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第九章 裏天王山 Ⅹ

 ギュスノーヴもそれは同じで、シェラネマーレに1対0で勝った試合以外は苦戦させられ下から二番目という順位だった。

 ヴァサンも実を言えば、特例措置としての異世界人召喚による助っ人に頼ろうとしたが。


「そこまでする必要は感じません。ギュスノーヴには、オレがいるじゃないですか!」

 と、テンザーが強く反対して結局助っ人は取りやめになった。その一方で、後回しながらシェラーンは異世界人助っ人を得た。


(異世界人の選手は、先の試合で得点しながらもPKでしくじったではないか。実はそれほど使えぬ、外れなのかもしれぬ)

 さすがにこれを口に出すのは失礼になるので内心で考えるにとどめたが、そう考えて、安堵しオレンジジュースを喉に流し込んだ。


「この時期は去年まで優勝争いの試合を観戦し、今年は気まぐれながらこの試合を観戦することにしたが……」

 シェラーンとヴァサンは固唾かたずを飲んで言葉の続きを待った。

「なかなか見ごたえのある試合である。失礼な言い方だが、双方手負いの獣となっての必死さ。技量を云々するのも野暮に感じられるほどの熱さ。見事である」

「畏れ入ります」

 シェラーンとヴァサンは椅子から立ち上がり、恭しく一礼をした。


 一方、控え室にて両クラブの面々は身体を休め、あるいは飲食物を補給しながら、後半をいかに戦うかを話し合っていた。

 ギュスノーヴの監督、ジウタンは、

「奇をてらわず、前半と同じように戦えばいい。我々には我々の戦い方がある」

「だが自分たちのサッカーに拘泥するのは、よくないと思いますな」

 テンザーがそう言えば、ジウタン監督も頷く。


「団体競技で相手があっての試合では当然のことだ。オーナーもお前たちに期待しておられる。この試合に勝てば、勝利給を弾むと言っておられた」

 おおー。と選手たちは嬉しそうな反応を見せる。


 シェラネマーレの選手たちも同じように、いかに戦うかを話し合っていた。

「ギュスノーヴとの前の試合は1点が遠く、重い試合だったが。今回もそれは同じだ。追いついて振出しに戻ったとて油断せず、それぞれが1点の重みを理解して、得点をすることが大事だ」

「わかりました。しかし、具体的にどのように戦えばいいか、監督やコーチから見てどう思いますか」

 ルーオンに問われて、レガインとドドパは「ふむ」と相槌を打つ。


「一番の敵は自分自身という言葉があるが、その言葉の理解を誤れば自分たちのサッカーに拘泥し、相手からはもちろん、自分にも振り回されかねない。試合は相手あってのものだ」

 ドドパの言葉を継いで、レガインが続ける。


「相手は閂とまで言われる堅い守備だ。おそらくペナルティエリアに詰めてゴールを死守するだろう。それをあらゆる方法で仕掛けて崩す。おそらく硬直した展開でお互いに辛抱が強いられるだろう。それを承知し、心して掛かれ」

「はい!」

 威勢の良い返事が返ってくる。やはりそれしかないかないかと皆が思った。


第九章終わり 次章に続く

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