第十四章 そして運命は決した……! Ⅰ
「ふうー。前半どうにか乗り切ったか」
レガインは大きく息を吐きながら言う。勝って夢を追うファセーラの強さに内心舌を巻いていたのは否めなかった。
選手たちは奥へ引っ込んでゆき、サポーターたちは、
「後半頼むぞ!」
と声を大にして訴えた。
ドラグンと言えば。
「まだまだだな」
と言う。チャンスは何度かあったのだが、生かせない。さすがは1部にいるだけはある、と言ったところか。
「申し訳ないが、勝つのは我らだ」
そう言って選手とともに奥へ引っ込んでゆく。
龍介は試合についてゆくのに必死で、気が付けば前半が終わったと言った感じだった。
兎にも角にも、必死だった。それ以外に言葉はなかった。
(あんまり存在感出せなかったなあ)
さて監督は後半どうするか。外されても仕方がないような気もするが……。
(でも、それがいいんじゃないかな。どうもオレは……)
「後半巻き返すぜ」
リョンジェが龍介の肩を軽くたたいて、笑顔で言い。龍介も笑顔で頷いて「うん」と返すが。
「……?」
ふと、リョンジェは龍介に違和感を感じた。が、それは黙っておいた。
「龍介、なんだか背中が小さく見える」
シェラーンはぽそりとつぶやく。
「異世界の選手は、ちょっと大変そうだったように見えるけど……」
「うん、揉まれてる感じ」
テンシャンとローセスはそんな印象を語り、シェラーンは言われてぎくりとするのを禁じ得なかった。
(本調子でない?)
その理由をシェラーンなりに考えれば、この入れ替え戦の雰囲気に飲まれてしまっているのかもと、思わないでもない。
この一戦で運命が決するのである。キャリアの長いベテランならうまく対応できるだろうが、龍介はまだ若く経験も浅い。
たくさんの観客にレベルの高い試合。自分の世界での、高校選手権や地域リーグとはまるで違うそれらに順応するのに必死だった。
「あの異世界人は大丈夫なのか?」
と、わざわざシェラーンに言ってくる者もいた。さっき強いところ見たので強い態度で言ってくる者はさすがにいないが、気が気でないことは隠さなかった。
「大丈夫です。彼は大魔導士さまが魔法によってお選びになった選手なれば」
「そう信じているけど、ファセーラ強いぜ」
「私たちサポーターまで飲まれてしまえば元も子もありません。いかなることがあろうと、堂々としていようではありませんか」
シェラーンは笑顔で言い、他の人たちも、
「そうだ、我々までうろたえてしまうのはよくない」
と後半に向けて気持ちを切り替えて。シェラーンとテンシャンにローセスの顔に笑顔が戻った。




