表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~異世界で輪廻転生~  作者: ぽん太
第二章~グランファスト王国奴隷解放編~
32/42

報告

  目の前で三人の美少女が口を開けポカンとした顔をしている。先ほどまで青ざめてたリミも口を大きく開き、せっかくの美少女が台無しだ。リミ以外には絶対に言わないけど。


 姉さんたちにそんなこと言ったら絶対に調子に乗るに決まってる。


「ゼット……今のなに? あんな技あるの聞いてないんだけど……」

「お姉ちゃんもそれは聞きたいなぁ。あんな危ない技どこで覚えたの? お姉ちゃん、大好きな弟が不良になっちゃわないか心配だよ……それにあの化け物塵も残さずに消滅させたよね? 少しくらいは欠片みたいなの残さないと色々と調べられないよ?」


 姉ふたりから責められてしまった。早い話が「「あんな技あるなら最初に言っとけ、バカ」」ってことらしい。まあおれの能力のことは国を出る前の日にみんなに言ってあるけど、どんな技があるかとかは言ってないからな。


 ふと、リミを見るとギーリッヒたちやアルムの居た場所を悲しそうな表情で見ていた。きっと、あいつらのことを考えてこんな顔をしているんだろう。それが、すごい悔しい……


「リミ? 大丈夫か?」

「うん、ちょっとだけ、昔のことを色々と思い出してたの。でも、もう大丈夫!」


  そう言ってうっすらと笑みを浮かべ微笑んだ。その顔はさっきまでとは違い、暗い感情のない、心から幸せそうな表情をしていた。どうやらあいつらのことは吹っ切れたみたいだ。まだ、心の奥底から消えたわけではないんだろうけど、それを忘れさせるくらいおれや姉さんたちが支えてやればいい。


 その表情を見て、おれだけじゃなくイクス姉さんもエール姉さんも満足そうに笑った。リミは姉さんたちに目一杯抱きつかれて苦しそうだったけど、それでも楽しそうに幸せそうに笑うリミを見れてよかった。


「そろそろ戻るか。父さんたちにも色々と今回の件を報告をしないといけないし……だから姉さんたちは、さっさとリミから離れろ!!」

「なになに、ゼットってば、リミちゃん取られてヤキモチ妬いてるの~。もうほんとにリミちゃんのことが大好きなのね~。もうちょっとお姉ちゃんたちにも優しくしてほしいなぁ」

「ヤキモチ妬いてるのかわいい。ゼットは昔から独占欲の塊」


 ニヤニヤした顔で何を言ってるんだ、このバカ姉二人は。別に独占欲は強くなんかないし、リミにいつまでも抱きついてて羨ましいなんて思ってない。ヤキモチなんか妬いてもいない。


 リミもバカ姉たちの発言で顔を真っ赤にしながらもこちらを上目遣いでチラチラと見てきている。


 なんだその仕草、めちゃくちゃ可愛すぎるだろ……


 あぁ、もう、からかわれてばっかでいられるか!

 

「おい、そこのバカ姉二人。早くリミをこっちに渡せ。渡さないならここに置いてくぞ?」


 少し睨むようにバカ姉たちを見る。すると「「うわー、大人げなーい」」などとニヤニヤ顔のまま言ってきた。そうか、そっちがその気ならこっちにも考えがある。


 おれは少し黙り込み、そのあといい笑顔で姉さんたちに近づいた。姉さんたちはビクッ!と体を一瞬硬直させた。その瞬間を見逃さず、おれはリミを奪い返すとそのままポカンとしたリミをお姫様抱っこしゲートを発動させる。ゲートの発動を見て姉二人は「「ちょっ、まっ————」」と言っていたがそんなもんはスルーだ。


 おれを散々おちょくった罰だ。少し反省してろ。




「おかえり、ゼットご苦労だったな」

「ゼット君、よく無事に戻ってきたね。お疲れ様」


 ゲートでマハトの部屋まで戻ると、父さんとマハトのおっさんが声をかけてくれた。父さんはおれの後ろを不思議そうに見ている。


「ゼット。イクスやエールはどうした? 一緒に帰ってきてはいないのか?」

「まさかとは思うが、何かあったのかね?」

「あー、ウザいから置いてきた」


 おれがそう言うと父さんは、はぁぁぁぁ、と深いため息をついた。解せぬ。


「ゼット君? お姉さん二人を置いてきたって? 一応あそこは敵地なんだよ?」

「大丈夫ですって。あそこに姉さんたちをどうにかできる奴なんて居ないし。そもそも、多分ですけど全滅させてきたんで」

「はぁ、またお前は色々とやらかしたんじゃないだろうな……とりあえず二人からも話を聞きたいからゲートを開いてやってくれ」


 えぇぇぇ。もう戻すのかよ。まだ数分しか経ってないし全然反省させられてないじゃんか……


 そう思っているとお姫様抱っこされたままのリミがおれの服をクイクイと引っ張て来た。


「ん? リミ、どうした?」

「お姉さまたちを戻してあげて。意地悪しちゃダメだよ」


 じぃーーーと言わんばかりの目で訴えかけてくる。


「はぁ、リミが言うならしょうがないな」


 そう言ってゲートを発動させる。すると発動した瞬間、バッと黒い影が二つ勢いよく出てきた。出てきた影は少しきょろきょろし、おれを見つけるとキッと睨みつけてきた。


「よくもあんな場所にいたいけな美少女の姉を置いていった。お姉ちゃん悲しい。しくしく」

「ほんとだよ! 大好きな弟がグレてお姉ちゃんは悲しいよ! これは今度のデートの時に目一杯甘やかしてもらわないとだよ!」

「ハハ、おれよりも実践慣れしてるイクス姉がいたいけなとか言ってんじゃないよ。あと、嘘泣きすな。バレバレなんだから。エール姉も、おれはグレてないから。これが素だから。デートの件は落ち着くまで保留。てか、デートじゃないし、出かけたとしても甘やかしたりはしないよ」


 未だにブーブー言ってる姉二人は放っておいて、父さんたちに今回の事件の顛末を話す。奴隷商人が魔人族だったこと、魔人族と人間族のハーフだったこと、ギーリッヒたちが謎の魔法で化け物に変えられてしまったこと等々。あれからも魔眼で解析したことを天啓で思考しているが、難航している。


「にわかには信じられないことばかりだな。そもそも魔人族が領地を離れてこの国まで来ていることもあり得ないことだ。それに魔人族のハーフなど今まで聞いたこともない」

「そう、じゃな。ここ数百年は、魔人族が人の地に足を踏み入れるなどなかったこと。しかし……」

「マハトの考えている通りだろうな。数百年、下手をすればそれより前からこちらに入り込んでいた可能性もあるな」


 先ほどまでの人の良さそうなおっさんではなく国王としての顔になったマハトの疑問に父さんがそう答えた。


「ゼット、それにイクスやエールも、その場に居たお前たちはどう感じた? やはりそのアルムという奴はなにか特別だったか?」

「あたしたちには正直、何が何だか分からない内に話が進んでいって……だけどゼットのことは詳しく知ってたみたいだよ。天才であり天災、鬼才であり奇才なんて表現してたから」

「そうだね。そもそも、ゼットが一人で戦闘も敵との会話も引き受けてくれてたから。詳しくは何とも言えない。でも、あのアルムっていう魔人からは少しゼットに似てるようなものを感じたよ~」


 勘なんだけどね。とエール姉は言った。イクス姉もその感想は一緒らしく、父さんの視線に対して頷いた。


 これまで、一緒に暮らしていてなんだかんだ、ずっと見てくれてた姉と相棒でもあるアンとラディーが同じことを言う。おれのことをしっかりと理解してくれてる人たちがそう言ってくれるんだ、おれと同じ異世界からの転生者?もしくは近しい存在を疑うべきか。


「そうか、二人の意見はわかった。それで、ゼットはどうだった? 敵と会話した感じや戦ってみて何か感じたことはないか?」

「話した感じはただの愉快犯とか恨みや憎しみだけで動いてるやつじゃないのは分かった。明確な理由や目的があると思ったな。まぁ少しは私怨が入っているかもしれないけど。だけど、それは自分の考えというよりも……」

「まさか……そのアルムという奴よりも上の存在がいるかもしれないというのか? アルムに指示している人物がいると?」


 マハトのおっさんが絞り出すような声でそう聞いてきた。


「ああ、その可能性が高い。それに前に見せてもらった資料の書いてあった名前の数。異常なくらい数が多かっただろ? その事からアルム以外にも魔人族が混じっている可能性もあると思っている。あの数の人間を操るには相当な人数が必要だろう。なにやら新魔法の実験もしてたみたいだし……」

「そうだろうな。規格外な存在が一人いたのだ、複数いると仮定したほうがこちらとしてもいいだろうな。シフォンベルクでもそれは探りを入れていこう。それで、戦闘面のほうはどうなんだ? お前が簡単に負けるなどとは思わないが、相手は魔人族だ。しかも、聞いたこともない人間族の血を引くハーフだという。まさかとは思うが、既に転生者としていることも考えられる」


 父さんがおれのもしもの意見に同意してくれる。流石は一国の王だ。瞬時の状況判断に仮定の話でも可能性のあるものに対しての疑いに余念がない。


 それに、転生者か……


 たしかに自分が異世界転生者だという事は覚えていたが、人間族が唯一、魔法での転生を行うことができるの忘れていたな。ほかの種族は転生という概念が存在しない奴らもいるみたいだし、中には種族のみが使える転生方法があるらしい。奴が人間の血を引いているのなら可能性としてはあり得るのか……


「戦闘面については正直、普通に戦ったら五分五分、下手したらそれ以下の可能性が高い。相手の能力がまだ分からないのもあるから何とも言えないけど……おれの攻撃を防ぎ切ったからな」

「普通に? 普通以外の戦い方があるのかい? ゼット君」

「まあ一応。普通じゃないやり方なら八割は約束できる。ただ、アルムの上に居るかもしれない存在がどれほどか分からないから油断できないけどね」


 マハトのおっさんの問いに対して少し曖昧に答える。それで察したのかイクス姉とエール姉、未だに腕の中のリミが少し青ざめる。まあビクビクしてるところ悪いけどあれはまだ普通だ。あれ以上になるってことは、そもそも戦う相手が人ではない。神や魔王をもしかしたら相手にするかもしれないと思い、その時のために封印してる技だ。


 神格級、もしくは伝説級に対して有効打になるであろう禁忌の技……


「それに、それとはまた別に準備してるものをあるから」



 そう言ってリミを腕からおろして少し離れさせる。少し離れるのを嫌がっていたが、頭を軽く撫で我慢してもらい姉さんたちのところに行ってもらった。


「さて、これがおれの準備してるものだよ」


 そう言って魔法陣を幾重にも展開する。魔法陣の光りが止み、その中から出てきたのは様々な魔道具の他に異様なオーラを放っている棺桶のようなものが七つあった。

読んでいただきありがとうございます。

加筆修正をいたしました。

感想、ご意見、誤字脱字報告お待ちしてます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ