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~異世界で輪廻転生~  作者: ぽん太
第一章~成長そして旅立ち~
10/42

最初に

 転生の間。この言葉を幼少のときに聞いたときおれは某ゲームをプレイしてることを思い出した。その場所に着くまでに必死になってキャラクターのレベルを上げた。そしてついに念願の転生をしたときは感動で胸がいっぱいになったことを今でも覚えている。


 過去の思い出とし心に残っている転生の間という場所は先ほどの大広間に比べると随分と古く、石やレンガのようなもので造られた殺風景な場所だった。はっきり言って国の重要な場所としてはダメだろって思うけど、おれ的には昔懐かしのあの日本での日々の思い出で、ある意味で期待通りの場所である。


「ここが転生の間なのか?」

「えー、ここがそうなのー? さっきのとこに比べるとさー、随分と簡素というかみすぼらしいというか……」


 ソロモンのつぶやきに、イサムが言う。ねぇ、なんでそんなことを言っちゃうかな?空気を読もうよ、そこはさ。仮にも御三家って言われてるとこの息子なんだからさ。


「はぁ、おまえらはいちいち声がでかいよ。もう少し言葉を選べって。ここはこの国にとってはとてつもなく重要な場所なんだぞ」

「ハッハッハ。たしかに大広間に比べたら何もない場所ですからな。そう言うのもわかりますよ」


 おれが心底呆れた声を出すと、サンタロスが笑いながら言ってきた。なんでも、みんなここに入ってきた奴らは大広間の歴史的価値の高い品々や光り輝く装飾品の数々を見てきたせいで転生の間に対しても過度な期待をしてそのような態度をとるのだそうだ。


 そう、たしかに何もないのだ。ただ部屋の真ん中の床に大きな魔法陣が描かれているだけのあまりにも殺風景な場所。あたりを見回すけどそれ以外には特に何も見当たらない。


 しかし……


「なんも無いのに、なんでこんなに張り詰めた空気なんだ?」

「たしかにー。なんかピリピリしてるんだよねー」

「ここはこの国がまだ小国だった頃、遥か千年前よりある歴史のある場所なのです。ですから、若たちのようにある程度力のあるものはこの場所から出る魔力を知らず知らずのうちに感知してしまうのです」


 そういうことか。おれたちは謎の魔力を感じていたと。ある意味、どんな強敵よりも怖いな。姿の見えないもののプレッシャーを感じるなんてな。


「それでは魔法陣の中央にお一人ずつ入ってください。魔法陣の中に入りましたらご自身の魔力を少しずつ魔法陣に流し込んでいってください。そうすることにより前世の自分の魔力がこちらに流れ込んできます。

 それを今度は体全体に送るイメージで吸い上げてください。そうすることにより、過去と現在の魔力が混ざり合います。その時に過去の自分の記憶の断片や能力の一部、他の種族や生物であれば体の一部などを受け継ぐ場合があります。それが転生と呼ばれるものであり 〝ブースト〟 と呼ばれるこの国の誰もが覚える魔法でもあります」


 それは、前に爺やに聞いたことがあるな。そして異世界転生者である、おれはどのような結果になるかわからないとも。過去に数回、異世界転生はあったらしいが詳しいことはどの文献にも記載されていないからだ。


 さて、どうなることやら。


「じゃー、最初は、ぼくからだね」


 そう考えているうちにイサムが魔法陣の中に入っていった。イサムの家系は代々、炎、火の鳥、不死鳥といったものが出てくることが多いらしい。


 なので代々転生前から火の魔法は得意なのだ。しかし、イサムは火の魔法が苦手で父親から出来損ないという扱いを受けている。この転生でそれが払しょくされればいいんだがな。


「ふぅー。よしっ!」


 掛け声とともにイサムの魔力が魔法陣へと流れていく。魔力を吸った魔法陣が少しずつ青白く光っていく。そうしていると魔法陣からイサムへと魔力が流れていくのが見えた。


 イサムの中に過去と現在の魔力が渦巻いて溶け合っていく。ドクンッ!とイサムの中で混ざり合った魔力が鼓動を鳴らした。それは新たな生命が誕生したようなそんな感覚にさえなった。


「すげえ、まるであいつの中に新しい魔力が生まれたみたいだ。しかも完璧になじんでる」

「ああ、感知が得意ではない俺にもわかる。凄まじいほどの質量の魔力だ」


 イサムのことを昔から知っているおれたちでさえここまで驚きを隠せない。それほどまでに魔法陣の中に居るイサムの魔力が変わっているからだ。明らかに異質。少なくとも魔法陣に入るまでとは別人のようだ。


「もうすぐ転生が終わります」


 サンタロスがそう言ってきた。もうすぐ転生者としてイサムが生まれ変わるんだな。期待を胸に抱き魔法陣の方に目を向ける。


 すると一際大きい輝きを放った魔法陣の光が消えると魔法陣の中央には背中から炎の翼を二枚生やしたイサムがそこに立っていた。その姿は伝説のフェニックスを想像させるほど神々しいものだった。

読んでいただきありがとうございます。

加筆修正をいたしました。

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