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第八章 最終節に臨む Ⅳ

 ヴァサンはシェラーンと握手する際、

「今日は悔いなくお互い戦い抜きましょう」

 などと言ってのけて。シェラーンも笑顔で、

「はい。戦い抜き。この日をシーズンの最終節にします」

 と返した。


 ヴァサンは「おやおや」と言いたそうに顔をかしげたが、それから笑顔で頷き席に着いた。

 バジョカ大王は何も言わないが、笑顔でその様子を眺めていた。


 時間が来て試合前練習を終え、奥に引っ込みロッカールームに一旦戻れば。いつの間にかガルドネもおり。

 何やら呪文を唱えたかと思えば、あの時と同じように自分たちはコロッセオ上空にいた。


 小さな太陽もコロッセオの上空にあり、陽の傾きに合わせて照度を徐々に強めている。

 対戦相手のギュスノーヴの選手たちも上空にあり、22人の選手たちはさながら神の降臨のように地上に降りてくる。


 コロッセオは熱狂の渦に巻き込まれて。大歓声が上がり、旗もはためき、太鼓の音も高らかに轟く。

 観衆の数も前と同じく2万から3万はいそうだった。最下位争いでこれなのだから、優勝争いだとどうなるのかと、想像もつかない。


(相変わらずすげえな)

 先の試合でも思ったが、こんな雰囲気の中で試合をするために、必死の思いで頑張ってきたのだった。だが実際に試合をしてみれば、満足などとてもできるようなものではなかった。

(今度は倒れないようにするぞ) 

 と、自分に言い聞かせる。


 空は茜色だった。陽は傾き、沈もうとしていた。小さな太陽は茜色の空をものともせずに輝き。コロッセオはまるで昼間のような明るさ。

 ピッチに降り立った選手たちは審判とも握手をし、コイントスにより先にシェラネマーレからボールを蹴ることを決め。

 それぞれに分かれて円陣を組んだ。


(この裏天王山を勝つんだ!)

 円陣の中で龍介は強く自分に言い聞かせて。円陣を解いてからそれぞれのポジションについた。

 龍介はフォワードだから一番前の右側。


 シェラネマーレのフォーメーションは4-4-2。後ろから4人・4人・2人という配置だ。

 が、ギュスノーヴのフォーメーションは5-1-3-1、後ろから5人・1人・3人・1人という配置で。最後尾が5人とは、攻めるよりも守備を重視し固める配置だ。


 センターにボールが置かれている。そばにジェザがいる。

「はじめッ!」

 主審が試合開始の笛を吹き、試合が開始され。ジェザがまず龍介にボールをパスする。

 振りをして、前に向かって猛然とドリブルで駆けた。 


第八章終わり 次章に続く

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