力の一部を見せると
扉を開け、謁見の間に入る。
目の前には、大聖堂の大広間ほどの豪華さはないがそれでも流石はこの国の王家と言えるほどの広さと華やかさを兼ね備えた部屋がある。
「待っていたぞ。ゼットよ」
その空間の中でも一際目立つ椅子、玉座にはいつも通り父さんがいた。隣には母さんもいて、そのすぐ近くには爺やも待機していた。
そしておれは父さんの前までいき、跪く。
「陛下、お待たせてしまい申し訳ございませんでした」
そう謝罪する。いくら親子だって言っても立場上、謝っとかないと後々うるさいからな。まぁこの雰囲気じゃ謝ったところで無理なんだろうけど。
「ふん、お前に期待などはしていなかったが些か遅すぎるのではないか? シフォンベルク家の息子としてこのくらいのことは簡単に対処してもらいたいがな。昔からお前はやる気というものが見受けられないからな」
ほらな、やっぱガミガミと説教をはじめたよ。イサムやソロモンがいる前でも関係なく説教するのはやめてほしい。
隣では母さんが何とも言えない、外には絶対に見せれないような顔している。というか、あの顔絶対にキレてるよ。父さんがおれに対してこんな風な態度をとってからというもの夫婦仲が悪いらしい。おれの事でよく喧嘩しているのを聞く。
「アナタ、それくらいで。ソロモン君やイサム君も居るのですからやめてください」
「おお、二人も来ていたのか。ご苦労であったな。この愚息の付き合いをさせて申し訳ないな」
この人はいつもソロモンやイサムには普通に接する。この二人や姉さん、兄さんにも普通だ。特に姉さんたちには溺愛している。つまり、おれだけにこんな態度を取っているということだ。
やっぱり、アンやラディーの言った通りなのかもしれない。
「それで、ゼットよ。お前の転生元はなんだったのだ?」
父さんは二人と軽く話していたが、話を切り上げてこちらに向き直る。さっそく聞いてきたな。
『こういう人なら私の力はまだ見せないほうがいいかもね。あなたの計画とやらの時にでも見せれば余計にインパクトも出るし。私の力はちょっと特殊だから。なによりラディーだけでも十分異常よ』
『それもそうだな。だがおれの力は竜人と言っておけ。それなら希少ではあるが、居ないわけじゃないからな。少しは抑えたほうがいいだろうしな』
そっか。わかったよ、二人とも。
「はい。僕の転生して得られた力は竜の力です。僕の転生は竜人が基となっているようです」
そう言っておれはドラゴンの翼とラディーの魔力を纏う。
「—————— ッッ!! そうか、やはりお前は希少種であったか。異常な力のもとには異常な力が集まるのか」
「あら、綺麗な青いオーラね。流石はゼットね!」
まぁ、本当は破滅のドラゴンさんなんですけどね。てか、母さんと爺やにはあとで教えないとだけどな。隠しててもすぐバレるし。今も若干、爺やの目が細くなったし、母さんは少し興奮気味だし。
おれの紹介が終わると父さんは次はソロモンとイサムのを聞いてきた。
父さんは二人の時には「ほう、この力はすごいではないか。これでお前たちの両親も喜び安心するであろう」と嬉しそうに言っていた。ハハ、おれには絶対言わないセリフだな。
それに父さんの態度やアンたちの一言で確信した。あの人はおれに恐怖しているんだ。おれが力を解放した時、あの人の目は少しだけど恐怖の色が見えた。だからこそ、おれへの態度や扱いが冷たいものだったんだな。
前々からは考えていたことだが、このままこの家に居てもいいことがない。父さん以外の家族やしようにんのみんなとも仲がいいし親友も居る。だけど、やっぱり父親と仲良くできない、家族の一人と仲良くできない場所にはいたくない。
それなら、おれは今を捨てでも自由を手にするために家を出よう。そのことをみんなに認めさせる為にはまずは完璧に力を使いこなさなきゃいけないな。これからはトレーニングもしなきゃいけないし、今まで以上に知識も必要になるだろう。生活スキルは昔の知識があるから大丈夫だろうし。なによりも二人の力が必要だな。だから……
力貸してくれよ。アン、ラディー!!
『もちろんよ。私はあなたのためにここにいるのだから、あなたの願いや望みは私のものでもあるんだから。遠慮なんかしないで』
「俺もだよ。お前のためならなんだってしよう』
おれを大切なものだと必死に言ってくれるアンと短い言葉でもしっかりと気持ちを伝えてくれるラディー。正反対のような二人だが、おれを大切に思ってくれてるのはすごく伝わってくる。
ありがとう。二人とも。
全員の報告も終わり、謁見の間から出る。部屋から出ると少し話をしてソロモンとイサムは自分の家と帰っていった。まぁ、おれが転移で送ったんだけどな。おれも二人の家から自室に戻ると、おれの部屋にはすでに母さんと爺やが待っていた。
おれ今日はも疲れたから早く寝たいんだけどなぁ。母さんたちにはちゃんと話そうと思っていたけど明日にしたかったんだよな。
でも、妙なプレッシャーをガンガン放っている母さんからはきっと逃げられないんだろうなぁ……
はぁぁぁぁ……
憂鬱だ。
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