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第十章 神は試練を与え給う Ⅵ

 いざ自分の身に降りかかると、なかなかに堪えた。

「もうシェラネマーレなんか応援しない!」

「サポーターやーめた!」

 厳しい声は続き。見切りをつけると言う者までいて、足早にコロッセオを去っていった。


 選手たちは厳しい声を堪えながら歩き、いつの間にかレガインとドドパらベンチの面々もいた。

 ガルドネは上空からその様子を眺めた後、無言でコロッセオに降りた。

 シェラネマーレはまるでお通夜のような、暗い雰囲気に包まれていた。


 貴賓席においては、シェラーンとヴァサンが握手したあと、バジョカ大王もそれぞれに握手した。

「これも厳しい勝負の世界です」

 下手な慰めは通用しないと、ヴァサンはそれだけを言い。会釈し、

「私はこれにて失礼いたします」

 と、先に貴賓席を出た。ロッカールームにゆき、それから選手たちを讃えるのだろう。


 バジョカ大王も、傷心のシェラーンを下手に慰めようとはしない。下手な慰めはかえって傷つけてしまうと。

「大王……」

「なにかね?」

「ヴァサン殿の仰る通り、勝負の世界は厳しいのですね」

「……、そうだな」

 シェラーンはそう言うとうやうやしく会釈し、貴賓室を出ていった。


 シェラネマーレの面々は奥に引っ込んでもやはりお通夜のような、重い雰囲気だった。

 が、落ち込んでばかりもいけないので。試合後のクールダウンのストレッチをし、シャワー室にゆき汗を流し、着替えて帰り支度をする。その間誰も口ひとつ聞かなかった。


 龍介も何もかも淡々とした動作だった。

 しばらくして皆勢ぞろいし。レガインは、

「まだ降格が決まったわけではない。最後まで戦い抜くのだ」

 と、静かながら声に力を込めて言った。


 本当ならこの日をシーズンの終わりにしたかった。サッカー選手にとって試合に出られることは幸せなことなのだが、シーズンの戦いに敗れての入れ替え戦。まだ結果が出ていないのだが、下部リーグのクラブと入れ替え戦を戦わされるというのはそれだけでも不名誉なことであり、余分な緊張と悲壮感を禁じ得なかった。


 さらに言えば、身体への負担の心配もある。試合はやはり身体に多大な負担をかけ、ケガもする危険性がある。上のリーグ所属クラブが、負けを重ねて居場所を懸けて戦う入れ替え戦を戦う事は、そんなケガの危険性が増えるということだ。


(神は我らに試練を与え給うたのだ)

 レガインやドドパらもそう思わずにはいられなかった。

 やがてシェラーンがやってきた。

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