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第十二章 守るべきもの Ⅵ

 詰め寄った者たちは、相手の数が多いのを見て戸惑いの表情を浮かべて。

「ちぇ、やってられねえよ!」

 と、各々足早に立ち去ってゆく。


 これを見て、シェラーンはほっと、安堵の表情を浮かべて。警戒を解いたようだった。

 これでひとまずは解決か、と思ったのだが。


「おのれえー!」

 ひとり、不意打ちと剣を閃かせてシェラーンに斬りかかった!

「危ない!」

 その動き素早く、あっという間に白刃がシェラーンに迫る。


 テンシャンにローセスたちは咄嗟のことにて不意打ちを食らい身は固まり。

 ピッチの龍介たちも茫然としていた。

 が、しかし。


 二振りの剣が交差し、一方の剣が宙を舞い。音を立てて、落ちて。その時には、シェラーンの剣先が丸腰となった相手の胸に突き出されていた。

「大王の見ておられる中での不意打ち。もはやどのような弁明も効かぬぞ」

 貴族格の者同士の決闘にも決まりがあり、一旦放棄をしたと見せての不意打ちは卑怯な振る舞いとして勝っても非難され。懲役の罰を受けることもあり得た。


「っう……」

 シェラーンに剣を突きつけられて、そう言われて。貴族サポーターは冷や汗をかいて、立ちすくんだ。

「だが、このまま引き下がれば大王に許していただくよう私からも口添えしてやろう。どうする」

「……」

 貴族サポーターは物言わずに回れ右して、立ち去った。無論他の詰め寄ったサポーターもそれに続いて立ち去った。


「す、すごいシェラーン……」

「そうか、龍介は知らなかったか。お嬢さまはサッカーの才能はなかったが、剣の才能はあるんだよ」

「大王杯の試合で優勝したこともあるしな」

「それでも冷っとしたよ。お嬢さまも熱血だからなあ」

「そ、そうなんだ……」

 リョンジェとカージェンに教えられて、ほっと安堵すると同時に畏敬の念を込めた驚きも感じていた。


 さらに。

「かっこいい」

 彼女に対しての憧れの感情も芽生えて、シェラーンを見つめる目に輝きが増した。


 貴賓室のバジョカ大王にミシェロもほっと胸をなでおろして、従者の差し出す飲み物でのどを潤した。

 この件でコロッセオは緊張に包まれたが、解決したようだと、喜びの拍手が鳴り。雰囲気もいい意味でゆるんで。キックオフを待つばかりとなった。


この章終わり 次章に続く

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