第九章 裏天王山 Ⅴ
「堅い、堅すぎる!」
「閂で扉を閉めたみたいな守備をしやがる!」
シェラネマーレの選手たちはこの状況を見てやきもきする。
対するギュスノーヴ側も、
「守ってばかりで大丈夫か?」
「テンザーに渡してもう1点取った方がいいんじゃないか?」
と、同じようにやきもきしていた。
左サイドからザンジャがボールを蹴り上げ、他の選手よりも素早くギャロンが駆け、跳躍し真っ先にボールをヘディングで打った。が、ボールはゴールではなく龍介目掛けて打ち落とされた。
「……ッ!!」
この中で一番小柄な170センチの龍介は無理な跳躍はしなかったので、目の前にボールが落ちたのを目にしてすぐにシュートを狙って動いた。
その直前にボールを分捕ろうとゴールキーパーが飛び出したが、当てが外れて肩透かしを食らい、同じように跳躍したギュスノーヴの選手たちも肩透かしを食らい。ボールが打ち落とされるのを目にしながら我が身はまだ宙でバタついていた。
龍介は目の前に落ちたボールを咄嗟に左足で蹴り、シュートを打った。
ボールはピッチを滑るように転がり、宙で林立する選手たちの足元の下を抜けて、ゴールの中に飛び込んで。
それぞれが着地した時には、ボールはネットにいたりそこで動きを止めた。
「おおおおーーーー!!!」
コロッセオのどよめきは一層強まった。
「異世界人がやりやがったぜー!」
と、ピエロも囃し立て。
シェラーンも思わずもろ手を挙げて得点を喜んだ。
ヴァサンは無言で首を横に振り。バジョカ大王はうんうんと頷く。
「いいパスをありがとう!」
龍介は自分が喜ぶとともにに、いいパスをくれたギャロンに抱きつき深く感謝の意を示した。
「彼はよくやってくれていますな」
レガインはいつの間にか自分のそばにいるガルドネに言い。ドドパも頷く。
ガルドネは龍介を見て、頷く。
「彼は使い物になるようじゃ。しかし……」
「まだ前半。油断はできません」
「そうじゃ。技量は申し分ないが、心はどうなるか」
「……」
同点シュートを決めて皆と一緒に喜ぶ龍介を、”大人”の3人はじっと見つめていた。
「やれる。この裏天王山を勝てるぞ!」
龍介は自信をつけて、闘志満々だった。
ギュスノーヴからボールを蹴って試合が再開された。




