エピローグ
一ヶ月後。
新和情報㈱の本社ビルに賢介の姿があった。
復帰初日の賢介がこれから営業に出るところだ。そこへ、銀行から帰ってきた経理課長がいた。
「おい、速水。もういいのか?」
「課長、私がいつまでも休んでいちゃ、会社の資金繰りが困るでしょ?今月もガンガン契約を上げますからね」
賢介が笑顔でいった。
「我が社の業績に影響が出るくらいの成績があったのならな」
と、厳しいツッコミを入れる経理課長。
「かちょ・・・・・。これから営業に廻るって時に、テンション下がりますよ~」
その賢介の目の前を、大きな荷物を抱えた二人が横切る。
「おお、ごめんな」
声を掛けたのは、9号だった。
8号・9号は新和情報㈱の下請けである運送会社で配達の仕事をしていたのだ。
「ハッチャン、キュウチャン!伝票、忘れているヨォ~!」
事務室から飛び出してきたのは、伊緒であった。
伊緒はその類まれなる頭脳を持って経理事務の仕事をしていた。
「伊緒って役に立つでしょう!」
賢介は経理課長に、自信満々で言った。
そこへ、伊緒がやってきて、賢介に賢介担当の取引先の未回収の明細書の束を出した。
「ハイ、賢介。全部で五件あるから。早く集金お願いね」
「えっ・・・・・」
明細書を受け取る賢介。
「本当に役に立つよ」
経理課長は賢介の肩を叩いてニヤリと笑った。
賢介は肩を落としながら営業に出た。
「賢介、いってらっしゃぁぁい」
伊緒は手を振りながら、いっぱいの笑顔で見送った。
そして、その笑顔が溢れる遥か上空で、コスモ22は、宇宙を漂っていた・・・・・。