第十三章 運命の入れ替え戦! Ⅵ
前には誰もいない。大きな壁のように、ゴールを守るフォザンが仁王立ちしている。
「来い、何度でも弾き出してやる!」
足を踏ん張りシュートに備えた。
距離を見誤り近づきすぎれば、オフサイドになって試合を止められる。そうならないため、龍介は相手陣の中ほどでミドルシュートを放った。
左足で蹴られたボールは回転をせず、まっすぐゴールに向かって飛んだ。と思ったが、ゴール手前で右に軌道を変えた。
フォザンはそれを読んでいたかのように跳躍して腕を伸ばてボールの前に飛び出し、掌で打って弾き出そうとした。
しかし、ボールの勢いは思った以上にあり、掌が持っていかれそうな衝撃を受け、腕が後ろに下がった。
「しまった!」
ボールは弾き飛んだが、真横で。コーナーポストを直撃し、あろうことか龍介向かって跳ね返って飛んだ。
龍介はボールを回収しようと駆け、その間に両チームの選手がゴール手前に駆け付けて。
龍介がボールを回収しようとした矢先、突然つま先が見え、ボールをかっさらわれてしまった。
「また、ダライオス!」
シェラーンはテンシャンとローセスと一緒にうめいた。
なんと巧みな選手だろうか。
「気配を感じなかったのに!」
ダライオスはボールの動きを読み、かつ相手の視界に入らないように動いているようだ。
ダライオスはボールを無駄に持つことはせず、手近な仲間にパスし、それがまたパスされる。
無論ギャロンやトゥーシェンたちも奪い取ろうとするのだが、巧みに選手間を縫い、細かなパスでボールを転がし。
いつの間にかセンターラインを越えて、シェラネマーレのゴールに迫る。それを追ってリョンジェたちは急いで戻る。
「すごい」
「伊達に優勝してないわね……」
テンシャンとローセスはファセーラの選手たちの動きのキレを見て、唖然とした気持ちに襲われる。
「2部といっても、勝ち方を心得ているから勢いがあるのね」
シェラーンは呻くように言う。さらに言えば、
「目の前に昇格があるんだから、なおさら力も出る。夢を追う者は、ほんとうに強いわ」
と続けて。テンシャンとローセスは息を呑みながら頷いて、改めて。
「シェラーネマーレ―ッ!」
声を張り上げて声援を送った。
ボールは、シェラネマーレ陣の中ほどにいたったオッドアイのニッケに渡って。リョンジェたちディフェンダーも戻り、ボールを奪い取ろうと迫る。
だがそれらを無理に抜けようとせず、少し後ろのダライオスに渡した。そこからすかさず、左サイドのミッドフィルダーの選手に渡され、少しドリブルで前に進んだ。




