第十三章 運命の入れ替え戦! Ⅹ
「相手の動きをよく見て、相手の嫌がることは何か見抜け!」
ルーオンがコーチングの声を飛ばす。
「相手も俺たちと同じ人間だ、弱点は絶対ある!」
とも、言った。
ボールはシェラネマーレ側のピッチを四方八方に飛んだ。
時にはダライオスとリョンジェが肩をぶつけ合い、ボールを奪い合うこともあった。
だがこの場合ダライオスは無理にリョンジェの相手をせず、すかさず逃げて肩透かしを食らわせようとする。
それでもリョンジェは迫り、目の前のボールを奪った。だが逆にダライオスが巧みに奪うこともあった。
「わああ、ボールがあっちこっち」
「前に後ろに、右に左に、行ったり来たり!」
シェラーンを真ん中に、テンシャンとローセスはゴール裏で選手たちの躍動する背中を見守っていた。
見守るのが背中だけならいいのだが、相手にボールを奪われて必死の形相で自陣に戻る様をゴール裏に見せることもある。
冷や冷やすることもあったが、前半もだいぶ時間が過ぎてゆき。ボールはゴール手前まであっちこっちするのを繰り返していた。
それは見ていて、とても冷や冷やすることだった。
何かのはずみでボールがゴールの中に飛び込むなど、サッカーではざらにある。
「ってゆーか、防戦一方じゃねーかよ!」
「なんとかボール分捕って前に行けねーのか!」
シェラネマーレのサポーターたちはやきもきして試合を見守るしかなかった。
逆にファセーラのサポーターたちは、
「行けー!」
「ゴールにぶち込め!」
と、ノリノリで声を弾ませて応援していた。
一見ボールはあっちこっちと無軌道に飛んでいるように見えるが、よくよく見ればファセーラの選手が触れることが多く、シェラネマーレの選手はそれを追ってどうにか守っている感じだった。
「あ、やべ!」
ダライオスはリョンジェを振り切り、ボールをゴール目掛けて蹴り上げ。それをルーオンが跳躍し拳で弾きかえし、ほぼ左真横へと飛び。そこにいたウォーラの近くに飛んで落ちたが、同じところにコバクスがおり。ボールの奪い合いになった。
しかしコバクスがすんでの差で先にボールを蹴り、シュートを放った。
「うわあーやべえー!」
ルーオンは着地にしくじり転倒し、すぐに起き上がるも。その間にボールは真横から飛んでくる。
がん!
という高い音がして、ボールはポールに当たって跳ね返ってゴールラインを割って外に出た。
次はゴールキックで再開、と思ったとき。
審判はおもむろに長い笛を吹き、前半の終わりを告げた。
「あ、もう終わり!?」
シェラーンは時間を忘れるほど試合に夢中になっていることに、笛によって気付かされた。それはテンシャンやローセスたちも同じだった。
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