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第十三章 運命の入れ替え戦! Ⅳ

「させるかあー!」

 シェラネマーレの一番右手のディフェンダーのリョンジェが迫り、互いに跳躍しての空中背となった。


 リョンジェも大柄だがコバクスも大柄だった。二つの頭が並んでボールを奪い合おうとして。

 ごつん!

 と鈍い音がして。ボールと一緒にふたり崩れるように落ちて頭を抱えた。


 その隙にもう一人のフォワード、金髪ながら右目が碧く左目が黒いオッドアイのニッケがすかさず前に進み出てボールをゴールにねじ込もうとするが。

「いかん!」

 と、すんでの差で、ルーオンは咄嗟にボールを取った。


「くそッ!」

 悔しそうにルーオンの前をやり過ごすと、そのまま倒れた仲間のもとにゆき、

「大丈夫か?」

 と声をかけた。


 ふたりのそばに選手たちが集まり、声をかけて様子をうかがう。龍介も心配そうに眺める。ルーオンはボールを抱えたまま、審判に試合の一時休止を求めて。受け入れられて、ぴー、と試合を一時休止する笛を吹いた。


 ふたりは「いてえ~」と唸り、頭を押さえてうずくまっていた。審判もそばに来て、様子を見ていたが。

 やがてふたり、ゆっくりながら上半身を起こし。さらに立ち上がろうとする。

 出血はないようで。意識もはっきりし、試合続行の意思を示した。審判もふたりの頭をよく見て、試合続行できると判断し。

 試合再開の合図の笛を吹いた。


「リョンジェ!」

「コバクス!」

 両サポーターが激励のために両選手の名を叫ぶ。

 ボールはルーオンが持っていたので、ゴールキックからの再開となった。

「しょっぱなから冷や冷やさせるもんだな」

 監督のレガインとコーチのドドパもヒヤッとしたが、試合が再開されて安堵した。


 それはファセーラの監督、ドラグンとコーチのアルカドも同じだった。

 ルーオンはボールを遠くへ飛ばさず、リョンジェにパスし。そこから前に進み出たサニョンに渡され、そこからトゥーシェンにパスされ。

 そんな、細かなパスをつなぎながら前へ前へと進み出た。


 相手フォワードのコバクスとニッケをかわし、センターラインを越えて、他の選手との距離をはかり、右サイドのリジルにボールをパスするために、転がすようにボールをパスした。


 が、すかさず飛び込む影。ダライオスだった。

「な、いたのか!」

 リジルは驚いてさらに力んで駆けたが、すんでの差でダライオスにボールをかっさらわれてしまった。


「ステルス戦法か!」

 龍介はうめいた。

 気配を消して、相手視界に入らず、一瞬の隙を突いてパスを奪い取る。ダライオスはそのやり方に長けているようだった。

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