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~異世界で輪廻転生~  作者: ぽん太
第三章~グランファスト王国校内騒乱編~
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自己紹介

 生徒会、風紀委員会の号令の下、新入生は列をなした。その数、十二列。基本、一列に生徒が百人以上並んでいる。新入生の総数は約千二百人ほどになる。この人数の入学は過去最高となっているらしい。ただ、おれたちが並んでる列だけは、その半分の五十人程度しか居ないんだが……


 どういうことなんだろう?若干、他の列から受ける視線が鋭い気もする。


「よし、全員整列できたな。それでは、講堂に向かうとしよう」


 そう言って生徒会長が先頭を切って進む。生徒会長が案内している生徒の後ろを、おれたちが続く。眼鏡が特徴の、知的で、気難しそうな印象の副会長様が案内してくれている。


 それにしても……あの生徒会長、どっかで会ったことないか?なんか見たことあるんだよなぁ?名前も聞き覚えはある気がする。思い出せないけど……


「ん~? どっかで会ったことはあるはずなんだけどなぁ?」

「ゼットさん? どうしたの? そんなに唸ったりして」


 おれの後ろを歩くリミが小声で聞いてくる。


「いや……あの生徒会長なんだけどさ……どっかで会ったことあるかなぁって。リタ・パルトナーって名前も聞き覚えがしてならないんだけど思い出せなくてな~」

「え……ゼットさん……それ本気で言ってるの?」


 リミの声が疑問から驚愕へと変わった。あれ?なんかまずったか?


「あ、あぁ、なんも覚えてない。会ったと思うんだけど記憶にないんだよ」

「うわぁぁ……それは、ちょっと……ないわ~」


 今度は、驚愕から引き気味の声に変った。なぜ!?


 おい! アン、ラディー! おれなんか変なこと言ったのか!?


『えーっと……ごめんなさい。あたしもちょっと、それはないなって思ったわ。ゼットが人に興味ないのも分かってるんだけど……あたしたちも最近、なにかとあなたが活躍してたから忘れてたわ。ゼット・シフォンベルクがやる気ないときはポンコツで屑なのを』


 おい!さすがにそれは酷くないか!? お前、おれのこと、好きとか言ってなかったか!?


『いや、好きだけど……それとこれとは別よ? そもそも、あなたのことを全て肯定してくれる人がいいわけ?』


 うぐっ……それは、違うけど……


『じゃあ、いいじゃない。あたしはゼットのことが大好きだけど嫌いなとことか馬鹿だ屑だって思うし言うわよ? 嫌なら言ってくれれば離れてあげるから』


 そう言うアンは、おれが離れてくれなんか言うわけないと分かっている。きっと、今はニヤニヤ顔なんだろうと思うと悔しくなり、おれはそれを誤魔化すようにラディーに話を振ることにした。


 ら、ラディーは教えてくれないのか?


『はぁ、アンに負けたのが悔しいのは分かるが、この流れで俺に話を振ってくるんじゃない……めんどくさい……この二人が言わないものを、俺が言えるわけないだろ? まぁ、そんなに気にしなくても直に思い出すさ』


 悔しくなってなんかいない! ま、まぁラディーがそう言うなら信じるぞ?


 そう言って一方的に会話を終わらせる。アンがまだ、何か言っているがシカトする。クソッ!後で覚えてろよ、あのドS魔王め!絶対泣かしてやる!


「ね、ねぇ? ゼットさん? ほ、ほんとの本当に覚えてないの? かなりの事があったんだよ? それを忘れるとかまずいと思うんだけど……」

「え……おれ、あの人になんかやらかしたの?」

「い、いや、どっちかと言うと向こうがなんだけど……それで喧嘩みたいになったんだけど……」

「う、うーん……ダメだ……全然思い出せない……」


 リミも何とか、自力で思い出させようとヒントを言ってくれているんだが、一向に思い出せる気配がない。そんなことをやっていると、案内役の副会長様に睨まれてしまった。おぉ、怖っ!


「君たち、少し私語が多いな」

「「は、はい……ごめんなさい……」」


 二人して怒られてしまった。


「もう、ゼットさんのせいで怒られたじゃん……わたし、印象いい優等生でいきたいのにさ~」

「おれのせいにすんなよ。そっちが早いこと答えを言えばいいんだろ! ヒントだけ与えて、大事なことは一つも言ってくれなかったじゃねぇか」

「うわ、ひどぉぉい。せっかく自分で思い出させてあげようとしたのに! そもそも、ゼットさんがあんな大事なこと忘れてるのが悪いんじゃんかぁぁぁぁ!」


 リミが怒られたことに対して、おれのわき腹をつつきながら言ってくる。自分だって、話を長引かせた張本人の癖に酷い言いがかりだ。売り言葉に買い言葉。最初は小声で言い合っていたのが気が付けば周りには聞こえるくらい大きな声になっていた。


「ごほん! 君たちは、先ほど注意されたというのに、また同じことを繰り返すのか!! しかも今回は、さっきよりも声が大きくなっているではないか。周りの迷惑を少しは考えたまえ!」


 副会長様がさっきよりも声を荒げ怒ってきた。眼鏡の奥の目つきも、先程よりも怖い。


「そこ! さっきから騒がしいぞ! ハイト副会長。君がついていながら何をそんなに騒いでいるというんだ……」

「か、会長……申し訳ありません! 注意したのですが聞き入れてもらえず……自分の不手際です。本当に申し訳ありません!」


 そう言って副会長は頭を下げる。すっげぇぇ……綺麗な九十度のお辞儀だ……こんなきれいなお辞儀、向こうでも見たことないわ。


「い、いや、君一人が悪いわけではない。だから、そういうことはやめろと、いつも言っているだろう! ご、ごほん! 見苦しいとこを見せたな。それで? 君たちは何を騒いで、いた、ん、だ……」


 生徒会長様は副会長の行動に、若干引きつりながらも威厳を保ちつつしっかりと返す。そして、こちらに振り向きながら質問をしてくるが、どういったわけか言葉が尻すぼみになっていった。というよりも、口をあんぐりと開けて唖然としている。なんか「な、な、な、な」などと意味が分からないことを言っている。


「なんで貴様がこんな所に居る! ハッ! たしかあの時も、こちらの学校に編入してくると言っていたな……まさか特別推薦科とはな……」

「あ、あの会長? この新入生とお知り合いなのですか?」

「あ、あぁ、知り合いというか一度会っただけだがな」


 え?やっぱそうなんだ!


 おれが生徒会長様の言葉に驚いた表情をしていると、


「なぜ貴様が驚いた表情をしている!! まさか……私のことを忘れたなどという事はないだろうな!? あそこまで喧嘩を売っておいて、忘れたなど……」


 そう言って怒気を発する。うーん、本当に何をしたんだ?過去のおれよ……


「えーっと、ですね……なんと言えばいいか……本当にすいません! 全然覚えてないんです!」

「な、な、なーーーーーー! 貴様、本当に忘れたていたのか!? わたしは貴様に売られた喧嘩をずっと忘れずにいたというのに!!」


 怒る会長を心配して生徒会の面々が集まってきた。おれたち以外の生徒はいつの間にか風紀委員会の人たちが講堂まで連れて行っているみたいだ。


「あ、あの~?」


 そう言ってリミがおれの後ろから首だけ出して会長様に話しかける。


「なんだ!? ……って貴様はあの時の! なぜ貴様までこの学校に来ているのだ!? そもそも首輪がないではないか!? ゼット・シフォンベルク! これはいったい、どういうことなんだ!?」


 この高圧的な態度、それにリミが奴隷だったことを知ってるやつ。今のリミを見て奴隷だったことなど分かるはずがない。副会長以下、生徒会の他の面々も首輪という単語に理解を示したとしても想像できていない。


 となると……


「あぁ、思い出した。あの時のバカ女か……」


 そう小声でつぶやいた。しかし、生徒会の奴らには聞こえていたんだろう。全員が殺気だって今にもおれに殴り掛かる勢いだ。


「貴様、会長に向かってなんという口の利き方だ!」

「そうよ! この素晴らしい会長のどこがバカだって言うのよ!」


 副会長ともう一人の女子がそう言って怒りをあらわにする。残りの二人も無言で睨んできている。


「まあ、待て。この男が私のことをなんと言おうがどうでもいい。大事なことは私との決闘を忘れていたという事だ。あれほど言い合っておいて忘れているとはな」

「いやぁ、すまんすまん。あの事件が終わってからも事後処理やら、、リミを養子にすることを頼むのに家まで行ったり色々あったんだわ。大変な時って、興味ないことなんてすぐ忘れるだろ?」


 そう言って事実を述べると顔を真っ赤にしてぷるぷると震える。


 あーあ、これがリミが照れてる姿なら喜べたのになぁ……なんでこんなバカ女の見なきゃいけないんだろう……


「そうか……あの時だけでは飽き足らず、今日もバカにするというのだな? それに養子だと? そんなもの国王であるシフォンベルク王が受け入れるはずもないだろ! こんな奴を受け入れるメリットはないんだからな!」

「うーん、なんで家族でもないあんたが否定できるのかはさておき、こいつは今、リミ・シフォンベルクだぞ? ちゃんと父さんと母さんのサインが書かれた紙もあるし、ここに入学できたのもマハトがOKしたからだぞ? てか、あんまリミのことバカにしないでくれよ? 姉さんたちや父さん母さんが聞いたら、すげえ面倒なことになるし……なにより、おれの内側に居る奴らが暴れてしまう」


 おれはそう言うと、内側から溢れ出る魔力を少しだけ解放する。すると、目の前に居た六人はあり得ないほどの質量の魔力を真正面から受けて膝をつく。生徒会長であるリタだけは膝が折れるすんでのところで踏ん張っているが……


 そもそも、この魔力はアンとラディーがリミをバカにされたことにキレて暴走したものを、おれが制御しているものである。なので、この制御をなくすと、たちまちここら一帯が恐怖の海に沈むことになる。講堂で入学式開始を待っている在校生や教師、講堂の外で待っている新入生は気絶するだろう。心臓が弱い奴なら最悪、死にかねない。だから制御しとかないといけないんだが、制御してもこれか……相手にならないな。


 てか、ほんと姉さんたちが居なくて良かった。居たらこいつら絶対生きてない。あの二人、リミの事おれ以上に気に入ってるからなぁ。リミをバカにするやつらを生かしておくとは思えない。


「な、何なんだ……その異質な魔力は? 貴様、本当に人間か!?」

「おうおう、普通に失礼だな、おい。バリバリ人間だってーの! 改めて自己紹介してやるよ。おれはゼット・シフォンベルク。シフォンベルク家の末弟で始まりの魔王と最古の竜王の能力を受け継いだ異世界転生者だよ」


 そう言って、優雅に一礼する。そして、頭を上げると目の前には、それ、顎が外れてるだろ、ってくらい大きく口を開けた生徒会の面々が居た。

読んでいただきありがとうございます。

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