第十二章 守るべきもの Ⅱ
以後、龍介は皆と一緒に練習に取り組んで。
入れ替え戦の日を迎えた。
今この時期、最大の危機を迎えているが、そんな中でチームの一体感が強くなっていることを実感していた。
試合の前日に、馬車の列がコロッセオに来た。コロッセオ入りしたシェラネマーレの選手やスタッフの面々で、夜はコロッセオの中に宿泊施設があるのでそこに泊まった。
ファセーラの馬車の列もやってきて、一緒にコロッセオ入りしていた。
第5コロッセオは郊外にあり、人も建物も少なく。少し西へゆけばただっぴろい草原で、一気に人気がなくなるような場所だった。
そこにたくさんの馬車がやってきて、にわかに賑やかになる。
設営のための人員や資材を運ぶ馬車だけではない。熱心なサッカー愛好家やサポーターたちが馬車を乗り合わせてコロッセオに詰め掛けたのである。
コロッセオの宿泊施設は関係者しか使えない。最寄りの宿は馬車で30分ほどのところで、すでに満室になっていた。
だがそれにもめげず、馬車の中で寝泊まりする馬車中泊をする者も多かった。
そして、警備兵の多さ。
なにせ大一番である。気が立っているサポーターも多く、一触即発の事態も考えられるので。シェラーンは金に糸目をつけずに警備兵を増強したのであった。
多くの武装した兵士が鋭い目で練り歩く様はまるで戦場のようで、強い緊張感を禁じ得なかったが。安全のためには仕方なかった。
そしてそれは功を奏して、前日に騒ぎは起こらなかった。
試合は昼の12時半にキックオフだった。
秋も深まり、気温は下がって。昼の試合開催でも問題ないと判断された。
離れたところのために早めに試合をして、早めに試合を終わらせて、日が沈まぬうちに市街地へ帰れるようにとの配慮であった。
シェラーンは選手たちの激励のために顔を出した。
控え室で、すでにユニフォームに着替えて。あとはピッチに出るだけだった。
「みんな、健闘を祈っているわ」
それからそれぞれの顔を見つめて、
「……最後まで戦い抜きなさい。私からは以上よ」
微笑んでそう言うと、選手たちは、
「おうッ!」
と威勢のいい返事をした。
龍介ももちろんして。ピッチに出て、試合前練習を開始した。
ファセーラの選手たちもピッチに出て試合前練習をする。ユニフォームはフィールドプレーヤーは橙色でキーパーは緑だった。
コロッセオの観客席の観衆は、選手たちが出てきたのを見て、
「うおおおーーー!!!」
と雄たけびを上げてコロッセオの空を揺らした。
コロッセオの観客席は全席自由だったのだが、今回は席割りをし、コアなサポーターはゴール裏に集められて。ライト層はそれ以外の席だった。
前半はファセーラが南側でシェラネマーレが北側が自陣となる。そのファセーラのゴールの裏にファセーラ、シェラネマーレのゴールの裏にシェラネマーレのコアなサポーターが集められていた。




