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第十三章 運命の入れ替え戦! Ⅷ

「手強いとは思っていたが。手強いなんてもんじゃねえ。得物を目の前にした獰猛な獣じゃねえか」

「それでオレたちは、手負いの獣だ」

 近くにいたサニョンは冗談めかして言い、さほど面白い冗談でもないのに互いにふっと笑いあった。


 そうする間に相手はカウンターに備えて後ろに下がる、と思ったのだが。ディフェンダーがセンターに位置し、前掛かりの姿勢を見せる。

「下がるな!」

 ドラグンが叫んで指示を出す。いかめしい面構えの壮年の男は、

「こいつらを勝たせてやらねば!」

 と、燃えに燃えていた。


 ゴールキーパーが長くボールを持つと遅延行為として罰せられイエローカードを出されるので、ルーオンはサニョンにパスを出す。それから、龍介がこちらを見ているので、そこに向かい眺めのパスを放とうと思った。

 龍介に相手選手が迫る。ダライオスも迫る。が、リョンジェが張り付き進路妨害をする。


「邪魔だ!」

「やっと話したな」

 リョンジェは冗談めかして言う。この男、よほど無口なのか全然声を出さなかったが、話せないわけではなく性格だったのだろう。が、ダライオスは反応なしだった。


「引っかかったな!」

 サニョンはトゥーシェンにパスを出し、さらにジェザにパスを出し。センターラインを越えて、相手ゴールに迫る。

 龍介はおとりだった。そこにパスを出そうとする仕草を見せて、相手はしっかり引っ掛かってくれ。


 反対側のジェザに繋ぐようパスを出して、それはとりあえず功を奏した。ダライオスはリョンジェが張り付いたのが効いて、動きが鈍ったのは否めない。

 ファセーラのディフェンダーはしまったと思いつつ、気持ちを切り替えて真っ直ぐにゴール手前に戻った。


 同時にシェラネマーレの選手も前進した。

 最前線のジェザはゴールの前まで進出し、相手ディフェンダーがいたが、その上を飛び越えるようなループシュートを放った。

 ボールは弧を描いてディフェンダーの頭上を飛び越え、ゴール目掛けて落ちるが。ゴールキーパーのフォザンは動かない。


「ああん?」

 なんでだと不思議に思えば、ボールはバーの少し上を飛び越し、ネットの上を滑るようにして落ちた。フォザンにはそれが読めていたのだ。

「何やっとるんだ!」

「まあまあ。相手も必死ですからな」

 相手にシュートを放たれて憮然とするドラグンをコーチのアルカドがなだめる。


 落ちたボールをボールパーソンの少年が拾い。もう一人の少年が別に用意されていたボールをフォザンに渡す。

「ありがとう」

 渡されたフォザンは笑顔で頷いて謝意を伝えた。

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