表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/115

第九章 裏天王山 Ⅲ

 試合が始まってからシェラネマーレが力で押す場面が続き、ボールはついに龍介にもたらされて。

 咄嗟に左足で蹴ろうとしたが、相手選手に寄せられて上手く狙えず。蹴れはしたものの力が入らず、ボールは力なく転がるばかり。


 それはすぐに相手選手に取られて。ギュスノーヴの選手たちは一斉に駆け出した。カウンターだ。

「ここで流れを変えて、点を取れ!」

 ギュスノーヴのゴールキーパーが叫ぶ。


「ああ、もう!」

 龍介はそう叫びながら相手選手を追った。

(それにしても、ドリブルなのになんて速さだ!)

 ボールを蹴りながら走るドリブルは、ボールなしで走るのに比べたら遅いはずんだんだが。この異世界の選手たちはドリブルでもやたらと速い。


 悲しいかな、自分が戦っている地域リーグとは技術レベルが雲泥の差だ。だが自分の世界でも、欧州に南米はこんな感じなのだろう。

 危機を察する予知はディフェンスとしてリョンジェはよく備えているようで、カウンターを食らったと思ったらすでに他のディフェンスとともにゴール前に帰っていた。


 ギュスノーヴは後ろに人数を割いたせいで前の攻撃陣はひとりのワントップ、おのずと攻撃には厚みがなく薄い。

 しかしテンザーはワントップでのフォワードを託されるだけあり、立ちはだかるシェラネマーレの選手をドリブルしながら巧みにかわし、ぐんぐんゴール前に迫る。


「よし、来い!」

 ルーオンは身構えてシュートに備えれば、テンザーはまだひとり残している状態で右足で強烈なシュートを放った。


 ウォーラは左足で蹴って掻き出そうとするが、つま先をかすめるようにボールは飛びながら進路をやや右に変え。ルーオンは跳躍し腕を伸ばしたが――。

「うわあああーーーーー!!!」

 観衆のどよめきが増した。


 無情にもボールはルーオンの手を逃れてゴールの中に飛び込んで、ネットの隅に突き刺さるように揺らしてから、落下した。

 テンザーは歓喜し仲間たちと得点を喜び腕を天に向けて突き上げ。


 観衆に交じって囃し立てるスタジアムDJの役割を果たすピエロは、

「やありやがったあー! ルーオンのとんでもねえシュートが決まったあー!」

 と喚いて。


 ギュスノーヴのサポーターは歓喜し、シェラネマーレのサポーターは頭を抱え。レガインとドドパらベンチの者たちにシェラーンは首を横に振った。

 フィールドの選手たちは歯噛みして試合を再開するしかなかった。

 ヴァサンは少し頷いて、試合を静かに見守る。バジョカ大王も同じだ。


「一瞬の隙を突かれた……」

 龍介のシュートミスからボールを奪われ、そこからのカウンターでやられたのだ。忸怩たる気持ちを禁じ得なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ