プロローグ
22世紀半ば。
人類の科学技術の進歩は、21世紀と段違いの変化を遂げた。特に生物における分野は、医療を中心に大きな発展を遂げ、今や国民の平均寿命は百歳を超えていた。高齢化社会については、50年も前に対策および環境が整っており、サラリーマンの定年も近年に至っては75歳まで引き上げられている。これは、壮年といわれる世代の病気死亡が減ったことと、年金の資金不足・少子化問題を一挙に解決するための政策であった。
一方、少子化とはいえ、平均寿命が延びたことにより、世界人口は増加していた。そこで、新しい問題が起きていた。人口が増加し各家族化が進み、熟年離婚が増え始めると、住宅の需要が増加する。大きな開発事業によって農地が激減し、至る所で干拓が行われると海の生態系も変わり魚が激減した。
西暦2189年、この食糧問題を解決したのが、超高度な成長促進剤である。家畜用の急成長促進剤を、アニマルの頭文字をとって「A・TYPE剤」、野菜など植物に使用する急成長促進剤のことを、「B・TYPE剤」と名付けられた薬品によって、30年前のほぼ2倍の食量が供給されるようになった。
そして、一部の科学者は、この「A・TYPE剤」「B・TYPE剤」を素として、新しい研究に取り掛かることになる。
その研究結果がすべての始まりになるとも知らず、数年の時が流れる・・・・・。
ドォーンという地響きと共に、夜空に閃光が走った。巨大な倉庫が吹き飛び、連立する建物が次々と炎に包まれていった。
戦闘用ヘリコプターが三機、低空でホバーリングをしていた。中心に立つ少女。ヘリコプターの銃口は、その人物に向けられていた。へリコプターの操縦士が射撃ボタンに手をかけた。次の瞬間、他の二機が突然火を噴く。
― 自衛隊・中部方面隊、第三駐屯地 -
その門だけを残し、すべては一夜にして消失した。
それから、10年・・・・・