表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/115

第一章 異世界に呼ばれて Ⅶ

 両脇に居並ぶ武人や魔導士たちはしわぶきひとつせずに、静かにたたずみ。相当な訓練を積んできたことを無言で語る。

「楽にしなさい、と言っても無理そうだな。やむを得まい、突然異世界に召喚されてはな」

 龍介の様子を見て、バジョカ大王はいたわるように言う。そのまなざしも優しげで、心がほぐれるのを覚えて。

「はあ」

 と、思わず安どのため息をついた。


(こやつ、大王の御前で!)

 武人が目をいからし龍介を睨むが、察したバジョカ大王はその武人を睨んで、目で制した。それから表情をほぐすように笑顔になった。

「少しは気が楽になったかな」

「は、はい。おかげさまで……」

 心はほぐれて、バジョカ大王は信用してもよいと思えるようになった。


「大王、話は私がいたしましょうか」

「いや、予がしよう。すべては予の望みからだからな」

「わかりました」

 ガルドネは口を閉じて静かに伏し目がちに視線を落とした。

 それと入れ替わりに、バジョカ大王は痛いほどの視線を龍介にそそぐ。


「予はマーレ王国を治めるバジョカである。単刀直入に言おう。私の国でサッカーをしてほしい」

「はあー?」

 思わぬことを聞かされて、龍介は素っ頓狂な声を上げてしまい。臣下や小姓らは不敬だと怒りの視線をそそぐ。

 その気配を察して、龍介は口をつぐんで姿勢をただした。


 ガルドネは無表情だが、バジョカ大王は苦笑する。

「驚いたか、無理もない」

「でも、どうしてですか?」

「うむ……。魔法が開発されて一千年。言語の障壁を取り除くのみならず、様々な場面で魔法は有効活用されるようになった。そしてついに、異世界を覗き見て、人の行き来ができるまでになったのだ」

 バジョカ大王は得意そうに力説し、龍介は

「な、なんだってー!」

 と、大きな驚きを隠せなかった。


「君の世界の、スポーツというものは面白い。見ていて興奮する。まさにエンジョイ&エキサイティングだ!」

「……」

 驚きが大きすぎて、もう声も出ずただ呆然とするしかなかった。


「大王さま、選手の召喚も出来たのですから、帰り支度を……」

「うむ、都に帰るか。者ども、支度せよ」

 バジョカ大王の命令が下り、臣下たちは「はっ」と返事をして幕舎から出て兵士たちに命令を下す。


 龍介はガルドネが預かることになり、魔導士と行動を共にすることになった。

 帰り支度は素早く進められて、1時間後にはバジョカ大王擁する先発隊が出発した。馬に跨る騎士に槍を立てる歩兵、その軍隊の様を見て龍介は、

「うわー、まじダレイオス戦記みたい」

 と、ひとりごちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ