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~異世界で輪廻転生~  作者: ぽん太
第二章~グランファスト王国奴隷解放編~
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戦闘

 目の前に現れたのは、異様な雰囲気なのにどこか気品のあるオーラを醸し出している、そんな長身の男。


 ギーリッヒの傍に突如として現れた黒いフードを被った男はこちらを一瞥するとギーリッヒの方に視線を移動させた。


 こいつ、気配もなくそこに現れた?どういうことだ……転移魔法を使えばおれの魔力感知に引っかかるはずだし、元からこの場に居たのなら姉さんたちが気づくはずだ。そうじゃなくても、おれが入る前に魔眼で視た限り反応がなかった。


「ほぉ、これは素晴らしい。ギーリッヒ様たちを強力な催眠で意識を失くしたのですか。とてもじゃないが皆さん、このような強力な魔法が使えるようには見えないのですが……どなたがこれを?」


 そう言って、こちらにまた視線を向けると「あなたですか?」とおれや姉さんたちに聞いてきた。なぜか、リミには聞かなかったが、隣で身体を震わせながら辛そうな顔をして俯いているのを見て確信した。


 このフードの男がリミを拾ってこのギーリッヒの糞野郎に売りつけた張本人なんだろう。


 なぜ、今、このタイミングで、どんな方法でこの場に現れたかは分からないけど、こいつにも色々と聞きたいことがあるしな。そう思いながら異空間からシュヴァルツ&フラマを取り出し、みんなの扉の近くまで下がらせると、一歩前に出た。


『ゼット、油断しないほうがいいわよ。こいつかなり強いわ。明らかにあなたの姉たちよりも強い。普通に相手するには少し辛いわね。それに————————』

『あぁ、アンも感じたみたいだが、このフードの男から俺たちに近い何かを感じる。俺たちと同等の何かを宿しているのかもしれん』


 精神世界からアンとラディーがそう伝えてきた。


 一筋縄ではいかないと思っていたが、まさか二人がそこまで言うとはな。姉さんたちでも勝てないのは疲弊してるからなのもあるだろうが、そもそもが戦闘向きじゃないからだ。それでも並大抵の奴なら瞬殺できるんだが……


 そもそも、この二人はおれの実力も、隠してある〝とっておき〟も知っている。それなのに、気をつけろと言ってきたってことは、相当手ごわい相手なんだろう。


「ふむ、なにやら見たこともない珍しいものをお持ちのようですねぇ。なにやら物騒な気配はしますが……そんな物騒なものを取り出して話しをしようというわけではなさそうですね。それに異空間収納ですか、まだお若いのに使いこなせるなんて凄いですね」

「この状況でまだそんな余裕があるのか。ただの奴隷商人ではないと思ってはいるがお前は何者だ? なんでここに来た?」


 未だに余裕を見せるフード野郎にシュヴァルツ&フラマを向けて問う。こういう相手は何をするかわからない。アンとラディーが警戒している以上、おれも最大限注意を払う。このフード野郎に天啓も警告を鳴らしている。


「いえいえ、僕はしがない商人のアルム・レヒトと言うものです。お得意様であるギーリッヒ様との連絡が取れなくなったので心配になって来てみたのですよ。そうしたら屋敷内からは人の気配がなくこの部屋に急いで来てみればギーリッヒ様は催眠状態にあり、あなた方のような子供がいるではありませんか。こちらも質問です。あなた方は何が目的でここに? 軍属ではないでしょうし、もしかしてそちらの奴隷のことで?」


 この世界には遠距離用の通信手段は確立されていない。おれの創った通信機以外には。だがこいつはギーリッヒと連絡が取れないと言った。何かしらの連絡手段がある? そもそもここにはどうやって気づかれずに入った。魔眼にも感知されずに天啓すら警告を出す相手。


 ありえないことだが、唯一、考えられるのはおれに感知できない魔法、もしくは————————


「魔人族……なのか?」


 この大陸のはずれにあるといわれている魔王領。そこにたくさんの魔人族が暮らしているとされている。魔人族は非常に好戦的で、争いを好み、魔力だけでなく純粋な力も強い種族。いわばこの世界で最強の種族と言ってもいい。


 大昔に自分たち以外の種族にに対して残虐な戦争行為を繰り返し、その結果、亜人族、人間族の連合軍との戦争によって負け、僻地へと隔離されたとされている。その魔人族であるなら色々と説明がつく。


「大昔のことだし、古い本でしか見たことはなかったからこれが正しいのか分からないが、お前が魔人族なら全部説明がつく。おれの感知できない魔法も、その異様なオーラもなっ!」


 パンッ!


 そう言いつつ、構えていたシュヴァルツ&フラマに魔力を込めて魔力弾を放つ。高火力にして正確無比の二つの魔力弾がアルムの頭を襲う。



「やれやれ」



  アルムはそう言うとため息をつきながら右手を前にかざした。すると、魔力障壁が展開され、ガキィィンッ!という音をたてながらおれの魔力弾を防いでいた。


(こっちも全力じゃなかったけどそれでも簡単に防ぎやがった。ある程度の大型の魔物なら一撃で仕留められるスピードと威力だぞ。それに魔力障壁がしっかりと起動していたな……やっぱりおれの力と同等かそれ以上みたいだな)


「随分といきなりですねぇ。もう少し落ち着いたらどうですか? こちらの質問にも答えていただかないといけませんし……できる限り手荒な真似はしたくないんですが……」


 この野郎、ふざけやがって。手をさすりながら「痛い、痛い」とか何言ってんだ。普通ならその程度で済む攻撃じゃないんだぞ。


 だけど、これでこいつが魔人族であることが分かった。あいつが障壁を展開したときに魔眼と天啓でなんとか解析した結果、魔力の質が魔人族のものと一致した。こっちには魔王様がいるんだ、魔人族のデータは十分ある。


「随分と簡単に防いだな。それにその魔力……魔人族のものだな?」

「そうですね、あまり隠すようなことでもありませんし……なにより天才であり天災。鬼才であり奇才であると言われているゼット・シフォンベルク様に隠し事は無駄でしょう。いやはや、その若さで我々魔人族の魔力を覚えているとは……どれだけの経験をしたら、そのような異常な成長をするのやら。しかし一つだけ勘違いしていますよ。わたしは魔人族と人間族のハーフです」

「————ッッ!!」


『そんな……』


 アンが信じられないといった声を出している。当たり前だ、亜人族や竜人族との混血児ですら珍しい中、まさか魔人族とのハーフだったなんて……


「簡単には信じられないでしょう。それも仕方のないこと。本当なら説明して差し上げたいのですが……しかし、今はあなた方を相手にしている暇はないのでここは一旦、退かせてもらいますよ」

「そんなことさせると思って————」

「まぁ、いずれまた会うこともできるでしょう。今回はこの方たちにしていただきましょう」


 そう言うとアルムは左手をギーリッヒたちに向けた。するとギーリッヒたちの足元から魔法陣が展開されまばゆい光が襲ったあと出てきたのはギーリッヒたちではなく、人の形をした、なにか、だった。


「——————ッ! な、んだ、こいつは?」

「ふむ、やはり失敗ですか。まあ元の質が悪かったから仕方なしですが……データは取れましたし帰るとしましょう。それではシフォンベルクの皆様方、またお会いしましょう。ですが、一つおせっかいを焼かせていただきましょう。その奴隷の娘は捨てたほうがいい。いくらゼット様でも、人の身には余るものですよ、それが持っているものは……」

「待て! それは、どういう————————」


 それだけ言い残しアルムは転移してしまった。


「クソッ、逃がした。あの野郎説明もせずに意味わからないことばっか言いやがって……それになんなんだこいつらは。明らかにやばいだろ」

『魔法で弄られているのは確かだな。しかしこんな魔法、俺でさえ知らないぞ? 魔人族はこの数千年の間なにをしてきたというんだ……』


 ラディーがそう言ってきた。最古の竜であるラディーが知らないなら、新しく生み出された魔法なんだろう。魔人族にもおれのようなイレギュラーな存在がアルム以外にも居るんだろうな。おれは魔眼と天啓を可能な限り使いデータを取る。



 とにかく、いまはこの化け物どもを始末して屋敷から出るしかないな。あとのことは全部終わらせてからでいいな。化け物どもは「グルルル」と唸っているだけでこちらに攻撃をしてくる気配がない。


 このチャンスを逃さない!


「姉さんたち、魔力は?」

「ごめん、あたしは無理」

「わたしもだよ~。流石に数日間使ってたからね、もうスッカラカンだよ~」

「分かった。それじゃ二人で障壁だけ張っといてくれないか。衝撃はあんまりいかないと思うけど、ちょっとだけ危ないから。リミになんかあったらまずいし」


 そう言ってシュヴァルツ&フラマを異空間へ放り込むと、元ギーリッヒたちの足元に魔法陣を展開させる。久しぶりにこれを使うな。あの二年間の修行の日々で完成させた消滅の魔法。間違いなく人間相手には使えない技。



「すぐ楽にしてやるからな……消え失せろ。 〝滅葬〟 」


 魔法陣から黒い球体が出現し元ギーリッヒたち飲み込んでいく。化け物となったギーリッヒたちは声を上げることも叫ぶことも出来ず球体に飲み込まれていき跡形もなく消滅した。


「ふぅ、とりあえずは上手くいったな」


 滅葬で魔力を思った以上に消費したせいで身体がだるい。やっぱこれは使いどころが難しいな。まぁ、だからこそ魔道具を創って戦闘面を楽にしようと思ったんだけど……


 よし、疲れたしさっさと帰ろう。そう思い後ろに振り向くとポカンとした顔をした三人の女の子がいた。


 やばっ、自重すんの忘れた……






読んでいただきありがとうございます。

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