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裏切ったと思ってたから…

初期作の再編に違いかもしれませんがどうかよしなに

勇者が魔王を倒し、正しく聖女が選ばれ人の世に平和が訪れた数日後から、この物語ははじまる。


「それでは、お役御免と言うことで」


王都から遠く離れた祠の守護者が一人役目を終える事とした。


聖女着任と同時に、機能の大部分は失われたため既に祠は管理を必要としていない。


楔とされていた各地の守護者も直に本来の歩み取り戻していくだろう。


「まぁ、オレは代理のイレギュラーでしかないけどラッキーだったな」


巫女は半透明な体を見下ろし呟く。


本来ならば、短期間ないし複数人が交代で一つ所の守護者をするのだが、置き去り同然に取り残され、一人で強い力にさらされ続けた結果、肉体がソレに適応し精霊体と呼ばれる存在に変換されているのである。半実体程度であるが精霊体ならば、外敵から身を守るのは生身よりも容易で、肉食の獣に襲われる事はまずない。


実益を兼ねた苦行の果てに得たこの力がチートだった。


力が溢れてくると言った物ではないが、冒険者にでもなれば、兵士なんかよりウッハウッハに儲かるのは間違いなかった。


年単位は人が来ていない祠の周りは道など存在しないが、魔物が闊歩する時代に外にいても精霊体なら安全が保証されている。

虫にもさされず雨の中でゴロ寝で野宿だってできてしまう。


しかも、霊装を使えば攻撃も可能である。


本来の守護者は巫女の役目故に武にたけた者はいないし、精霊体になるまで追い込まれる事もないのだが…。

普通であれば、護衛もなく一人で帰るのは到底不可能な状況であるが、上官と守護者に一時の代役を押し付けられただけだった身としては運良く肉体まで適応出来、文字通り人柱にならず勤めあげた自分を褒め称えずにはいられない。


たとえ守護者に選ばれた者であっても人柱になることは避けられない危険な役目で、守護者に選ばれた少女以外が、祠にとらわれれば文字通り人柱となるしかない危険な行為だった。


では、それがわかりながらどうして祠に一人残ったかなのだが…。


誰の目でもわかるほど、守護者に消耗が激しかったとしか言いようがない。


“気休めにしかならなくとも”と、当時の少年に思わせるくらいだ。


故に、数日間ならばと代役を引き受けた。


人柱らしく自我を失っていくなが安請け合いを後悔し、後悔が半ば恨み節に変わる頃に精霊体となる最適な能力に適応できただけの話である。


そんな過酷な経験のせいで、守護者に対する同情の念はきれいさっぱり消えていた。それこそ悪霊にならなかっだけましで、どうやったら連中を見返せるかを物思いに耽るかのような姿で思案する程度には落ち着いた。

心底病んだが、いつしか普通に生活している女子の姿か、行き着くとこまで行って夜中に手ぶらでトボトボ帰ってきた英雄の語られぬ苦難の歩み。


恨み節すら人は完全なる孤独では一切何も出来ない、つまりは“考えても生産性のない事は諦めた方が楽”そうゆう方向に思考が突き抜けれたから適応できたのかも知れないと当人は考えている。


ただ、悟りを開いた賢者でもない若者だ。当然ながら、くすぶるものは、わだかまりなくしっかりくすぶっているのはしかたないと、過去は水に流しその上で意趣返しだけはするつもりとすっかりタチが悪い性格になっていた。


今の彼は絶望から、意気揚々とやる気に満ちていた。


精霊体は相応しい霊装と女性的な特徴が目立つが、元々は15になったばかりの新米兵士。


体力と走り込みには自信があったが、精霊体は疲れを知らないが精霊体を維持するだけの力が切れれば肉体にもどる。


そして、一度精霊体になった者は寝ればまた精霊体になれるようになると彼は理解している。彼は、生身の肉体より安全な精霊体の間に人里に近づけるよう走り出した。


隠すべき入口を塞が無かったのは、本来の居るべき守護者達への意趣返しである。

彼が生身で王都入りし、問答無用で事務員に退職届を叩きつけた後、実体のない巫女が王都の方向に走り去る噂が遅れて流れてきた。


とうに本人は新たに冒険者として世間に紛れ込んた後であったが、各地の祠に巫女の安否確認の為に人が送られ、神殿に帰ってきていた元守護者の一部と、縁ある貴族の不正があきらかになり、文字通り一掃された事を知った彼は、たった一人の守護者しか送られず、悲劇のヒロインになりそこねた砦の巫女と巻き込まれた祠の関係者に、僅かながらの同情を交えつつも“ザマァ”と満足そうに呟いた。



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