魔法は
パンッ!!
真っ暗な地下に降りると爺やが急に手を叩いた。真っ暗な部屋が少しずつ明るくなっていく。この地下室には電気が通ってないためこうやって魔法で明かりをつける必要があるのだが……
(毎回思うけど急に叩くのやめてくれないかな。毎回、普通にビクッとするんだよな)
「ほんとこの世界の魔法は便利だよな。こんな簡単に魔法が発動するんだから」
手を叩くだけで明かりがつくとか普通に考えたらおかしいよな。特に無詠唱の魔法なんて発動の動作が分からなかったり魔力を感知できなかったら防ぎようがない。基本的は手を叩く、指を鳴らす、手を前にかざすなどがある。中には足で発動させたり、大昔には眼だけで発動させたやつもいるらしいが基本は手を使う。
「わたしも覚えるまでにはこれでも相当苦労したんですぞ。坊っちゃまに比べたら才能が全然なかったものですからな」
そんなことを、ほっほっほと余裕の笑みで言われてもな。
たしかにこの世界の魔法はイメージや魔力制御が出来てさえいれば簡単に発動する。その中でも、このじいさんは魔力制御がずば抜けている。魔法を発動するときにはどんなに隠そうとしても魔力が少しは漏れてしまう。しかし、爺やはそれを感じさせずに発動させている。はっきり言って爺やが敵に居たらこの国は壊滅するレベルである。
「うーん。おれはそこまで魔法の発動のときには魔力を隠せないんだよなー」
「わたしはこれでも50年以上、坊っちゃまより魔法に触れていますからね。慣れですよ、慣れ」
爺やはそう言って右手の人差し指を立てる。その瞬間、指から小さい火が出る。一切の魔力を感じなかった。ほんと化け物だな、この爺さんは。
「それでもなー、師匠を超えてこそだし。おれだって早くものにしたいんだよ」
「ホッホッホ。坊っちゃまなら、わたしなどはすぐに超えてきますよ」
まだまだ超えさせてくれる気なんかないくせに。でも、だからこそ目指す価値がある。盗めるものは全て盗んでいく。技術も経験も、全部。
「ふぅー……」
集中。心を穏やかに。イメージはガスバーナーのような高火力の火。まずは手のひらに小さな火種を作る。そこに少しずつ酸素を加えるイメージをする。そうすることによって小さな火種は炎と呼んでもいいほどの熱と大きさを持つ。
「これは……ここまで高火力の炎は並の術士では発動できないでしょうな」
「そうか、なら一応成功でいいかな。とりあえずは満足いく威力にはできてるはずだからな」
「さすがですな、坊っちゃま。この国の宮廷魔導士団ですら勝てないほどの才能ですぞ」
そう言って爺やが褒めてくれた。そして自分の顎に手をやり「これなら……超えられ……」などとよくわからないことをぶつぶつと言い始めた。
そんな爺やは放っておいて、これで一応火もマスターできたな。とりあえずは五大属性と言われている火、水、雷、土、風はなんとなくコツは掴んだ。特に雷と火に関しては威力も制御も爺やのお墨付きだ。ほかの三属性も前者の二つよりは苦手なだけで並み以上である。
(あとは〝あれ〟の実験だな)
そう思いながら目を閉じさっきよりも集中する。自分の中の魔力がしっかりと正常に流れているのが分かる。実験前に魔力の流れを確認するのは異常な魔力の流れだとうまくいかない可能性があるからだ。それほどこれからする魔法は繊細で前例のない魔法になる。
おれは少し気合を入れてある魔法を発動させるために魔法陣を構築した。
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