第一章 異世界に呼ばれて Ⅷ
魔導士たちは馬車に乗り、龍介はガルドネと同じ馬車に乗っていた。
「大王は興奮してうまく話せなかったようだが、詳細を改めて話そう」
龍介は「はい」と頷き。ガルドネは語る。
ここはマーレ王国。治めるのはさっき会ったバジョカ大王。
「誤解があってはいかんが、バジョカ大王は名君にして王国をよく治められている」
これには他の魔導士も同じように頷く。だが龍介にはまだ実感は湧かない。それに対して、都に着けばわかるだろうと言われた。
「大王は何事にも先進的なお方だ。異世界、君の世界にも大変興味をもたれて、君の世界の文化芸術及びスポーツを取り入れ、学び、国を治めるに生かそうとなされている」
「そ、そうなんですか」
異世界があったこと自体驚きで、今も夢、それも悪夢の中にの中に放り込まれた感じなのに。その異世界の大王が自分の世界に興味をもって、治国に生かそうとは、これいかに。
「で、それで、なんでオレ召喚されたんですか!?」
一番納得いかないことを尋ねる。自分の世界のことに興味を持つのはいいが、なんで人間を召喚するのだろうか。
率直に言って大迷惑だ。龍介には夢を追う日々がある。わけもわからないままに、夢を絶たれてしまうなど考えられない。
「それは、魔法と神のみぞ知る。魔法の導きにより、君を召喚することになったのだ」
「え、え、え」
龍介は困惑する。何を言っているのかさっぱりわからないが、理由は無きに等しいという事か。
また、さっきの草原が地場の魔力が強く魔法の儀式をするに適した聖地であることも話された。
「迷うのも無理はあるまい。しかし、悪いようにはせぬ。大王のお望み通り、この世界でサッカーに励んでくれまいか」
そう言うと、大王にするように、ガルドネはうやうやしく龍介に頭を下げ。他の魔導士も頭を下げた。
「そんな……」
困惑の度合いは増した。
「ちょっと……、どころじゃないくらい頭がパ二くって。落ち着きたいんですが」
「そうじゃな、しばしゆっくり休みなさい」
それからガルドネは話をやめ、龍介は気まずさの中黙り込んで、どうにか自分を落ち着かせようとする。
(サッカー、Jリーガーの夢……)
それは狭き門。そうそうなれるものではないのはわかっていたが、いざ現実を突きつけられると、やはりしんどいものだった。
それでも自分を励まし周囲の激励で地域リーグのピッチに夢を乗せて駆けた。それすらも終わらされてしまうのか。そう思うと、気が狂いそうだった。
(なんでオレ、やることなすこと、ダメなんだろうなあ)
考えたところで答えが出るわけでもない、それこそ魔法と神のみぞ知ると言うべきか。




