうど良いのが入荷したのよねぇ。
たぶんだけど、ぴったりだと思うわ~ン」
何やら独りで想定されておられますが?
「だったら、こいつの服を全部とっ換えてしまえ。
代金なら・・・これで賄えるだろう?」
アレフさんは懐から金貨を3枚出して突き付けるのです。
「わぁ~おッ!金貨3枚ですって?
それじゃぁ、パトロン様の好みを聴かないといけないわ~ん」
・・・いつからパトロンさんになったのです?
金貨3枚と言えば、確かにひと月分の売り上げに等しいのでしょうけど。
「ふむ・・・そうだな。
だったら・・・一つ言っておくか」
手を摺り寄せる店主さんに、アレフさんが何かを告げられます。
・・・またもや、嫌な予感が。
「はぅあ~ッ?!
了解しましたわ~ん、パトロン様」
目を輝かせた店主さん・・・もう、間違いなく嫌な展開が待っていますね?
手をニギニギさせる店主さんが、ワタクシを見下ろして嗤いましたから。
「それでは・・・お嬢さんはこっちに来て頂戴」
嫌な予感はしますけど、このままでは埒が明かないので。
「分かりました」
服を買うだけなのに、何故・・・身の危険を感じてしまうのでしょうか。
出来る事なら、取り越し苦労であって欲しいのですけど。
「あ、あの。アレフさんは?」
「ああ、俺はここらの奴から選ぶとしよう」
そ、それなら!ワタクシも~・・・って、言えない状態なの。
「ほら!こっちに来て。試し着して貰わないと~」
既に店主さんに、手をホールドされていたからですよ・・・トホホ。
店の奥に連れ込むと、
「お嬢さんの旦那さんから頼まれたんだけどねぇ。
ちょうどお似合いの服が入荷された処なのよぉ~ン」
店主さんが封の切られていない箱を取り出して来るのです。
「旦那さんの好みに合えば良いんだけどねぇ~ン」
ドサッと箱を置き、問答無用でワタクシへ迫ります。
「さぁ!その服を全部脱いで頂戴な」
・・・って・・・へ?!
「ぜ、全部脱ぐのですか?」
「そう言ったじゃない、今」
あっけにとられてしまいます。
「上着だけで、十分じゃぁ?」
「全部!」
上背のある店主さんに詰め寄られて、背の低いワタクシは逃れようがなくなります。
「し、しょうがないですね。
試着しなければいけないんですよね」
店主さんは服が似合うかどうかの判断しようとされておられるようなので。
「そう!眼鏡違いじゃないとは思うのだけどね~ン」
店主さんも服屋さんのプロでしょうから、任せておいても良いのかも知れませんが。
でも、ちょっと気になっている事があります。
「あの。さっきアレフさんから何を頼まれたのですか?」
なんだか・・・良からぬ気がしているんですよ。
「あ~、気にしなくても良いの~。
見栄えがするように頼まれただけだから~」
見栄えって・・・なに?
「なんだか・・・怪しい」
警戒するワタクシが、シスターの衣装を脱ぎにかかると。
「ほら見て。このブラウス可愛いでしょう?」
箱から取り出して拡げて見せてくれます。
白のブラウスは、確かに清楚で綺麗です。
「それに、このタイトスカート。
きっとブラウスに合う筈よぉ~ン」
紺のタイトスカートも、キリっと引き締まって見えます。
「そして・・・極めつけはこのコルセットなのよねぇ~ン」
「コル・・・?なぜコルセットを着けるのです?」
コルセットと言えば、衣装の下に着けるのではないのですか?
「あらやだ!最新のファッションを知らないのね~。
殿方の見栄えが良くなるようにって、貴族の間では流行っているのよ~ン」
「ワタクシは貴族でも流行好きでもありませんから」
男性に見せる訳でもなければ、社交界に行くこともありませんので。
「ふふ・・・残念ねぇ。
これはセットなのよ、着て貰わなきゃならない決まりなの~」
「残念って・・・服に決まりなんてあるの?」
店主さんと話している間に、ワタクシは肌着姿まで脱ぎました。
「それじゃぁ・・・袖を通しますね」
ブラウスから試着しようと手を伸ばしたのですが。
ガシ!
店主さんの手が停めるのです。
で・・・信じられない一言が待っていました。
「あら~?全部って言ったのよ~ン。
下着も何もかも全部脱がないと・・・」
「ほぇ?まさか?」
まさかです!どうして下着まで脱がないといけないのですか?!
「決まっているでしょ~。
全部新調してくれって旦那様から頼まれていたのよ~ン」
「全部って・・・何もかもって意味?!」
驚愕するワタクシに、コクコク頷く店主さん。
「そう~なのよぉ~。衣装を全部新調してくれって」
「下着は関係ないでしょうに!」
どうして下着までも替えなきゃならないのですッ!
「決まってるじゃないのぉ~。中身を見られても恥ずかしくないように・・・よ」
「み?見られるって・・・誰にですか!」
下着を見せるなんてしませんから。
「あら~?見せたくなくっても観られちゃうってハプニングも在るわヨ」
「そ、それなら!今の下着だって同じ事じゃないですか!」
そうでしょう?
でも、店主さんは指を突き出して振ります。
「ちっちっち!どうせ見られるのなら、魅せなきゃ」
「はぁ?!」
もう、意味が分かりませんッ!
「殿方に見られるのなら、魅せなきゃいけない決まりなのよ~ン」
「・・・見せるじゃなくて、魅了するってことですか?」
言葉使いって難しいです・・・って、違うッ!
「ですからッ!どうして魅了しなければならないのです!」
「決まってるじゃない。殿方の眼はチラリズムを求めておられるからよ~ン」
・・・あはは。これは駄目だ。
「もういいです!服なんていりませんから」
アレフさんに言って取り消して貰おう。
そう想ったのですが・・・
ガシ!
店主さんに肩を掴まれてしまいました。
「折角のぼろ儲けを台無しにする気?」
で。怖ろしい顔で睨まれちゃいました。
「ひぃ?!」
元々が男の方なのでしょう。掴まれた肩に威圧感を感じてしまいます。
「逃がさないわよ~!
こうなったらひん剥いてでも着替えさせてやる~ン」
「ひぃいいい?!やぁ~だぁ~?!」
掴まれたまま、ワタクシは恐怖で顔を蒼褪めたのでしたが・・・
悪夢とでも申しましょうか。
シスターのワタクシに店主の男女な方が伸し掛かって。
「このままひん剥かれたくなかったら、とっとと着替えるのよ~ぅ!」
もはや、逃げることも叶いそうにありません。
このままだったら、間違いなくすっぽんぽんにされちゃいます。
男の方に観られた事も無い、顕わな姿にされちゃう?!
「分かりましたぁ~!着替えますから許してぇ~」
威圧感に負けたワタクシが、とうとう認めちゃったのです。
「ふぅ!最初からそう言えば良いのよ~。
それじゃぁ、下着はこれとこれ。
脱いだ服は、これに入れておいてねぇ~ン」
ずざざざ~
突き出された下着を観たワタクシは飛び退きます。
目の前に現れた下着さんは、真っ赤な色・・・
「ひゃあぁッ?!ど、どうして赤なの~?!」
しかもです。
かなりキワドイ形をしておられますが?
薄地で渕がレースになっていて、腰回りなんて紐かと思えてしまうのです。
それにブラも、大事な処が隠せているのかも危ぶまれるのです。
「なんなのですかぁ?このショーツとブラ!」
血相を変えて訴えるワタクシに、
「魅せる為・・・」
あニャぁ~?!またそれですか?
魅せるって・・・見られたくないじゃないですか!
「おやぁ~?着替えたくないのなら、着替えさせてあげたって良いのよぉ~ン」
まっぴら、御免被ります。
「シクシク・・・着替えますからどこかに消えて」
諦めたワタクシが、泣く泣く下着を手に取りますと。
「着替え終えたら、直ぐに呼んでよねぇ~ン」
はいはい・・・
頷くワタクシは、涙目でこう思うのです。
「やっぱり・・・嫌な予感は当たってしまったんだぁ~」
・・・って。
鏡に映る自分が、なんだか別人のように感じたのです。
キリっと引き締まっても観えますし、どこかメイドっぽくも感じます。
きっと、このコルセットがポイントなのでしょう。
「でも・・・」
そうなのです!
タイトスカートにはスリットが入っているのですが。
「こんなに切れ上がっているんじゃぁ・・・腰まで見えてしまいそう」
太腿の付け根付近までスリットが入っているなんて反則です。
それに。
「丈が短いし。転んでしまったら間違いなく見えちゃう」
動揺してるワタクシは、鏡の前でスカートを押さえて考えこんじゃいます。
「なるべく、激しい動きも控えなきゃ。
後ろから観えちゃうかもしれないよね」
すっと立っているだけなら、凛と見えるのですが。
激しい動きをしてしまえば、たちどころに観えちゃうかも知れません。
着替えが終わっても、店主さんを呼べなかったのにはこうした理由があったからです。
「もう着替えたかしらぁ?」
アレフさんの元に言っていた店主さんの声が呼んでいます。
「あ、はい。一応は」
ブラウスとコルセット、そしてタイトスカート姿だけを観たらそれなりに整っているんですけど。
「でも。他の服はないのですか?」
あまりに危なっかしいので、他に無いのかと訊いたのです。
「それは旦那様に見せてから~」
店主さんがアレフさんを伴って寄ってきます。
「あ、アレフさん!これ以外の服に・・・」
もう少し露出の少ない服をって、頼もうとしたのですが。
鏡から振り返ろうとしたワタクシの足元に、いつのまにか油が?!
「ひゃんッ?」
ツルっと。
すってぇ~ん!ころりんこW
「あ痛たたたぁ~」
したたかに尻餅をついてしまったワタクシの前には。
「ふむ・・・赤か」
「どうです?良く映えるでしょ~ぉ?」
おふた方が見下ろしておられるのです。
「確かに。赤は良い」
赤?
「色艶も、肌触りも格別な一品ですの~ン」
色艶?肌ざわり??
お二人はワタクシの何を観て・・・
転んだ弾みで両足を投げ出していたようなのですけど?
・・・
・・・・・
・・・・・・・・・
「んへ?」
お間抜け丸出しの声をあげ、それでもしっかりとスカートを握り締めて。
キョトンとしたワタクシは?!
「ぴぃやぁああああああああああああああ!」
次の瞬間、スカートを引き下げて絶叫しましたよ。
やっぱり。
悪い予感はあたるんだなぁ~って、つくづく思い知らされちゃいました。
「毎度ありぃ~」
店主さんに見送られ。
アレフさんに引き立てられるように件の建物へと向かいます。
結局、服装を変える事も出来ませんでした。
「服装を変えるだと?時間が勿体ない!」
あっさり断わられてしまいました・・・シクシク。
でもアレフさんにとって、ワタクシの衣装なんて眼中にないのは分かります。
だってワタクシは、所詮アレフさんの下僕に過ぎないのでしょうから。
「パンツを観られたぐらいで泣くな、馬鹿者」
そう仰られるのが、救いのように感じれます。
でも・・・どうして?
どうしてなのでしょう?
なにが気になってるのか・・・ですか?
それは。
「あのぉ~アレフさん。
服屋さんに油がこぼれていたのはどうしてなのでしょう?」
転んでしまったのは、知らない間に床が油に塗れていたからで。
「知るか!」
でしょうねぇ・・・あっさり答えられちゃいました。
でも、不思議なこともあるものです。
アレフは後ろでごにょごにょ呟くレーシュに細く笑みます。
「不思議でも何でもない。
俺が召喚しただけのことだからな、炎の異能から火を消して。
全て俺好みになったのかを確かめる為にな」
黒の召喚術師の顔で、勇者は嗤うのです。
何も知らないレーシュは、自分の運の無さを嘆いているみたいですが。
この場は、そっと様子を観ておきましょう。
衣装を換えて変装した二人が教団の建物へ着いた時には、既に夕日が落ちた後でした。
そう、忍び込むには頃合い。
紅魔が時って奴だったのです・・・
哀れレーシュよ。
今回は着衣エ○的な何かW を、模索してみました。
露出しなくても相当にエッチっぽかったでしょうか?
・・・ご意見を乞う。
本題です。
服を替え、変装した2人なのですけど。
カルトな教団に侵入しようとしますが・・・・
そこに待っていたのは意外な事実?!
次回 <Pass11 荒野の果てに<<運命の輪>>>Act4
あれ?!こんな事ってあるんですねぇ~?!BY,レーシュ




