第十三章 運命の入れ替え戦! Ⅴ
ツートップのコバクスとニッケが駆けて前に進み出る。リョンジェたちディフェンダーが守備のため下がる。
その間にミッドフィルダーのギャロンたちがダライオスからボールを奪おうと足を延ばすが、巧みなボールさばきはまるで、ボールが足に吸い付いているかのように離れず。そして奪えず。つま先の上を憎たらしいほどのわずかの差で飛び越えて、逃げられてしまうのであった。
「くそお、来やがれ!」
ルーオンは意を決して構えた。ダライオスは相手陣の真ん中まで来て、コバクスとニッケはゴール手前ペナルティエリア内に入った。
ボールは前のコバクスかニッケにパスされるかと思ったが、あにはからんや、ダライオスは自らの足でミドルシュートを放った。
蹴り上げられたボールは程よい弧を描きながらゴールに迫る。
「うおおッ!」
ボールはバーに当たるか当たらないかの微妙な距離で、その下に潜り込むように飛んできて。ルーオンは拳で弾き出した。
弾き出されたボールは跳ねて、ネットの上に乗って、そのまま転がり落ちた。
「なんて正確なミドルを打ちやがる!」
ダライオスはミッドフィルダーながら今シーズン10得点を挙げていると聞いた。巧みなボール奪取にドリブル、そしてシュートと。その素質侮れないことはよくわかった。
シェラネマーレの選手が触って、ゴールラインを割ったので、ファセーラのコーナーキックとなり、右端にボールが置かれて。
蹴るのはダライオス。
ゴール手前には龍介も含めてシェラネマーレの選手とファセーラの選手たちが詰めて、コーナーからのボールに備えたが。ファセーラの選手、ディフェンダー二名は少し離れたところで、こぼれ球に備える。
ダライオスは右手を挙げた後、ボールを蹴り上げ。
弧を描いて落下するボールに選手たちが群がり、奪い合おうとする。
龍介はこの中で一番小柄だった。だから無理な跳躍はしなかった。代わりに大柄なリョンジェやギャロンが跳躍し、ボールを奪いゴールから遠ざけようとする。
龍介は集団から抜け出した。
「やらせねえー!」
リョンジェは気迫を込めて叫んで、一番高く跳躍でき。頭でボールを弾いて、龍介の方へと落とせば。うまく足元に落ちて、すぐに回収してドリブルで駆けた。
シェラネマーレのサポーターたちは大喚声を上げた。
龍介は必死にドリブルで駆けた。前に相手ディフェンダーが立ちはだかり足を延ばしてくる。龍介はそれすんでの差でかわして脇を通り抜けた。しかしまたディフェンダーが立ちはだかり、今度はスライディングでボールを奪おうとするが。
軽くつま先で跳ね上げさせて、相手のつま先の上を飛び越し。着地してそのまま駆けた。
ジェザら他のシェラネマーレの選手も猛ダッシュし前に進み出て、ファセーラの選手たちは急ぎ自陣へ戻ろうとして駆けて。
センターラインを越えた。




