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第十一章 理想と現実と…… Ⅳ

「試練、艱難辛苦の数をかぞえてみよ。平らかな平原ばかり歩く者に、真の栄光はあらず♪」

「険しい道こそ戦士のゆく道。山の頂に宝剣あり。宝剣を求めずして、戦士を名乗ることなかれ♪」


 龍介はぽかんとしてしまったが。他のメンバーは熱唱している。

 シェラーンまでもが、声を合わせて熱唱しているではないか。

「これは昔からマーレに伝わる『戦士のうた』という歌です」

 召使いさんが気を利かせて龍介に教えてくれた。


 いかなる言語も通じ合えるように魔法の力がマーレに利いているおかげで、歌の内容はわかったが。なかなかに激しい歌詞で、今時こんな歌うたわないよなーとつい思ってしまって。

 ここが自分の世界と違うということを改めて実感したのだった。


 しかし、入れ替え戦で雪辱を晴らそうという心意気は伝わってくる。龍介には歌はわからないが、知らないうちに調子に合わせて手を叩いていた。

「入れ替え戦、必ずや勝とう!」

「おおー!」

 うたい終わって、気合の雄たけびを上げ。そこでお開きとなり。それぞれがシェラーンの心づくしで馬車で帰宅してゆく。


「それじゃあな」

 リョンジェは白い歯を見せ、にこやかに、かといってへらついてない引き締まった笑顔で龍介と拳を合わせて馬車の人となった。

 龍介は手を振って馬車を見送ると。

「ふわあ」

 と、一気に気が抜けて、思わずあくびがでてしまった。


「うふふ。……ふわあ」

 龍介があくびをするさまがおかしかったシェラーンも、思わずあくびをしてしまって。笑ってごまかした。

 もう遅い時間になっていることを、今さらのように気付いて。

 それぞれ自室に戻った。


 翌日、朝起きて身繕いをし朝食をとった時。城から使者が来て、至急出仕せよとシェラーンに伝えた。

「なにかしら?」

 もともと今日は城への出仕の予定であり、使者を出して出仕をうながす必要はないはずなのだが。それでも使者を送るという事は、何かあったということなのだろうか。


「わかりました。すぐに向かうとお伝えください」

 そう言えば、使者は早馬に乗って城へ急ぎ戻ってゆく。

 龍介も不思議に思ったが、こればかりは自分でもどうにもならず、召使いさんたちとともに見送るしかなかった。


 馬車に揺られて城に着き、大王の御前に参じれば……。

「そなたのクラブのサポーターが狼藉を働き、苦情が来ておる」

 と言われ、跪いた姿勢のまま石のように固まった。

 ガルドネも杖をつき王座のそばで立っていた。

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