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第八章 最終節に臨む Ⅰ

 翌日、龍介は馬車に乗って練習場に向かった。

 城の隣の第1コロッセオは試合の日だったのでそこを使わせてもらったが、それ以外では郊外にある空き地を整地した練習場を使用している。

 シェラーンは城に出仕したので、龍介だけで別の馬車で練習場に向かった。


「おはようございます」

 馬車から降り、メンバーと顔を合わせて朝の挨拶をし。まずミーティングで、クラブの現状と打開が話し合われた。

「苦境は目をそらしたいのが人情だが、それは目隠しをして崖に向かうようなものだ。現状打破はまず現状を受け入れることからだ」

(残留争いか……)

 レガイン監督の話を聞き、少し胃がキリキリするのを覚える。


 地域リーグでは優勝争いをしているが、ここでやっているのは残留争いだ。

 こんな危機的状況でサッカーをするのは初めてだった。

 では、この厳しい現状の中で、どのようなトレーニングをするのかというと。止めて、蹴る。という、基本に徹したトレーニングを行うことになった。


(残念だがこのクラブは最下位。そこから這い上がるために、基本に徹することが大事になってくる)

 1部リーグの選手である、技量は高い方であるが。最下位という順位を考えると、戦えていないと言われても仕方ないし、それは受け入れなければならない。


 が、それを受け入れるというのは、どうせオレたちなんてといじけることではない。自分たちの技量はまだまだ、それならその技量を少しでも向上させるためには、低い技量を補うことはどんなことか、といったことを心身に叩き込む。

 先の試合では龍介を巡り分断の危機もあったが、それも解決し。メンバーは一致団結して練習に取り組んでいた。


 選手は先の試合で試合に出たレギュラーだけではない、試合に出られないが選手として所属しともに汗を流す者もいる。それらは控えとして交代に備えてベンチに控える者もいれば、ベンチで控えることもできない者もいる。

 だがふてくされることなく、それらもチームと一体となって戦っていた。


「雰囲気は良いですな」

「雰囲気だけで勝てれば苦労はしないよ」

 ヘッドコーチのドドパが発した言葉にレガインは苦笑もせず真剣な面持ちで答える。

 練習場の脇には見学をしているサポーターが十数名いて、練習の様子を眺めている。

 その老若男女十数名も、ともに戦う気持ちで練習を見学していた。


 見学者の視線は異世界人の龍介にも向けられる。異世界人選手は魔法の力によって選ばれた選手として、期待も大きい。

(オレはこの人たちを背負っているのか)

 自分の世界では、小さな地域クラブということで決まった練習場はなく、スケジュールの空いているスポーツ施設を借りて、というやり方だった。


 だから練習場を転々とされることを余儀なくされていたが。

 ここでは決まった練習場がある。それがありがたくもあり、なんだか羨ましくもあった。

 見学をする人も必然的に少なく。十名をこえることはまずなかった。

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